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『ポリス・ストーリー/香港国際警察』:1985、香港

 国際警察の特捜隊員であるケヴィンはウォン警部の指示を受け、同僚と共に麻薬シンジケート壊滅計画の配置に付いた。山にあるバラック集落で行われる取り引きを見張るのだ。しかし隊員のキムが一味に気付かれたことから、銃撃戦になってしまう。敵の頭領であるクーは、幹部のコーや甥のダニーと共に逃亡を図る。ウォンは一味を追い掛け、クーを逮捕した。

 署長はクーを逮捕する決定的な証拠を掴むため、彼の愛人のセリーナを釈放することにした。セリーナが検察側の証人として公判に出廷するまで、ケヴィンは彼女の警護を担当することになった。ケヴィンは録音テープを渡され、セリーナの証言を得るよう指示される。一方、クーは弁護士を通じて、ダニーに連絡を取った。

 ケヴィンはキムにセリーナを襲撃させて助けに入り、信用を得ることに成功した。ケヴィンは自宅アパートにセリーナを連れて行こうとするが、その途中でクーの差し向けた刺客に襲われた。一味を蹴散らしたケヴィンは、セリーナから組織に関する証言を得て録音する。ケヴィンはセリーナのことで恋人のメイに勘違いされるが、すぐに誤解は解けた。

 セリーナはケヴィンの部屋でキムと一緒に写っている写真を発見し、彼の計画を察知した。翌日、公判に出廷したケヴィンは証言テープを提出するが、それは密かにセリーナが摩り替えたものだった。テープの失態が原因で、クーは保釈となった。
 クーは子飼いの刑事のマオを呼び寄せ、ケヴィンを抹殺するよう指示を下した。クーは情報屋のゾロ目を脅してウソの情報をケヴィンに伝えさせ、彼を別荘に誘い出した。クーの一味はマオを射殺し、ケヴィンを犯人に仕立て上げる…。

 監督はジャッキー・チェン、脚本はジャッキー・チェン&エドワード・タン、製作はレナード・ホー、製作総指揮はレイモンド・チョウ、撮影はチャン・ユイジョウ、美術はオリヴァー・ウォン、編集はチョン・イウチョン、衣装はジンジャー・ファン、音楽はマイケル・ライ、主題歌はジャッキー・チェン。

 主演はジャッキー・チェン、共演はブリジット・リン、マギー・チャン、トン・ピョウ、チョー・イェン、ケネス・トン、ラム・コックン、マース、ラウ・チーウィン、ロバート・ロー、チャーリー・チョウ、フォン・ハックオン、カム・ヒンイン、ダニー・チョウ、ポール・ウォン、ワン・ファット、タイ・ポー、ウィニー・ユー、ラウ・アイライ、マニー・ロー、ウー・フォン、クラレンス・フォード他。

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 後にシリーズ化されるジャッキー・チェンの主演作。
 ジャッキーは主人公ケヴィンを演じる他、監督と武術指導、主題歌も担当している。
 他に、セリーナをブリジット・リン、メイをマギー・チャン、クーをチョー・イェン、ウォン警部をトン・ピョウ、署長をラム・コックン、弁護士をラウ・チーウィン、コーをチャーリー・チョウ、ダニーをフォン・ハックオン、キムをマース、ゾロ目をタイ・ポーが演じている。
 アンクレジットだが、車を縦列駐車しようとする男(ケヴィンの駐車を見て感嘆する)はマイケル・ライ(黎小田)だ。

 香港映画がダメな内容になってしまう大きな2つの要因があって、その1つは「コミカルとシリアスのバランスが取れなくなる」ということであり、もう1つは「マトモな台本を用意しないので途中で話がデタラメになっていく」ということだ。
 しかし、この映画は、そこをクリアしている。
 まあ細かいことを言えばアラはあるけど、大きく軌道を外れたり破綻したりということは無い。

 キャラの出し入れにもギクシャク感は無いし、その場で話を作っているんだろうとは思うが、ゴリガンの嫌われキャラだった署長が終盤で「実はイイ人」っぷりを見せるという展開もあったりする。
 まあ最後が「犯人逮捕で大団円」じゃなくて「怒りが収まらないケヴィンが悪党を殴って同僚に止められる」というところで終わっているのが、今一つ締まらないんだが。

 この映画はジャッキー史上、最高傑作と言っても差し支えが無いと思う。
 そして、そのことに関してはジェームズ・グリッケンハウス監督に感謝せねばならないだろう。
 ジェームズ・グリッケンハウスは、ジャッキーがアメリカ進出を目指して出演した意欲作『プロテクター』の監督である。

 『プロテクター』は見事に失敗作だった。
 その時に思ったようなアクションが出来なかったことに大きなフラストレーションを抱え込んだジャッキーが、「それなら自分で監督して思いっきり好きなように暴れてやるさ」とばかりに企画したのが、この『ポリス・ストーリー/香港国際警察』である。
 なので、この映画にはジャッキーの強烈なエナジーが込められているのである。

 消化不良だった『プロテクター』の分も取り戻すべく、ジャッキーは(まあ以前からそうだったんだが)命懸けのアクションに挑んでいる。
 「ジャッキーが危険なアクションで怪我をするのは当たり前」というイメージもあるが、この映画でもやはり大怪我を負っている。ジャッキー映画では御馴染みのオマケのNG集でも、その激しさが良く分かる。

 ジャッキー映画では、女優も体を張ったアクションが求められる。
 もちろん引きの絵や顔の見えないカットにしてスタント・ダブルを起用すれば、一度も女優が危険な目に遭わないままアクションシーンを撮影することは可能だ。しかし、ジャッキー映画でそんな甘っちょろいことは許されない。
 この映画でも、ブリジット・リンがショッピングセンターの格闘シーンで激しく叩き付けられたり、ガラス(一応はスタント用に作られたものだが)の中に吹っ飛ばされたりしている。

 冒頭、香港国際警察とクーの一味による激しい銃撃戦が始まる。
 警察アクション映画なのだから、銃撃戦から入るのは当たり前といえば当たり前だ。しかし、これが「ジャッキー主演作」となると、非常に珍しいことだ。
 いや、たぶんジャッキー主演作でガンアクションから始まるというのは、これが初めてではないだろうか。

 とは言っても、ジャッキーは自分で監督を務めているぐらいだから、「ガンアクションにも挑戦しよう」なんてバカなことは考えない。だから、そのオープニング・シークエンスでもガンアクションそのものをセールスポイントとして描くことは無く、それに続くスタント・シーンへの導入に過ぎない。
 その後も敵との戦いはあるが、主人公がガンアクションに手を出すことは無い。

 そのオープニング・シークエンスでは、「車が猛スピードで山の斜面のバラック集落をブチ壊しながら走り降りる」というアクションが用意されている。
 バスに乗った敵を追うため、傘をバスに引っ掛けて乗り移る。バスから振り落とされた後、迂回した道路を通らずに丘を一直線に駆け下りる。そして敵の乗ったバスの前に立ち塞がって拳銃を構え、急ブレーキを掛けたバスの窓を突き破って敵が飛び出してくるというアクションへと繋がっていく。

 終盤には、ショッピングセンターでの激しい立ち回りが待っている。洋服ハンガーなどの小道具を駆使したり、エレベーターや陳列棚といった舞台装置を利用したりするのは、ジャッキー映画の得意技だ。
 そして最後に待ち受けている大スタントは、逃げるクーを追うため、電飾の付いた長いポールを一気に滑り降りるというもの。
 そりゃ大怪我もするさ。

(観賞日:2006年6月28日)

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