さみしさを感じられるようになって久しい 悲しめるようになってまだ日が浅い
何度もわたしの前に現れたふたり
2023.6.3(土)
雨はもう降っていなかった。雨が木々を更にかぐわしくしていた。
おもしろい鳥の声がしていた。うぐいすも鳴いていた。
ふわふわした心持ちで歩いていた。
6、7歳か、女の子がちょうちょうのようにひらひら、ひらひら。お父さんがにこにこ着いてゆく。
楽しそうだね、いいね──わたしは歩き、ふたりは見えなくなった。
背の高い木々がつくるドームを見上げた。やわやわした葉が清々しい。
さっきの女の子とお父さんが現れた。
再び歩き、ずいぶん歩いた。
木々のドームを通らない道で戻った。
あ、あの女の子とお父さんだ。
ふたりはわたしの前の方を歩いていた。
数日後、あ、と思った。
わたし、もうさみしくなかった、悲しくなかった、あのときみたいに。
あのふたりは、わたしのこころが変わったことを教えるために、何度も姿を見せてくれたのか!
あのとき
⒈じねん自然 ⒉なんにでも時がある ⒊見る ということ
⒋あり得たかもしれない人生 ⒌ぞうさん
⒍何度もわたしの前に現れたふたり