払い過ぎた相続税を取り戻す方法は‥?「相続税の更正の請求」とは
相続税の申告において、計算ミスや申告後の状況の変化によって、本来納めるべき相続税額に間違いが生じてしまうことがあります。
何らかの理由により相続税を払いすぎてしまった場合は、払いすぎた税金を取り戻す(還付)することができます。この請求手続きを「相続税の更正の請求」といいます。
今回はこの更正の請求について、期限や手続き方法などを詳しくご紹介していきます!
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1.「相続税の更正の請求」とは
相続税の更正の請求とは、既に行った相続税申告について、払い過ぎてしまった相続税を還付してもらうことです。更正の請求手続きによって相続税申告を正しい内容でやり直すことで、請求後に還付金を受け取ることができます。
これに対し、税金の支払いが不足していた場合に追加で税金を納める手続きのことを、相続税の「修正申告」といいます。
2. 相続税の払い過ぎが発生してしまうケースとは?よくある事例3つをご紹介!
そもそもどんな理由で相続税を払いすぎてしまうのでしょうか。
どのようなケースで相続税の払い過ぎが発生しやすいのか、代表的なケースを3つご紹介します。
2-1 財産が過大評価されている場合
相続税申告において土地の評価は「時価」で行うことになっていますが、評価が難しい土地などを相続する場合は、その土地の評価額がいくらかになるか、評価をする税理士によって異なる場合があります。
例えば、下記のような土地については減額できる可能性があります。
・幅員が狭い場合
・都市計画が予定されている場合
・500㎡以上の広大な土地の場合
・墓地の隣地の場合
仮に相続税申告後に過大評価され税金を払い過ぎていることが判明した場合、相続税の払い過ぎが生じてしまうことになります。
2-2 未分割の財産が分割された場合
相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立していない場合、この期限を延ばすことができないため、いったんは法定相続分で遺産分割をしたものとみなして相続税を申告しなければなりません。
その後、遺産分割協議が成立し改めて申告をした際に、実際の財産分割額が当初申告した相続税額から小規模宅地等の特例や配偶者控除を適用して減ることが考えられるため、この場合に相続税を払いすぎてしまっている可能性があります。
2-3 遺留分侵害請求権による返還があった場合
「遺留分」とは、子や配偶者など一定の相続人が最低限相続できる割合のことを指します。もし被相続人が、遺書などで法定相続人以外に全財産を分けるというような遺言を残していた場合でも、遺留分を侵害された相続人から請求があれば、原則として侵害額相当額を支払わなければなりません。
この請求のことを「遺留分侵害額請求」といい、相続税申告後にこの請求で相続財産が減った場合に、相続税の払い過ぎが生じてしまうことになります。
3. 更正の請求の期限はいつ?
相続税の更正の請求には期限があります。
原則として、相続税の申告期限である「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月」から5年間以内です。
ただしこれには例外があり、相続税には「更正の請求の特則」という特例が存在します。相続税特有の事情により、期限までの申告ができない可能性があるためです。その特別な事情とは、以下のようなケースです。
未分割の財産が分割された場合
認知、廃除などによる相続人の異動があった場合
遺留分侵害額の請求による返還があった場合
未分割の財産が分割されたことにより軽減措置や特例が適用される場合
遺贈に関わる遺言書の発見、遺贈の放棄があった場合
このような特別な事情がある場合には、5年10ヵ月を過ぎていても、事由が発生した日の翌日から4ヵ月以内であれば「更正の請求」を行うことができるとされています。
4. 更正の請求手続きの流れ
①必要書類をそろえる
「相続税の更正の請求」には以下4つの書類が必要となります。
相続税の更正の請求書
更正の請求の必要性を証明する書類(遺産分割協議書や遺言書、調停調書、判決書など)
修正申告書
マイナンバーカードのコピー(または通知カードと身分証明書)
②税務署に提出する
①の必要書類をそろえられたら、納税地を所轄する税務署に提出します。提出すると、その内容を基に税務署が審査を開始します。
審査の結果、請求が認められると「相続税の更正通知書」が送付されてきます。
③「国税還付振込通知書」が届き、還付金が振り込まれる
「相続税の更正通知書」が送付されると、その後「国税還付振込通知書」が届きます。その後税務署の方で確認作業が行われ特に問題がなければ、およそ3ヵ月程度で税金の還付が受けられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
相続税の払い過ぎは、税務署から通知や返還がされる訳では無いため、ご自身で気が付いて更正の請求を行わなければ、本来払わなくてもよかった税金まで払ってしまうことになりかねません。
遺産分割の状況が変わったり、もしかしたら計算ミスかも…と思ったら、申告済みの場合でも「相続税の更正の請求」という選択肢があることを覚えておくとよいですね。