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NMNサプリはアンチエイジングに効くの?~腸活ラボマガジンVol.9~
はじめに
NMNって聞いたことがありますか?抗老化効果があると話題になっている物質です。今回は、NMNについて解説します。
NMNとは
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)という名前を聞いたことがある人も多いと思います。これは、抗老化物質として着目されている物質で、ビタミンB3(ナイアシン)由来で、ブロッコリーやアボカドなどにも微量に含まれるのでこれらの食品を摂ると、サプリメントには及ばないものの少しは効果がある可能性があります(図1)。
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そのため、サプリメントとして市場に出回っているほか、薬としての研究も進んでいます。NMNが、抗老化効果があり、健康寿命を延ばすといわれているのには多くの研究が背景にあります。
その一つが、2016年にワシントン大学の今井眞一郎教授たちのグループが発表された研究です。生後5か月のマウス(ヒトでは、20代)が17か月(ヒトでは、60代)になるまで12か月NMNを与えると、与えていないマウスと比べて食事量が増えたにもかかわらず、体重が減少したほか、エネルギー代謝やインスリン感受性が向上し、目や免疫機能、骨密度も向上したそうです(ref1)。
また、高齢マウスにNMNを与えると、認知機能が回復したという報告もあります(ref2)。ほかにも、NMNによる様々な組織の老化を予防する働きなどが報告されています。
なぜNMNは抗老化作用をもつのか
では、なぜNMNの補充が抗老化作用があるのでしょうか。NMNは摂取すると、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変化し、それが長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)のSIRT1を活性化するからです。
ヒトは年をとると、生体内のNAD+が減少し、その結果、生体エネルギーが低下し、NAD+によって活性化されてきたサーチュイン遺伝子の活性化が低下します。NAD+はエネルギーを作る経路であるクエン酸回路や解糖で働く補酵素で、電子をやりとりすることでエネルギーの取り出しを行います(図2)。
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サーチュイン遺伝子は、哺乳類ではSIRT1~7まであります。特に重要なSIRT1は、インスリン分泌促進、脂質代謝改善、神経保護作用などがあり、老化などにおいても大切な働きをします(ref3)。
実際、2011年に報告された研究によると、マウスの脳の視床下部でSIRT1を発現させると、老化に伴う症状や病気の発症が遅くなり、メスでは、16.4%、オスでは9.1%健康寿命が延びました(図3)(ref4)。また、人間では60代くらいの生後17か月のマウスの脳でSIRT1を強制発現させると、人間では20代くらいの3、4か月の若いマウスと同程度に元気に動くようになりました。
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そして、長寿遺伝子の活性を高めるのがNAD+であり、NMNのサプリを飲むと、加齢に伴って減るNAD+が補充され、SIRT1が活性化し、骨格筋や脂肪組織など様々な組織で抗老化作用を発揮するわけです(図4)。
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マウスで、オスとメスで性差が出る理由についての全貌はまだわかっていませんが、NADを合成する酵素NAMPTのうち、血中を循環しているものをeNAMPTといいます(図5)。それがメスではオスの数倍多いです。メスが何かしらの生理現象にNADとeNAMPTが必要であるものの、加齢とともに減少し、それが、NMNによって補充されると大きな変化が出るのではというのが一つの仮説です。
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そして、マウスにおいてNMNの効果が出始めるのは、人間の20~30代にあたる若い年齢の時ではなく、40~50代の中高年にあたる年齢になってからです。また、高齢者が飲んでも効果が期待できると思われます。
人間も効果はあるの?
また、以上はマウスを用いた実験ですが、人間における効果の検証をするために臨床試験も進んでいます。例えば、糖尿病予備軍で肥満かつ閉経後の女性25人を二つのグループにわけて、片方にはNMN、もう片方にはプラセボを1日250 mg、10週間投与して、身体の代謝や血管の状態を解析しました。結果として、NMN 補給(250 mg/日)が骨格筋のインスリンシグナル伝達、インスリン感受性、筋肉リモデリングを増加させることが明らかになりました(ref5)。
NR(ニコチンアミドリボシド)はどうか?
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