「ズッコケ怪盗X最後の戦い」の感想
ズッコケシリーズのお約束である「一話完結のパラレルワールド」を破っての三部作。それがこの「怪盗X」だ。時間軸としては、まず最初の「対怪盗X」が春、「怪盗Xの再挑戦」が夏休み、そして今作が秋。
物語は、永田町から始まる。1章のタイトルも「政界の陰謀」だ。ついに怪盗X、政界を暗躍する。そこまで行ったらもうズッコケ三人組なんかと接点はなさそうな気がするが、物語はしっかりと、そして違和感なく三人組の暮らすミドリ市に場面をうつしていく。この展開がいつもながら見事。ちょっとおませな小学生ならこの冒頭でぐっと心を掴まれるに違いない。
しかも今回、怪盗Xが狙うのはミドリ市に最近本部が出来た新興宗教のお宝「黄金の草履」。政治、カネ、宗教。これが俺たちの児童文学だぜ!那須先生の雄叫びが聞こえるようだ。(妄想)
最後の戦いと冠されているだけあって、三人組もかなり怪盗Xの正体に近づく。結果がどうなったかは是非本編を読んで欲しいのだけど、終わり方が今回も、好き好きの好き。小学生の頃に読んでたら、興奮でその夜は眠れなかっただろうな、と思う。
推理合戦となると、どうしてもハカセの活躍が増えるのも、どうしてもハカセにシンパシーを感じる僕としては嬉しいところだ。今回はモーちゃんも鋭いところを見せるが、ハチベエは相変わらず。ただ、ハチベエの行動力がなければ絶対に怪盗Xと対峙することはなかっただろうと思うし、そこがこの三人組のバランスの良さだと思う。
余談だが、今作にはちらっと、とある国民的漫画が登場する。完全フィクションかと思いきや、時々読者の現実とつながるようなことをして見せるのも、高等テクニックだなーと、今読むと思います。