呪縛
真っ暗な世界だった
暗闇の中で
「私を好きと言わなかったお前が悪い」
旁でカラスが鳴く
息つく暇もなく倒れた彼は
死ぬときでさえ
私に顔を向けない
うつ伏せで
白い腕から
赤い血が流れる…
幾度となく
この腕にすがりたかったか
片手のナイフに付いた生け贄の血
指でなぞる
生ぬるい温度
深紅
「混血…」
交わらないことを示唆した
カラスが私に頬擦りをし
悪に染まった頭に火をつける
「おまえだけだな」
くすりと笑うと気持ちが萎えて
うつ伏せで死ぬおまえを片足で蹴る
安らかに寝た様な顔
少し天然な髪
力のない細い手足
「なぜ、私に話しかけた」
私は昔から
決まってるんだ
話しかけた者には忠誠を誓うと
共に生きるなら
私にも均等な褒美を与えろ
と
周りは私が普通じゃないことを知っている
感情を詠める人間だと
だから皆本音で語らない
皆嘘のように優しい
私に本音を出せば
皆私が鋭利な刃で詰るから
生きていれば
自分の意志を伝え合うべきで
例え違う意見でも
一度は聞き入れようじゃないか
それなのに
こいつを含めた一部の人間は
その意見さえ聞かずに
盾を振るう
頑丈な盾だな
私のナイフじゃ簡単には
壊せなかったじゃないか
でもな
私には魔術があって
優しさを出してあげることはできるんだよ
毎日嘘のような笑みで
お前の近くまではこれた
だけど、また盾を出そうとしたな
隙はあった
お前の身体は弱い
私の精神は簡単には崩れない
呪ってもいいが
心が揺れて
完全には呪えなかった
まだ生きていられるかもな
辛うじて居場所を記した紙を
お前の部屋に残したんだよ
いいか
目覚めても
私を探そうとするな
私はいつだって
お前の近くにいる
いつだって
忠誠を誓わせる
これはおまえが犯した過ちだ
私に触れたら最後
この鎖の鍵はもうない
足と手
細い手足に付けてある
取れるわけがない
起きて
私にすがれ
「君が嫌いだ」
そう言うまで
おまえにまとわりついてやる
2020年4月16日作成