【365日のわたしたち。】 2022年4月28日( 木)
鏡の前に立つ自分を、前までは本当に美しいと思っていた。
皮の下から骨が浮き出る感じとか、あの雑誌のモデルさんと一緒だって、嬉しくなった。
膝の骨がくっきりと出ているのも、何よりの痩せている証拠だ。
私の努力の結晶が、この体には表れている。
そう思うと、何度も服を脱いでは鏡の前でポーズを取ってしまうのだった。
母の出す揚げ物が大嫌いだった。
麺やご飯類も、やめてっていってるのに、出してくる。
どうして私の努力を邪魔してくるのだろう。
どうして私をサポートしてくれないのだろう。
毎日毎日、母にイライラした。
外を歩いていても、すぐ疲れちゃってイライラした。
でも、振り返って私を見る人がいるから、その快感がたまらなくて何度も外を出て歩いた。
でも、時々休憩しないとなかなか歩き続けるのは大変だった。
いつからこうなったのだろう。
前はこんなに疲れやすくなかったはずなのに。
18歳って、もうおばちゃんなのかも。
ずっと横になっている私を、母が心配して病院に連れて行ってくれた。
先生から、きちんと栄養をバランスよく摂りましょうと言われた。
でも、そんなもの食べてたら、あの子たちみたいになれないじゃない。
話を聞きながら、私は頭の中で反論した。
その後、しばらく点滴をさせられることになった。
この点滴のカロリーが気になって、怖くて怖くて仕方がなかった。
これ入れられたら、明日どれくらい食事を抜かなきゃいけないかな...。
病院の天井が、やけに高く見えた。
ふと目線を移すと、ベッドの隣に座って手を握る母の姿があった。
母の手は骨が浮き出てしわくちゃで、握られている私の手もそれにそっくりだということに気がついた。
わかる。
わかってるんだ。
母の出す料理も、お医者さんが言う話も。
全部正しいってわかってる。
それでも、受け入れられないから苦しいのだ。
だって、みんなが言うもの。
細くて可愛い、って。
みんなが雑誌を見て言うの。
顔が小さくて可愛い、って。
ただあそこに辿り着きたかっただけなの。
目から溢れる涙は、耳の中へと流れ込んでいった。
まだ私の中には、涙になるような無駄な水分があったのか、と思った。
そんな風に思う自分を、どうすることもできなかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?