相続税の延納を詳しく解説!申請に必要な条件や手続き方法など
相続税の納付方法は、金銭一括納付が原則です。しかし相続税が高額な場合は、10ヶ月という期限内に一括で支払うのは難しい…という方もいらっしゃると思います。
そのような方の救済措置として、相続税の延納といって年払いによる分割払いができる制度があります。
ですが、実は延納は誰でも選択できるというわけではありません。今回はそんな延納制度の概要と利用するための条件、手続き方法などをわかりやすく解説していきます。
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1. 相続税の延納制度とは
相続税の納税は、原則として亡くなられてから10ヶ月以内に現金一括で納付しなければなりません。しかし、相続人の方の様々な事情によって一括で納めることが難しいという方のために設けられているのが、相続税の延納制度です。
延納制度とは、相続税額の一括現金払いが困難であると認められた場合に納める税金を分割して支払うことができる制度です。そのため、所轄税務署に延納を申請し、それが認められたときにのみ適用ができます。万が一却下されてしまった場合には、相続した財産そのもので相続税の支払いができる制度である「物納」へ移行することもできます。
また、延納期間中は延納税額に利子税がかかります。この利子税は、相続財産に占める不動産等の割合によって、5年~20年の期間猶予があり、年2.1%から年6%までで定められています。利子税について詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
【参考】
国税庁ホームページ No.4211 相続税の延納https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4211.htm
2. 延納が認められる要件
先ほども申し上げた通り、延納は誰でも申請できるわけではありません。延納は次に掲げる要件をすべて満たした場合のみ申請ができます。
これらの要件のとおり、納税額が少額の場合には延納による分割払いは認められなかったり、担保を提供しないといけなかったりと、厳しい要件を満たした場合のみ認められる制度であることがわかります。
また、②の要件にある10万円というのは相続人全体に課税される相続税の総額ではなく、各相続人や受遺者が納付する相続税額ですので注意が必要です。
3. 担保の種類は?
延納が認められる要件の④に「延納税額と利子税額に相当する担保を提供すること」とありましたが、この担保とはどのようなものなのでしょうか?
そもそも担保とは、債務者が債務を履行しない場合、その債務の弁済を確保する手段として債権者にあらかじめ提供しておくもののことをいいます。
延納を行う際の担保として認められる財産の種類は次に記すいずれかのものでなければなりません。
以上のものすべてが延納の担保として認められていますが、一般的には土地を担保とするケースが多く見受けられます。
4. 相続税の延納できる期間
延長ができる期間は5年~20年の期間で、相続財産に含まれる不動産などの割合に応じて決められています。その理由としては、延納を選択する理由に相続をした財産の多くが不動産で占められ手元に現金が足りないというケースが多いためです。
不動産の割合による最高延納期間は以下の通りです。
5. 延納の申請方法や必要書類は?
延納を行う場合は、相続税の納税期限である10ヶ月以内に、亡くなられた方の住所地を管轄する税務署へ必要書類を提出する必要があります。
必要となる書類は以下の通りです。(各申請書類は国税庁のホームページより入手が可能です)
相続税延納申請書
金銭納付することを困難とする理由書
延納申請書別紙(※担保財産の種類に応じ様式が異なる場合)
不動産などの財産の明細書(※不動産等の価格の割合が75%未満の場合は提出不要)
担保提供関係書類
相続税延納申請書は、期限を過ぎて提出すると無効になってしまいます。相続税延納申請書には、延納申請税額や金銭納付を困難とする理由、不動産の割合といった必要事項を記載する必要があります。
6. 延納をする場合の注意点!
延納を行うことになった際には、以下の点に注意してください。
6-1. 許可が出ても取り消されるケースがある!
無事に延納申請が許可された場合でも、分納税の滞納(利子税、延滞税のみの滞納も含む)や、延納条件に違反したなどの事由が生じた場合は、延納許可が取り消され、残りの税額をすぐに納付することになります。
またこの場合は、許可取り消しの日までの利子税と、本税を納付し終わるまでの延滞税も発生してしまうため、注意が必要です。
6-2. 延納が認められるのに時間がかかる
延納は要件さえ満たせばすぐに認められるというわけではありません。「4. 延納の申請方法や必要書類は?」で述べた書類を相続税の申告期限以内に提出すると、そこから審査があり提出後短くても3ヶ月間程度で許可、または却下の通知があります。
また、審査結果によって延納が認められなかった場合、「相続の開始を知ってから10ヵ月以内」という納税の期限に間に合わずに、ペナルティ(追徴課税)が課せられる可能性もあるでしょう。
そのような状況を避けるためにも、延納申請はなるべく早めに行うことをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。延納はあくまで相続税を現金一括で支払うことのできない方が選択する制度であり、ある程度の預金がある方には関係のない制度です。
しかし、相続した財産に占める不動産などの割合が多い時などは、延納を利用して分割払いをすることで負担が軽くなる場合もあります。
そのような方は、きちんと要件や注意点をふまえた上で延納という選択肢をぜひ検討してみてください。