読書会振り返り③
7月の課題図書は、小林和雄の『真正の深い学びへの誘い』だ。「深い学び」とは一体何なのか。学習指導要領が改訂され、完全実施になった今でもなお、自分に問い続ける「問い」として考え続けている。
今回は、改めて「深い学び」とは何なのかを、小林氏の本を通して読書会のメンバーと一緒に話し合うことができた。簡単にまとめていきたい。
「深い学び」の3つの効果
小林氏は「深い学び」の効果を3つにまとめている。簡単に言うと、①知識を長期記憶に定着させる②知識を柔軟に活用できる③学習を愉しめる の3つだ。
特に今回の読書会では、①の長期記憶について話し合った。「長期記憶」とは、文字通り長期にわたって記憶に残るという意味で、一生のいろいろな場面で活用することができる知識だと言える。現行の学習指導要領が求める、未知の状況でも活用できる知識だと言える。
記憶については認知学や心理学などの学問などでも取り扱われている分野で、まだまだ勉強不足な部分もあり、詳しくは書けないが、自分の日常生活に意味がある(有意味性)知識は長期記憶に残っていくらしい。
つまり、学校の学習(授業)の内容が日常生活と関連した場合、脳が長期記憶へ残そうとする。教師は教材研究の際、子どもたちの日常生活と教材を関連づけることが大切になる。しかし、全ての教材が子どもたちの日常に関わっているわけではない。非日常な教材もある。その場合はどうしていけば良いのだろう。
小林氏は「知的葛藤」を生ませることが大切だと述べられていた。葛藤、つまり「ズレ」である。詳しくは本著を読んでみてほしい!
長期記憶への挑戦
知識を長期記憶に残すためには「深い学び」を実践しなければならないと主張されている。それでは、「深い学び」を実践するためには何をしなければならないのか。小林氏はこの本で、「対話」と「振り返り」が大切だと述べている。
では、なぜ「対話」と「振り返り」が大切なのか。今回の読書会では「対話」について話し合いが活発になった。その話し合いをまとめていきたい。
なぜ、深い学びに「対話」が必要なのか
「主体的・対話的で深い学び」と言う言葉は、教師なら誰しもが聞いたことがあるだろう。「主体的」、「対話的」、「深い学び」は独立しておらず、それぞれが関係している。その中でも「対話的」に注目して話し合いを行なった。
なぜ、「対話」が必要なのか。
そもそも「対話」とは何なのか。英語で略すと「interactive」であり、「双方向」という語源がある。何かと何かを行き交うことが大切なのである。
自分と自分、自分と友だち、自分と先生、自分と教材(事象)、自分と先人など、自分と何かが行き交うことが「対話」であると言えるだろう。
「対話」が何なのかはわかった。次は「対話」の効果をはっきりさせていきたい。
結論から言うと、読書会の考えとしては、「対話」によって自分の知識や経験が他者の知識や経験によって修正されていく(アップデートされていく)ことが「深い学び」へつながるのではないか、というものだ。
「〇〇だと思っていた」という自分の中にあった概念(知識)にズレが生じる。自分には無い考えを友だちが持っている。掛け算で解いた問題は、実は割り算でも考えられる。実験結果が予想通りにいかない。地図を見て「どうして海の近くに都市が多いの?」という疑問が湧く。など。
そういった様々な「ズレ」は「対話」によって生み出され、「修正(アップデート)」されていく。「個」に始まった学びは「集団(対話)」の中で修正され、「個」に帰ってくる。
友だちと話し合うことだけが対話ではない。教材との対話や自分自身への対話も立派な「対話」と言える。
対話を実現するための手立て
最後に、対話を行うための手立てを紹介して終わりたい。本著では、子どもたちが自分の考えを持てるよう、選択肢を与える手立てが紹介されていた。ハンドサインなども同じ様な手立てとして考えられる。
筑波大学附属小学校のUD(ユニバーサルデザイン)でも、同じ様な手立てがある。例えば、桂先生の「which型発問」は、選択肢を作っておいて、自分の考えに近いものを選択し、その根拠を物語を読みながら見つけていく。
他にも板倉聖宣氏の「仮説実験授業」なども紹介されていた。
子どもたちが自分の意見を持つことは、「対話」を活発化させ、自らの知識や経験をアップデートすることにつながるだろう。
つまり、「深い学び」を実現するためには、主体的に自分の意見や考えを持つことがスタートとして大切なのである。
と、私たちの読書会では話し合いました!
「人は問われて始めて考える」
小林氏の本著で心に刺さった言葉です。
子どもたちに何をどのように問いかけていくのか。それこそが、教師として探究していく「問い」かもしれません。
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