ジョブ型雇用と遠隔住民。自治体の人気度と変化の未来予想図を考える
ラッキーセブンの7回が始まる。
1点をリードする読売巨人軍は、中継ぎ投手に交代をする。対して、追う阪神タイガースは投手の打順でピンチヒッターに交代し、ランナーを出そうとする。
最終回である9回を迎え、1点をリードしたままの読売巨人軍は抑え投手により逃げ切りを図る。
プロ野球において、このような展開はよくあることだ。
プロ野球では投手や打者の役割の分業体制が確立している。
日経COMEMOではお題 #ジョブ型雇用で変わることは ? を募集していた。ジョブ型雇用が拡大することで職、住なども変わっていくことが予想される。たとえば、ビジネスパーソンの仕事もプロ野球のように分業体制が拡大するならば働き方が変わっていく。また働き方が変われば、生活や住む場所も変わっていく。
本文では、ジョブ型雇用による働き方や自治体の変化などについて考えてみることとする。
1 ジョブ型雇用とは
#ジョブ型雇用で変わることは ? というテーマであるが、まずジョブ型雇用とは何だろうか。これまでの雇用とは何が異なるのだろうか。まず、これまで一般的とされている雇用について考えてみる。
私たちは学校教育を通じて人的資本を形成していく。そして、学校を卒業した後、職に就く。就職活動は、一般的に新卒一括採用と呼ばれているものにより行われる。企業に就職するなどしたら、職場でのトレーニングを通じて技能を形成し、生産性の向上を図る。企業内でのみ活かされる人的資本を「企業特殊的人的資本」と呼び、現在働いている企業から他社に転職した時にも同じように評価される人的資本を「一般的人的資本」と呼ぶ。一般的人的資本には、汎用性やポータビリティ性がある。終身雇用や年功制が長く続いた時代では、「企業特殊的人的資本」を蓄積するのみでよかった。企業に就職したら皆が同じように昇進し、また、あまり差がつかなかった。脱落しないようにするだけで、皆で拡大した経済的なパイを分配すればよい時代であった。このような戦後にみられた雇用の在り方は、「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる。
これに対して、「ジョブ型雇用」と呼ばれるものは、次のようなものである。たとえば、プロ野球選手は試合に出場するためにトレーニングを行う。トレーニングを行うことによって試合に出場したり、試合で活躍できる可能性が高まる。シーズンを通して活躍することで、年俸が上昇する。長期にわたって活躍することで、フリーエージェント制度を利用し、条件の良い球団に移籍することも出来る。さらなる活躍を求めて、メジャーリーグへ移籍をする選手も存在する。一方で、試合で活躍できない選手は退団を迫られる。また、試合での出場機会を求めて、トレードを行う選手も存在する。選手には、アベレージヒッター、ホームランバッター、先発投手であるエースピッチャー、抑えの大魔神などの役割というジョブがある。ジョブに年俸という値段が付くイメージだろう。また、球団は日本シリーズで優勝するという目標のために、選手の獲得やトレードを行う。選手の獲得は国内のみでなく、海外から助っ人選手を獲得することも多い。ジョブに適した選手をスカウトするのである。「ジョブ型雇用」を一般化すると、このようなイメージであるだろう。
余談ではあるが、プロ野球選手の生産性は賃金契約の影響を受けるとのことである。
それでは、ビジネスパーソンが「ジョブ型雇用」になるとどうなるか。変化のひとつには、ジョブやスキルのシェアリングが考えられるだろう。メジャーリーグのエンゼルスで活躍する大谷翔平選手が機械学習エンジニアやデータサイエンティストになっても、おそらく野球で活躍するほどの生産性は期待できない。ビジネスパーソンも比較優位を持つジョブやスキルを利用し、シェアリングを行うことで生産性を向上させることが出来るだろう。これは、分業による利益であると考えられる。また、ハイコンテクストなコミュニケーションからローコンテクストなコミュニケーションへ、すなわち空気を読んだり忖度をするコミュニケーション文化が変化することも考えられる。
リチャード・ボールドウィン氏の著書『GLOBOTICS:グローバル化+ロボット化がもたらす大激変』では「遠隔移民」の話があったが、ジョブ型雇用はシェアリングによって「遠隔住民」という生活の変化をもたらすことも予想される。リモートワーク等によって、ジョブやスキルのシェアリングが容易になり、働く場所や住む場所も変わっていく。「遠隔住民」の存在により、生活の質の向上が自治体の人気の課題となる。自治体間における利益の分配も問題となるだろう。ジョブ型雇用とテクノロジーは、関係人口の増加とソーシャルキャピタルの蓄積の活用をさらに進めるだろう。
2 自治体の人気度と遠隔住民による変化について
ここでは、リクルート住まいカンパニーが実施した「住みたい街ランキング2020」より、関東地方の住みたい自治体ランキングにおける得点、および産業別就業者割合や1000人あたり小売店数等の指標を基に因子分析を行い、その人気度の実測値と予測値を可視化してみる。
その人気度を可視化したグラフが下図である。
45度線(点線)で示された部分より下にある自治体は「実測値>予測値」であり、反対に、45度線より上にある自治体は「実測値<予測値」である。今回、自治体の人気度を予測するにあたって使用した指標は、産業別就業者数や1000人あたり小売店数、1000人あたり保育所数など限られているが、「実測値<予測値」である自治体は、さらなる伸びしろがあると考えることもできる。一方で、「実測値>予測値」となっている自治体は、若者に人気であるなど、一般的なイメージが良い自治体が多く存在する。また、都市部にある自治体が多くなっている。アーネスト・バージェスやホーマー・ホイトの理論では、都市の発展には交通等が重要であるとされたが、人気度の実測値が高い自治体は、大都市が多く含まれる。ジョブ型雇用の増加とテクノロジーの活用は、地理的、物理的な制約を部分的に解消することにもなり、自治体はこの変化への対応が重要となる。
それでは、自治体ごとの産業別就業者割合はどのようになっているだろうか。
第1次産業就業者割合、第2次産業就業者割合、第3次産業就業者割合と学歴の関係を調べてみることとする。学歴については、大学および大学院の卒業人口割合を利用することにする。
まず、第1次産業就業者割合と学歴の関係を可視化したものが下図である。
図を確認すると、第1次産業就業者割合と学歴には負の相関関係(学歴が向上すると第1次産業就業者割合が低下する)がみられる。
続いて、第2次産業就業者割合と学歴の関係を可視化したものが下図である。
図を確認すると、第1次産業就業者割合と同様に、第2次産業就業者割合と学歴も負の相関関係(学歴が向上すると第2次産業就業者割合が低下する)がみられる。
最後に、第3次産業就業者割合と学歴の関係を可視化したものが下図である。
図を確認すると、第1次産業就業者割合および第2次産業就業者割合と学歴の関係とは異なり、第3次産業就業者割合と学歴には正の相関関係(学歴が向上すると第3次産業就業者割合が増加する)がみられる。
上の図では、経済社会、産業社会の発展につれて、第1次産業から第2次産業、第3次産業へシフトするという「ペティ=クラークの法則」と同様の傾向が確認できる。
自治体内および自治体間における住民の分断も考えられるが、これからの自治体は、遠隔地に住む住民である遠隔住民の獲得が課題となることも予想される。遠隔住民は、ジョブ型雇用による働き方の柔軟性が高い労働者に多く存在すると考えられる。遠隔住民は、プロジェクト型の働き方やリモートワークの推進によって増加する。自治体が高度なスキルを有する遠隔住民を獲得することで、従来の住民との対立や分断も生まれるだろう。競争力のある住民と競争力が高くない住民、豊かな自治体とあまり豊かでない自治体における利益の移転が必要になるかもしれない。ローカルな資産を活かした差別化戦略が、競争力が高くない労働者や産業が生き残る戦略になる可能性もある。また、遠隔住民による関係人口やソーシャルキャピタルの活用も自治体における課題のひとつになるだろう。
3 おわりに
四連休の初日にSTAY HOMEをして書きながら、あまりまとまりのない文章となってしまい申し訳ございません(ここまで読んでくださった方ありがとうございます)。
ジョブ型雇用が叫ばれるが、ジョブ型雇用も理想的なことばかりでなくデメリットも存在する。
私たち労働者に出来ることは、とりあえず変わろう。
米国のオバマ前大統領が言っていた「Change!」だ。
さらに「Challenge!」しよう。
最後まで文章がまとまってなくてすいません・・・
人気度に使用した自治体
茨城県:水戸市、日立市、土浦市、牛久市、つくば市、ひたちなか市、守谷市、つくばみらい市
埼玉県:さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、所沢市、春日部市、上尾市、草加市、越谷市、戸田市、入間市、朝霞市、和光市、久喜市、三郷市、ふじみ野市
千葉県:千葉市、市川市、船橋市、館山市、木更津市、松戸市、成田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、流山市、我孫子市、鎌ヶ谷市、浦安市、印西市
東京都:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、町田市、小金井市、日野市、国分寺市、国立市、多摩市
神奈川県:横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、秦野市、厚木市、大和市、海老名市
人気度の因子分析に利用した指標
世帯あたり人数、15歳未満人口割合、65歳以上人口割合、人口性比、平成22年_27年の人口増減率、第1次産業就業者割合、第2次産業就業者割合、第3次産業就業者割合、昼夜間人口比率、千人あたり事業所数、千人あたり小売店数、千人あたり飲食店数、千人あたり大型小売店数、千人あたり幼稚園数、千人あたり小学校数、千人あたり中学校数、千人あたり高校数、千人あたり図書館数、大学_大学院卒業人口割合、千人あたり保育所等数、千人あたり一般行政部門職員数、経常収支比率、実質公債費比率
【参考文献】
リチャード・ボールドウィン(2019)『GLOBOTICS(グロボティクス):グローバル化+ロボット化がもたらす大激変』高遠裕子訳、日本経済新聞出版
川口大司(2017)『労働経済学:理論と実証をつなぐ』有斐閣