キスマイは20年後も、30年後も走り続ける
「(グループが)売れなきゃ、意味がないんですよ。」
3月4日、キスマイの10周年企画で放送された「Ride On Time」。劇中でグループのセンターである玉森が語った一言だ。
「売れなきゃ、意味がない」この言葉はデビュー前、デビュー後の彼らの足音から表されている言葉だと感じる。
キスマイは2005年にジャニーズJr内で結成。NEWS・KAT-TUNの舞台「SUMMARY」で本格的に始動した。そこから、ジャニーズJr内のグループでトップを争うグループへと変貌した。
しかし、決して順風満帆な歩みではなかった。結成して数年経ってもなかなかデビューに巡り会えずにいた。
その間、後輩である「Hey!Say!JUMP」がデビューし、ファンからも「キスマイはデビューできないのではないか」とネガティブなウワサがされたほどである。
彼らも焦りを感じていた。
「(Hey!Say!Jump)後輩がデビューするのを見てすごく悔しくて、焦りを感じた。俺らデビューできないのかなって。」
そう語ったのはグループ最年長である北山。彼はあの山Pこと「山下智久」と同期である。彼は山下が以前所属していた「NEWS」のバックでも踊ったことがある。入所して10年以上、彼はさまざまなグループのデビューを見てきた。
そんな中、ついに手に入れたデビューへのチケット。デビュー後はいきなり東京ドーム公演をするなど、華々しい道のりだった。
しかし、道のりは険しかった。その険しい道のりが彼らの「アイドルとしての自分」を強くしたのだ。
SMAPのバーターと言われた時代
キスマイはデビューした時、当時のSMAPのマネージャーの管理下にあった。当然、SMAPが先輩なので、彼らはSMAPのレギュラー番組・ドラマ・バラエティに次々と出演した。
「SMAPのバーターではないか」
そんな陰口も言われた過去もある。
先輩の冠番組に主演し、世間の知名度を集める。側からしてみれば、簡単な行為だ。しかし、彼らはそんなことを耳にもせず、必死で先輩から「学び」を得て成長していった。
「中居さんは後輩に愛がある。だからそれはすごい見習いました。」
そう語るのはメンバーである二階堂だ。二階堂は中居がプロデュースしたキスマイ内のユニット「舞祭組」のメンバーだ。※ちなみに命名したのは中居、漢字を当てたのはジャニー喜多川氏である。
Ride On Timeでも放映されたが、彼は後輩の舞台などに時間の空きがあれば、あしげなく通う。
ジャニーズJr内のユニット「Travis Japan」のメンバーからは「ニカ兄」と呼ばれている。中居の意志を自分の直属の後輩につなげていることが伺える。
ちなみに、人見知りで有名な玉森はバックについている後輩と話すのに、10年かかったらしい笑
玉森もSMAPから多くのことを学んだ。
以前、ドラマ「グランメゾン東京」で木村拓哉と共演した際に、こう語っていた。
「現場のスタッフさんとのコミュニケーション、台本を持たない、プロ意識。木村さんからは座長として多くのことを学んで幸せでした。」
そんな中、玉森は現場で独特の感性を持つ。あるシーンで現場にある小道具を持って撮影が始まった。しかし、リハ中でも彼は小道具を置かずにずっと何かを考えているようだった。
スタッフが持つと言ってもそれを必死に拒否した。まるで、自分の演技が邪魔されるかの如く。
「小道具も演技のパーツの一つなんで。」
彼は言葉少なめに語った。彼自身も先輩から学び、独自の演技論を構築したのだろう。
SMAPのバーターとも言われた彼らだが、先輩の背中を見て、独自の色を出している。キスマイは学んでそれを活かすのではなく、自分のグループに還元していく。そんなグループだ。
3人+4人の構図
キスマイは他のグループと違い、ちょっと特殊なシステムがある。
冒頭でも伝えた通り、グループ内にユニットが存在する。
ユニットが存在するグループは2021年11月に解散したV6(カミセン・トニセン)だが、キスマイは少し異質だ。
キスマイは当初、前列3人(北山・藤ヶ谷・玉森)と後ろ4人(宮田・千賀・二階堂・横尾)で分かれており、売り方も変わっていた。
端的に言えば、3人は華やか、4人は3人の後ろにいるという感じだ。当初は衣装の色も違った。ここまで露骨に売り方が違えば、当然反発やメンバー内でも亀裂が走るだろう。
しかし、4人はめげなかった。4人で結成したユニット「舞祭組」で自らの扱いをネタにし、自分達ならではの「色」を開拓していった。
また、メンバー間の仲もキスマイの売りだ。基本的にメンバーは仲がいい。彼らのラジオ番組を聴いてもそれはすぐ分かる。
通常、他のグループのラジオは固定のメンバーがそれぞれ行うスタイルが多いが、キスマイは2〜3人シャッフルでラジオを収録する。そんなスタイルが彼らの仲の良さが分かる。
また、彼らはラジオ番組のパーソナリティーが他のグループよりも多い。声だけで仲の良さを伝えられるのが、キスマイの魅力の一つだろう。
ちなみに、北山は「舞祭組」が結成されて嬉しい反面、少し悔しかったらしい笑 そんなことをメンバーに率直に伝えられるのが、キスマイの仲の良さを際立てる。
近年、3人+4人は無くなり、衣装もほとんど同じものを着ている。4人が開拓したものに花が咲き、そして3人がそれを歓迎し、水を与えたと言ってもいいのだろうか。
「キスマイは7人のグループ。1人でも欠けたらダメなんですよ。」
Ride On Timeで宮田が語った言葉だ。
キスマイは過小評価されていないか
2019年、キスマイはデビュー9年目にして初の紅白歌合戦を勝ち取った。通常、デビュー組やデビューのアニバーサリーで出場するのが通例だが、9年という節目で出場するのは異例中の異例だ。
思えば、キスマイというグループは、少し過小評価されてはいないだろうかと感じる。
・デビュー直後に5大ドームツアー
・ジャニーズ史上最速観客動員数200万人突破
・CD28作、全てオリコンチャート1位
・ラジオ・チャリティ・ミュージックソン3年連続パーソナリティー
・冠番組が10年以上継続中
これだけ見れば、誰もがキスマイというグループは実績・道のりもさぞ華々しいと思うだろう。しかし、メンバーは決して立ち止まらなかった。
「ボーッとしてたら仕事なんてすぐに無くなっちゃうんで。後輩も次々とデビューしているんで。僕ら独自で何かできることを、っていつも思ってます。」
そう語るのは横尾だ。彼はバラエティ番組で「俳句」の才能を開花させ、名人をうならせるほどの俳句を披露している。
彼もキスマイとしてデビューして葛藤を抱えていたが、今ではキスマイにとって欠かせないピースとなった。それはメンバー誰もがわかっている。
彼はライブ前などの打ち合わせは意見をよく言う(Ride On Timeの放送にて)。その意見から、コンサートの骨組みなど生まれるほどの創造性を持つメンバーだ。
「キスマイにしかできないことを」
彼がいつも大切にしている考えだ。もちろん、メンバー誰もが彼の想いを分理解し、ひとりひとりが考えている。キスマイにしかできないことを。
結果、キスマイは着実に前進し、初の紅白歌合戦、2019年には台湾での海外公演も成功させている。
2021年はキスマイがデビューして、10年が経つ。10年と聞くと、ジャニーズとしては「当たり前」かもしれないが、グループが10年も続くのは奇跡意外何ものでもない。
そんな彼らが口に揃って言う、ある言葉がある。
すべては「キスマイ」のために
リーダーである北山は舞台やドラマに引っ張りだこだ。当然、キスマイを離れてソロの活動が多い。しかし、どの現場でも話すのは「グループのため」だ。
「個人の仕事で成長していきますが、結果としてグループがあるから。キスマイという看板があるから。だから、グループに還元しないと。」
同じく舞台やドラマに引っ張りだこ、グループのセクシー担当、藤ヶ谷も同じように語る。
「キスマイがあって今の自分がいるんで。ジャニーさんが作ってくれたグループを大事にしていきたい。」
藤ヶ谷も北山と同じく、後輩のデビューを多く見てきた。それだけに悔しい思いをしたに違いない。だからこそ、彼は「キスマイ」にこだわり続けてきた。
ちょっとしたエピソードがある。
初舞台の千秋楽後、舞台挨拶中に彼が涙したのだ。彼はジャニーズ・そしてジャニー喜多川氏への想いを語った。
「ジャニーさんが大切にしてきた、舞台を大切にしていきたい。」
彼も自分のため、そしてイコール、キスマイのため日々前進している。
メンバーでもある千賀は、コンサートの振り付けや構成を考えるキスマイにとって大切なピースの一つだ。
人懐っこく優しい彼だが、振り付けやコンサートになると一変する。
「目指しているのは、きれいに見せて余裕で踊ってカッコよく踊れる、振付。」
すべてはキスマイのため。彼も、そしてこの7人が揃ってこそKis-My-Ft2は生まれる。
キスマイは20年後も、30年後も走り続けるだろう
キスマイは2022年時点で11周年を迎えるが、今後も彼らは7人で走り続けるだろう。
それは7人メンバーが口に揃えていう言葉が証明している。
「キスマイのため」
もちろん、今後20年、25年とグループとして活動していく内にソロ活動をしてみたいというメンバーも出てくるかもしれない。
しかし、彼らは「Kis-My-Fts2」というグループを背負って活動していくと個人的には感じる。
「今後、20年、30年、おじいちゃんになってもキスマイとしてあり続けたい。」
宮田が語った言葉だ。彼も普段は明るい性格をしているが、仕事に対しては真摯で声優・バラエティ・トーク力にも定評がある。
彼もキスマイで「ジャニーズ1のアニメオタク」というキャラを開花させた。実際にそこからキスマイというグループを知った人も多い。
「宮田くんなら、許す(オタクを公言しても)。」
芸能界でアニメ好きはたくさんいるが、宮田俊哉の右に出る者はいないだろう。そんな彼がジャニーズの「キスマイ」というグループに所属しているから驚きだ。
最後に、キスマイのセンターである玉森の言葉で締めようと思う。彼は自分をそこまで出さないシャイな人間だが、キスマイについては内に秘めた想いがある。
「なんか、、、キスマイってみんなバラバラで、、だからいいんですよね。ただ、売れたいじゃなくて、やべえグループになりたい。キスマイ、やべえじゃん!って言われるグループになりたいですね笑」
今後も彼らは20年、30年経っても「キスマイ」というグループを背負って生きていくだろう。
「やべえグループ」として。