【365日のわたしたち。】 2022年5月11日(水)
ゴミ捨て場に捨てられた参考書を見つけた。
東大の赤本が積み重ねられ、紐でくくられていた。
ふと考える。
これを使った子は、受かったのだろうか。
それとも残念な結果だったのだろうか。
そんなことに思いを馳せる。
と言うのも、
俺も十数年前に、東大の赤本をゴミ捨て場に置いていった人間だから。
数週間前までは、その本を超えた先に明るい未来へと繋がる道が広がっているのだ信じて、必死でめくっていたのに。
終わってしまえば、ただの派手な赤色の分厚い紙束となった。
夜中、俺はゴミ捨て場に赤本を出しに行き、そのまま少しの間、声を押し殺して泣いた。
今となっては、青春の一ページのようなものだが、
当時は絶望の瞬間だったのだ。
若かったということだろうか。
この本を捨てた子がどうだったかは、わからない。
でも、どちらにせよ、意外に人生はなんとか辻褄が合っていくものだよ、と伝えてあげたい気持ちになるのだ。
それは、あの時のゴミ捨て場の俺にもね。