【フリー台本】報われない恋
報われない恋をしている。
分不相応だとわかっていても、手放せない想いがある。
あの人を見つめるたび、懐かしい景色が蘇る。
それは茜色に染まる夕暮れの空。
淡く切なく、遠い記憶の中の風景だ。
置き去りにした過去の亡霊。
届かないと知りつつも、目を逸らすことができない。
その弱さを抱えながら、今日も心の中であの人の名前を呼んだ。
期待も願いも、静かに霧のように消えていく。
目を閉じれば、いつか見たあの人の笑顔が浮かんだ。
あたたかくて、泣きたくなるほど優しいその表情に、胸が締めつけられる。
指先を伸ばしても、触れることはできない。それでいい。
たとえ報われないとしても、この気持ちさえ愛おしいから。