応えた人
1998年1月13日(火)
地面の雪は凍って白く、子どもの帽子も白いふわふわ。
子どもはおばさんを待っていた。
おばさんは子どもに助けを求められた。
おばさんには知的遅れの子ども─青年─がいて、いっときでも彼を一人にはできない。息子を見てくれる確かな人がいなければ、おばさんはどこへも行くわけにいかない。
子どもは気を落としていた。
縁なし眼鏡の若い医者がその様子を見て悲しくなり、子どもの肩を抱いて言った。「きみはおばさんに裏切られたんだね。でもおばさんにも事情があるのだし、こういうことはよくあることだから悲しまなくていいんだよ」
「おばさんだ!」
歓声と共に飛んでいった子ども。
バスが着いて、降りてきた人影の中におばさんを認めたのだった。
白い地面を朝日が金色に染めて、バスから盛んにもやが立って暖かそう。
子どもは飛び跳ねている。
おばさんは、金色の朝の色のグラデーション─裾が大地の茶にオレンジが映っているような色で、空に向かってオレンジから黄へ変わる、押さえた色調─の膝丈コートを着て、白いふわふわの帽子。
若い医者は胸がいっぱいになった。元気に歩いてくるおばさんの虹のようなコートが揺れるのを見ながら、「おばさん、ありがとう」とこころの中で言った。
二人を見送ってから、もっと、寒い、凍った地へ、向かった。