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2020年東京五輪に向けて!アメリカ一強体制は続くのか?

アメリカの3大会連続金メダルで終えた2018年FIBA女子バスケットボールワールドカップであるが、このまま2020年東京五輪に向けてアメリカの一強体制が続くのかを考えてみたい。
結論から言うと筆者の観点では“2020年の東京五輪もそれ以降もしばらくアメリカの一強体制が続く”と考える。理由はシンプルに2つ挙げる。

1.インサイドのタレントレベル
2.世代交代の成功

である。理由を説明する前に少しデータを上げてみる。ワールドカップとオリンピックにおけるアメリカ代表の歴代最小得失点差試合と決勝戦のスコアを見てみる。

2018年ワールドカップ
 最小得失点差試合:100‐88(対中国、グループリーグ)
 決勝戦:73‐56(対オーストラリア)
2014年ワールドカップ
 最小得失点差試合:82‐70(対オーストラリア、準決勝)
 決勝戦:77‐64(対スペイン)
2010年ワールドカップ
 最小得失点差試合:83‐75(対オーストラリア、2次グループリーグ)
 決勝戦:89‐69(対チェコ)
※2014年大会から形式が変更となった。
2006年ワールドカップ
 準決勝:68‐75で対ロシアに敗退

写真:アメリカ女子バスケ史上初のワールドカップ3連覇を成し遂げた
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/3009/Australia-USA/#iset=6d31e0b7-2de0-4aa3-8b49-55ec7289ca6b&iid=28eba803-5e97-4a87-bf98-1e52c24b0822

オリンピックに目を向けと
2016年リオ五輪
 最小得失点差試合:86‐67(対フランス、準決勝)
 決勝戦:101‐72(対スペイン)
2012年ロンドン五輪
 最小得失点差試合:86‐73(対オーストラリア、準決勝)
 決勝戦:86‐50(対フランス)
2008年北京五輪
 最小得失点差試合:67‐52(対ロシア、準決勝)
 決勝戦:92‐65(対オーストラリア)
2004年アテネ五輪
 最小得失点差試合:66‐62(対ロシア、準決勝)
 決勝戦:74‐63(対オーストラリア)
となっている。面白いのが直近4大会すべてで最小得失点差試合は準決勝となっており、2004年のアテネ五輪ではロシア相手に4点差と辛くも勝利している。2年後のワールドカップで同じロシア相手に準決勝で負ける兆候がこの頃から見えているように感じる。
同時に2008年の北京五輪以降3大会全ての決勝戦で圧勝している。これは2018年ワールドカップを現地で観戦して初めて気が付いたが、決勝戦のアメリカの集中力はそれまでと比べてギアをさらに何倍も上げているように感じた。この決勝戦での圧倒的な集中力も日本が勝つ上で大きな壁となると言える。

写真:東京五輪では大会7連覇を狙う(写真はリオ五輪表彰式)
http://www.fiba.basketball/olympicswomen/2016/All-game-photos/#iset=e6830223-131f-4b4a-9be8-ecc7bb37177d&iid=2fd602f1-458f-4210-a940-26bfa45fcae1

さて長くなってしまったが、ここから2020年東京五輪でもアメリカが強い理由を2つ挙げて考えてみる。

1.インサイドのタレントレベル
1つ目がアメリカ女子バスケ代表におけるインサイドのタレントレベルである。国際大会、特に一発勝負となるトーナメントではインサイドのディフェンスとオフェンスが重要になってくる。どんなにシュートが上手い選手、それこそステファン・カリーでさえアウトサイドからのシュートが全然入らない時がある(余談だが私が現地でウォリアーズの試合を観戦した際にステファン・カリーのスリーポイント成功数は10分の1であった)。
ということは、いかに苦しい時にインサイドを攻めることが出来るか、逆に相手のインサイドを守ることができるかが国際試合ではより重要になってくる。さらに女子の試合は男子の試合とは違い圧倒的な身体能力でそのサイズをカバーすることが難しくなってくる。つまり、女子バスケの国際試合においてインサイドの選手の重要性はとても高い
2004年のアテネ五輪まではそのインサイドの重責をリサ・レスリーがほとんど担っていたと過言でもない。リサ・レスリーは当時の伝説的選手であり、WNBAの試合で初めてダンクシュートを決め、WNBA MVPを3回獲得、アトランタ五輪から4大会連続でオリンピック金メダルを獲得した選手でもある。そこに2006年のワールドカップからリサ・レスリー級と言っていいほどのインサイドの選手が次々とアメリカ女子バスケ代表に加わっている。

2006年ワールドカップから
 キャンデス・パーカー(08・13WNBA MVP, 08・12五輪金メダル)
2008年北京五輪から
 シルビア・ファウルズ(17WNBA MVP, 08・12・16五輪金メダル)
2010年ワールドカップから
 ティナ・チャールズ(12WNBA MVP, 12・16五輪金メダル, 10・14・18W杯金メダル)
2014年ワールドカップから
 ブリトニー・グリナー(206センチの超大型センター, 16五輪金メダル, 14・18W杯金メダル)
 ブリアナ・スチュワート(18WNBA MVP, 16五輪金メダル, 14・18W杯金メダル)
2016年リオ五輪から
 エレーナ・デレ・ダン(15WNBA MVP, 16五輪金メダル, 18W杯金メダル)
2018年ワールドカップから
 アジャ・ウィルソン(18WNBAドラフト1位, 新人王, 18W杯金メダル)

写真:オリンピックで4大会連続金メダルを獲得したリサ・レスリーは伝説的プレイヤーの1人
http://www.nba.com/2015/news/features/shaun_powell/09/06/lisa-leslie-2015-hall-of-fame/

日本で例えると、渡嘉敷のような日本において絶対的かつ圧倒的なプレイヤーが毎年のように出てくる感覚である。男子バスケで言えば八村・渡邊級の選手が毎年出てくるようなものである。今大会では上記ティナ・チャールズからアジャ・ウィルソンまで5人がメンバーに入り、東京五輪もメンバーに入ってくる可能性が非常に高い。
逆に男子バスケで言えば、パウとマークのガソル兄弟(スペイン)、エンビード(カメルーン)、ポルジンキス(ラトビア)、アンデトクンボ(ギリシャ)、ヨキッチ(セルビア)、そして2018年NBAのドラフト1位であるディアンドレ・エイトン(バハマ)等のようにNBAの第一線で活躍している(するであろう)インサイドのプレイヤーにはアメリカ国籍以外の選手が多い(多くなってきている)。
なので、アメリカ女子バスケ代表のインサイドにおける圧倒的なアドバンテージは国際試合での安定感をもたらしている。

写真:NBAのインサイドでは多くのアメリカ国籍以外の選手が活躍している
https://www.nbcsports.com/philadelphia/76ers/balance-between-pushing-pace-avoiding-turnovers-key-sixers

2.世代交代の成功
2つ目の理由として世代交代の成功が挙げられる。2006年大会でロシア相手に負ける前に、その2年前の2004年アテネ五輪の準決勝で同じロシア相手に4点差での勝利と苦戦していた。
そのアテネ五輪で勝利したメンバーからトップスコアラーであったリサ・レスリーと控えセンターであったヨランダ・グリフィス(アテネ五輪で控えながらも4番目のスコアラー)が2006年のW杯には参加せず、平均年齢も28.6歳(アテネ五輪)から26.9歳(2006年W杯)と若返り、12名中半分の6人の登録メンバーが入れ替わった状況であった。
もともと競っていた相手に対して急激な若返りを図り、かつ勝利した時のインサイドのキープレイヤー(リサ・レスリーとヨランダ・グリフィス)がいなくなったことが2006年で負けた理由の1つと考えられる。
それとは対照的なチーム変遷だったのが2012年のロンドン五輪から2016年のリオ五輪にかけてのメンバーである。具体的には、2016年リオ五輪の登録メンバー12名中9名がロンドン五輪のメンバーと同じである。
ロンドン五輪のコアメンバー9名にブリトニー・グリナー、ブリアナ・スチュワート、エレーナ・デレ・ダンという若くて才能とサイズのあるプレイヤーを加えたのがリオ五輪の時のメンバーである。ロンドン五輪からのチームワーク・経験・強さもありそこに若さ・サイズ・才能を加えたのでそれはもう強かった。結果として9試合・平均37点差をつけて勝利している。当然ながら平均年齢も28.3歳(ロンドン五輪)から29.8歳(リオ五輪)と上がっている。

写真:ロンドン五輪の金メダル獲得メンバー
https://today.uconn.edu/2012/08/geno%E2%80%99s-golden-girls/#

しかし、リオ五輪から東京五輪にかけて、ロンドン五輪からリオ五輪のような変遷をすることは短期的にみても長期的にみても健全ではなく、そこに向けての大きな転換点が今回のW杯であった。
具体的には、大ベテランのスー・バードとダイアナ・トーラジの2人、ティナ・チャールズからエレーナ・デレ・ダンまで含めた代表経験者5人、そこにアジャ・ウィルソンを含めたW杯もしくはオリンピックの国際2大大会デビューをした5人という顔ぶれで大会に臨んだ。さらに平均年齢も27.7歳と若返っている。
結果としてW杯3連覇という偉業を成し遂げつつ、新しい代表メンバーに経験を積ませることができた。今回休息で参加しなかったが、ロンドン五輪とリオ五輪の主力メンバーであったマヤ・ムーアが東京五輪に参加する可能性も考えると、2020年のアメリカ女子バスケ代表は史上最強となることさえ考えられる。

写真:2020年東京五輪で日本代表は最強アメリカに勝利することができるか
http://www.fiba.basketball/womensbasketballworldcup/2018/game/2509/Japan-Puerto-Rico/#iset=20261748-bf27-4030-a52f-e7bd7243c7e5&iid=04229aee-9023-4b86-b624-478a65b7b2af

※※次回こそ日本代表が勝つための案を記事にする予定です※※

タイトルの写真:
http://cornerpubsports.com/2016/08/us-women-rout-japan/

参考文献:
https://en.wikipedia.org/wiki/2018_FIBA_Women%27s_Basketball_World_Cup
https://en.wikipedia.org/wiki/2014_FIBA_World_Championship_for_Women
https://en.wikipedia.org/wiki/2010_FIBA_World_Championship_for_Women
https://en.wikipedia.org/wiki/2006_FIBA_World_Championship_for_Women
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_2016_Summer_Olympics_%E2%80%93_Women%27s_tournament
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_2012_Summer_Olympics_%E2%80%93_Women%27s_tournament
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_2008_Summer_Olympics_%E2%80%93_Women%27s_tournament
https://en.wikipedia.org/wiki/Basketball_at_the_2004_Summer_Olympics_%E2%80%93_Women%27s_tournament
https://en.wikipedia.org/wiki/Lisa_Leslie
https://en.wikipedia.org/wiki/Candace_Parker
https://en.wikipedia.org/wiki/Tina_Charles_(basketball)
https://en.wikipedia.org/wiki/Sylvia_Fowles
https://en.wikipedia.org/wiki/Brittney_Griner
https://en.wikipedia.org/wiki/Breanna_Stewart
https://en.wikipedia.org/wiki/Elena_Delle_Donne
https://en.wikipedia.org/wiki/A%27ja_Wilson
https://www.usab.com/history/national-team-womens/fifteenth-world-championship-for-women-2006.aspx
https://www.usab.com/history/national-team-womens/sixteenth-world-championship-for-women-2010.aspx
https://www.usab.com/history/national-team-womens/wwc-2014.aspx
https://www.usab.com/history/national-team-womens/games-of-the-xxviiith-olympiad-2004.aspx
https://www.usab.com/history/national-team-womens/games-of-the-29th-olympiad-2008.aspx
https://www.usab.com/history/national-team-womens/woly-2012.aspx
https://www.usab.com/history/national-team-womens/woly-2016.aspx
https://www.usab.com/womens/national-team/roster.aspx

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