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赤子の声

1997年11月9日(日)
台所で洗いものをしながら非常な苦しみで泣いていた。
ドアの向こうに母はいる。でも助けにはならない。
壁にはわかめが投げつけられたようにへばりついていて、その下のオレンジ色の可燃ごみの箱まで届いていた。左隣のオレンジ色の不燃ごみの箱には、白のタオルと真っ黒なひじきが落とされていた。
その異様な状態を直そう、片付けようと試みたが、どうしようもない苦しさでできなかった。

わたしの泣き声は恐ろしいほど苦しげで、実際に苦しくて、からだを引き絞るようにして泣いていた。
赤子の声だった。
この声は赤子の声だな、と考えているわたしと、苦しみ泣いているわたし。
精魂尽き果てるような苦しみ。
母は助けない。

はっと目が覚めた。
はっはっはっはっとなっていた。
すぐそこにあるはずの苦しみを厚い壁が阻んでいた。
首から背にかけて痛んでいた。



2023年11月12日(日)
あのころ台所で洗いものしてるとき尋常じゃない苦しみが襲ってきて殺人的怒りも湧いて、それを力づくで抑えこんで──ギャー❗って、かつての母親のような、人間じゃないような声をあげそうになって、それも抑えこんで、物凄く不機嫌!くらいの外観を保ってきたんだ。その不機嫌に腹を立てて、こいつおかしい!って眺める母親の首を絞めようともしないし、包丁もつかまないで、こんな不機嫌で悪いよねって遠慮さえして。

東側の水回りと胎内が共鳴したんだな。

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