FIBA女子バスケットボールワールドカップ!最強アメリカの勝因と日本女子バスケ代表が2020年東京五輪での金メダルを目指すために
2018年FIBA女子バスケットボールワールドカップはアメリカの優勝にて幕を閉じた。アメリカの強さは圧倒的であり簡単にデータで示す。
・1996年のアトランタ五輪以降国際大会で100勝1敗
(1敗は12年前の2006年のワールドカップ準決勝ロシア戦)
・ワールドカップで22連勝中
・オリンピックも入れると国際試合で46連勝中
・46連勝中における相手との点差は平均で35.5点!!
とあまりにも強い。
写真:優勝トロフィーを掲げるアメリカ代表
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/3009/Australia-USA/#iset=6d31e0b7-2de0-4aa3-8b49-55ec7289ca6b&iid=256691b1-2d75-47b7-bea2-2e7e1d9e5ed7
バスケットボールはアメリカの国技の一つでもあるので、文化や育成方法などいろいろ違うのは当たり前である。今回は“フル代表というカテゴリーにおける違い(差)”に焦点を当てていく。また、残り2年間でその差をどう埋めていくかを考えていきたい。
最初に結論から言うと“2020年の東京五輪で日本女子バスケ代表がアメリカ代表を倒して金メダルを獲得するストーリーは極めて現実的ではない”。現実的ではないことを理解した上で挑戦していくしかないので、アメリカ代表との違いをまず筆者の観点で考えてみる。現地でアメリカ代表の試合を準決勝・決勝と観戦して感じた違いは大きく5つある。
1.タレント
2.経験
3.基礎(ファンダメンタル)
4.執念
5.対応力
この5つをこの後説明しつつ、補足の説明を違う記事で投稿していきたいと思う。
1.タレント
一つ目の違いはその圧倒的なタレント力である。決勝戦後のプレスカンファレンスで、アメリカ代表の選手が“今まで最もタフなトーナメントの一つであった。世界中のタレントレベルが上がっている。”と話していたように、世界中の女子バスケ選手の力が向上している。その中でもアメリカ代表のタレント力は際立っていた。
というのも代表12名中9名がWNBAのドラフト1位の選手である。アメリカの女子バスケ選手は4年間大学でプレーしてからWNBAのドラフトにかかることが一般的である。つまり、アメリカ女子バスケにおける各年代のベストな選手がドラフト1位となり、その選手たちから成り立つ代表のタレントレベルは異次元である。さらにWNBAのMVPを経験した選手が5人おり、そのうち2人は準決勝・決勝では控えからの出場であった。日本代表の控えにWNBAのMVPがいることが想像できるだろうか?
写真:2人のWNBAのMVPがベンチスタートのアメリカ代表
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/3009/Australia-USA/#iset=6d31e0b7-2de0-4aa3-8b49-55ec7289ca6b&iid=2d6417ee-a0a8-4afd-8ddf-f76dd452922a
2.経験
今回、日本代表はベスト8を懸けて中国と試合をしたが負けてしまった。2014年大会はグループリーグで敗退、2010年大会は今とフォーマットが異なっておりベスト8に行けず9‐12位を決めるトーナメントを経て10位となっている。そして、2006年大会では日本は出場出来ていない。オリンピックに目を向けると2016年リオ五輪ではベスト8にてアメリカに敗戦。リオ五輪の前に出場した2004年アテネ五輪ではベスト8に進出できず。22年前の1996年アトランタ五輪ではリオ五輪と同じくベスト8にてアメリカ代表に敗戦。つまり、ここ20数年ワールドカップと五輪という世界2大大会において日本代表はベスト8の壁を破ったことがないのである。
国際大会、特に一戦必勝となるトーナメントにおいてワールドカップ3大会連続金メダル・オリンピック6大会連続金メダルのアメリカ代表とはその経験の差が圧倒的に違うと言えよう。特に決勝戦を観戦して感じたこととして“決勝戦特有の雰囲気の重さ”があり、それをコート上で経験しているのとそうでないのとでは大きな差がある。
3.基礎(ファンダメンタル)
今大会のベスト4となったチームは1位から順にアメリカ、オーストラリア、スペイン、ベルギーであるが、どのチームも基礎(ファンダメンタル)レベルの高さが際立っていた。ボックスアウト(※)の徹底、ボールを保持してから選手が各レーンをしっかり走ること、ドリブル・シュート・パスのスキル、戦術理解などなどどれも鍛えられていた。
前の記事でとりあげたブレアナ・スチュワートはアメリカ女子における“ティム・ダンカン”と呼んでは良いのではないかと思うほど基礎(ファンダメンタル)を徹底していた。2018年、ブレアナ・スチュワートがWNBA MVP, WNBA Finals MVPに加えてワールドカップのMVPも獲得したのも納得である。日本女子バスケ代表も180センチ以上でシューティングガードやスモールフォワードをプレーできる選手が増えてきており、基礎(ファンダメンタル)レベルも高い。しかし、ワンハンドシュートの重要性が増してきていると感じられ、この部分は議論の余地があるように思う。
※相手チームの選手にリバウンドを取られないように抑えること
写真:ルーズボールに飛び込むアメリカ代表
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/3009/Australia-USA/#iset=6d31e0b7-2de0-4aa3-8b49-55ec7289ca6b&iid=e4462413-fd29-4f86-a61d-fb1e29727e25
4.執念
アメリカ代表の勝利への執念は凄まじいものがあった。現地観戦を終えてインターネットで改めて試合を観ているが、画面からは非常に伝わりづらく感じる。現地で観て感じられることかもしれないが、アメリカ代表はこれだけ勝利してきても勝利への執念を失うことが無い。むしろ、だからこそ勝利していると言えるのかもしれない。味方のプレー1つにコート上のプレイヤーだけではなくベンチのプレイヤーも全力で反応し、バスケットカウントを獲得すれば全員で喜び、どんなに点差が離れていても怪しい判定で自分たちのポゼッションを失えば全力で抗議する。この勝利への執念はアメリカ代表の強さの源泉の一つと言える。
写真:バスケットカウントを獲得し喜ぶアメリカ代表
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/3009/Australia-USA/#iset=6d31e0b7-2de0-4aa3-8b49-55ec7289ca6b&iid=e4462413-fd29-4f86-a61d-fb1e29727e25
5.対応力
上記ブレアナ・スチュワートを含めて、WNBAで優勝したシアトル・ストームのプレイヤー3人は9月16日(日)のシアトルでの優勝パレードに参加した後、テネリフェ島に移動している。その後22日(土)の初戦に向けてチーム練習に参加しているので、準備期間は実質5日間もない。その3人のうち2人はスタメンであり(ブレアナ・スチュワートとスー・バード)、もう一人のジュエル・ロイドも貴重な控え選手である。
ここでジュエル・ロイドのエピソードを1つ加える。準決勝のベルギー戦ではベルギーの選手のピック&ロールに対してスイッチでアメリカ代表が対応していたところ、ポストのミスマッチやミスマッチにヘルプに来たところからスキップパスによるスリーポイントでベルギーが上手くオフェンス出来ていた。そこをジュエル・ロイドが交代で入り、ベルギーのガードに対してファイトオーバーで守るようになってからベルギーのオフェンスは停滞し始めて結果として点差が離れた。
この短い準備期間でチームを作り上げ、試合中も状況と相手に合わせて対応する力はアメリカが突出していた。
写真:中国に負けた日本女子バスケ代表はこの経験を2020年東京五輪にいかせるか
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/2609/China-Japan/#iset=1f59f38d-ca76-4407-a52e-388a049252d2&iid=e85dd3eb-d78e-4f47-910e-de05940d07d0
※※次の記事にて日本女子バスケ代表のこれからについて考察する予定です※※
参考文献:
https://twitter.com/WNBA/status/1046863059216752640
https://twitter.com/WNBA/status/1046572908116692993
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/videos/%F0%9F%94%B4-LIVE-Press-Conference-Australia-v-USA-Final
https://en.wikipedia.org/wiki/Jewell_Loyd
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Kelsey_Plum
https://en.wikipedia.org/wiki/Sue_Bird
https://en.wikipedia.org/wiki/Layshia_Clarendon
https://en.wikipedia.org/wiki/Morgan_Tuck
https://en.wikipedia.org/wiki/A%27ja_Wilson
https://en.wikipedia.org/wiki/Breanna_Stewart
https://en.wikipedia.org/wiki/Elena_Delle_Donne
https://en.wikipedia.org/wiki/Diana_Taurasi
https://en.wikipedia.org/wiki/Nneka_Ogwumike
https://en.wikipedia.org/wiki/Tina_Charles_(basketball)
https://en.wikipedia.org/wiki/Brittney_Griner
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_first_overall_WNBA_draft_picks
https://en.wikipedia.org/wiki/WNBA_Most_Valuable_Player_Award
https://en.wikipedia.org/wiki/2014_FIBA_World_Championship_for_Women
https://en.wikipedia.org/wiki/2010_FIBA_World_Championship_for_Women
https://en.wikipedia.org/wiki/2006_FIBA_World_Championship_for_Women
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_2016_Summer_Olympics_%E2%80%93_Women%27s_tournament
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_2004_Summer_Olympics_%E2%80%93_Women%27s_tournament
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_1996_Summer_Olympics
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_Summer_Olympics#Medal_table_(women)
https://www.wikihow.com/Box-Out-in-Basketball
http://www.espn.com/espn/feature/story/_/page/espnw-stewart160329/how-breanna-stewart-leading-uconn-huskies-fourth-straight-national-title
https://www.keyarena.com/events/detail/seattle-storm-2018-wnba-championship-parade
https://www.merriam-webster.com/dictionary/pick-and-roll
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?