ズッコケ中年三人組 45歳の山賊修業中
タイトル通り、今回は「ズッコケ山賊修業中」の後日談である。三人組がまだ小6だった32年前、山賊に捕らえられた三人は、一緒に捕まった堀口青年の尽力で逃げることができたが、堀口青年は山賊たちの元へ残った。その青年の兄が、いまだに弟のことを探してるらしい…というところから物語は始まる。
42歳の次にこれを読んだのは、本当にただのうっかりである。二年飛ばしてしまってちょっと気持ち悪い部分もあるが、気にしないことにする。
考えてみれば当たり前のことだが、堀口青年にも家族がいる。山賊修業中を読んだときは、堀口青年も望んで谷に残ったんだしめでたしめでたしと思っていたが、家族にとっては失踪だ。三人組が45歳になるまでの時間、探し続けている家族がいてもおかしくない。これは、楽しい冒険の後始末なのだ。
だからだろうか。物語はあくまでも現実的に、地味に進んでいく。山賊たちの遺留品が元でテレビに三人組が出演することになる件も、決してぶっとんだ展開ではないだろう。直接的に山賊が登場することはなく、当然、胸踊るようなアクションや脱出劇もない。しかし、このリアリティーがひるがえって、「ズッコケ山賊修業中」という元の冒険小説にもリアリティーを与えている。あの冒険は確かにあり、あの体験を経て、45歳の三人がいるのだ。
物語の終盤登場する経子は、「家出大旅行」の時に知り合った女の子の32年後の姿だ。二つの作品がここでクロスする!楽しすぎるし、かつてホームレスだった経子がホームレスの支援をしていて、それがきっかけで物語に関わるようになる流れに無理が全くない。人生で起きる出来事は、すべて、後に起きる出来事の伏線になっているのかもしれない。そんな気持ちにさせてくれる。
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