「ズッコケ中年三人組 age49」の感想

 大きな事件は起きるが、物語のうねりはそれほどなく、するするっと読めてしまい、暇つぶしにはちょうど良かったが、読みごたえとしては物足りなかった。
 前々作くらいから続いている「花山町再開発事業」がいよいよ本格的になり、必要なお金「80億円」を融資しようというロマノフ二世の末裔が現れる、しかしこいつは本物なのか……?というのがまず、メインストーリーとしてある。そこに、モーちゃんの母親の容体が思わしくない、という話や、ハチベエの長男が結婚する、という話が絡む。

この、ロマノフ二世の末裔、という話がそんなに盛り上がらない。ハカセと末裔による舌戦や、モーちゃんの家族が人質に取られたり、ハチベエがそれを救出するため無茶したり、というようなのを期待していたのだが、49歳だからだろうか。そういう体力が主人公たちにも、その他の登場人物にもない。末裔を名乗る人物は、ハカセにあっさりウソを認め、逃げてしまう。サブストーリーも、比較的滞りなく進行する。

とはいえファンサービスはしっかりとある。物語の舞台となる謎の洋館は、あの、ズッコケ心霊学入門で、交霊実験が行われたあの洋館である。花山町に不似合いなあの洋館はそもそもなんだったのか、というのが明かされるという意味で「心霊学入門」の後日談であり、ゲストキャラクターであった俳句少年のその後も明かされる。ズッコケシリーズは基本的に一話完結だから、ゲストキャラが再び登場することはほとんどない。だからこそ、中年シリーズで再登場してくれると、生きとったんかワレ!と嬉しい気持ちになる。

あとがきを読むと、どうやら次回への布石が多く置かれているようで、それゆえに物足りない読後感となっているのかもしれない。次回、「ズッコケ熟年三人組」に期待である。

ちなみに、今回登場するゲストキャラクターたちは、名前を、那須先生がテレビ出演した際に知り合った人たちの名前を拝借しているとあとがきにあった。そして、ロマノフ二世の末裔の名が、「岡本啓」である。ググったが、この名前のテレビタレントは一人しかヒットしなかったのでおそらくそうだろう。福岡県民ならおなじみのローカルタレント、岡本先生である。彼について調べると、岡山出身であり、九州以外のテレビ番組にも出演経験があるようだから、きっとそこで出逢ったのだろう。なお、貸しているのは名前だけで、描写される容姿は全く違う。

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