君にも、愛知県の形が美少女に見えることがあるだろう?
子供が四人いて、下の二人が現在不登校だ。
いきなり表題との温度差が凄くてすまない。
家にいる不登校児に、誰が一番プレッシャーをかけているかと言えば、それは常にいる親だと思う。最近の学校教師は、家庭に級友を連れておしかけ「みんな待ってるぞ! 明日は学校に来ような! な!? よーし、男と男の約束だぞ!!」というような、言われた方が自殺モノのムーブも無い。
プレッシャーの発生源は、親だろう。
だが、親としては、学校に行かない、勉強もしない子供が、もう心配で心配で狂ってしまいそうだ。でもこれは(直接伝えなかったとしても)無言の圧力となって子供の活力を殺してしまう。
不登校だった人の回想でも「いつもと変わらず接してくれるのが一番ありがたかった」とよく聞く。プレッシャーをかけず、子供の自覚に任せるべき時期が、たしかにあるのだ。
うちの子については、もうやれるだけのことはやった。あとは本人たちの行動待ちだ。
でもそれをギンギンに、それこそ血眼で注視していては子供も動けない。監視されているようなものだ。親子の精神的な繋がり、生活圏が同じこともあって、子供はそれを敏感に感じ取って、萎縮する。
ところで、いま「都道府県の形って、デレマスのアイドルに似てるよネ!」という狂った直感から彫り出す日課をしている。いきなり何を言い出したと思われるだろう。少し我慢して聞いて欲しい。
僕は趣味で絵を描いているオタクなのだが、田舎でオタク系のイベントに飢えており、その際に地元を聖地として発生した関裕(以下256文字を削除)について、そこで開催地である関広見地区の位置関係を、特に関係の無い偶然そこに居合わせたデレマス(アイドルマスターシンデレラガールズというアイドル育成ゲーム)のアイドル・関裕美さんに案内してもらうという絵を描いた。実際に見ていただこう。
ごらんの通り、岐阜県の地図を見ているとデレマスのアイドルの姿が見えてくる。大理石からギリシャ彫刻を彫り出すように、あるいは木材から仏像を彫り出すように、そして星の連なりを見ながら星座を作った、メソポタミアの羊飼いのように。
そう、これは昔からよくある人類の芸術的な、いとなみだ。
特殊性癖じゃない。特殊性癖じゃないぞ。
普遍的な何かだ。
普遍的なことなので、当然、他の県でも同じことが言える。
山形県をよく見てみよう。
御覧の通りである。
次はいきなり難易度が上がったが、長崎県。いずれ47都道府県からアイドルを彫り出すのだから、避けては通れない。でも。
続いて石川県。ここのアイドルは、原田美世さんという自動車・バイク関係が好きなエンジニアアイドル。
現時点で最新の彫り出しモノは、愛知県の丹羽仁美さん。
話を不登校にもどそう。
僕は夏休みが終わってからのここ数日、ずっとこれを描いている。
父親が仕事を終えて帰宅し、夕食の支度をし、子供に「今日も学校に行かなかったのか、そんなことで将来どうする!?」とか怒ることなく、フリーの地図サイトからDLした画像を回転させたり、アイドルの画像を検索したり、台詞一覧を熟読して、頭から煙りがでるほど悩みながら「石川県に原田美世さん・・・、どこだ、どこにいる?」とかブツブツいいながら一心不乱にペンタブを擦っているのだ。
真面目な親なら、子供と向き合って将来について真剣に説教したりする時間だろう。だが、僕はあえてデレマスを描く。
「愛知県を見ていると、振袖で足が痺れてるアイドルの姿が、見えるだろう?」と問うても「みえねーよ」というのが一般的な返答だろう。この作業をはじめて、最初は「凄い! 天才!」という感じの反応がX周辺からあったのだが、だんだん「うわ・・・、こわ・・・」と山奥から久しぶりにでてきた仙人を遠巻きにするような反応になっている。
この「県白地図からアイドルの姿を彫り出す」という狂った謎解きは、かなりの精神力が必要なのだ。
しかし、これがイイ。この作業に完全に集中して、子供がいることすら頭から消し飛ぶくらいの集中力で1時間前後で仕上げるのがいいのだ。
天下御免で学校に行かなくて良い夏休みが終わって、いまは家の前を同級生が登下校している。それを子供たちは息を殺して見送っている。
親の期待に応えて、自分も学校に行きたい。でも、行くことができない。歩き出せないときがあるのだ。それが今だ。そして、そこを親の視線が縛ってはならない。
親が子供を手放してあげないと、子供は次のステップに踏み出せない。
だからいまは「もう誰も監視してないよ」と伝われば良いと思う。
きっと、そうなってこそ、子供は自分を取り戻して、自分で歩こうと思える。それには、親の注目は邪魔なのだ。
「うひーっ、富山に佐々木千枝さんがいた! あと、福井県にサイキックビームを放ってる堀裕子さんが見えるぞ!! ヒャッハー!」等と毎夜妄言を吐く父。子供がどう思っているかは分からないけど、心配で心配で狂いそうになっていた自分は、子供への執着を一時的にでも剥がせている。
この、やや異常な謎解き(正解がどこにも無いというのも、全神経を集中する感じがして良い)をすることで。
とりあえず、47都道府県がそろって日本全国がデレマスに埋まるまで頑張ろう。
親が子にかける心配は、本能レベルの強力なもので、よほどのものでないと分離は難しい。その点これは、特殊で、難しくて、そして魅力的なのだ。ほんのいっときでも、完全に親子が分離できる。
関裕美さんというアイドルと出会って始まった新しい趣味。
彼女たちアイドルの力を借りて、過剰な親の心配から、子供を自由にしてやることが、少しだけ、少しだけできる。
本当にありがたい。(あと、すげえ楽しい)
アイドルマスターシンデレラガールズに、感謝を込めて。