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迷いが晴れればチームの主力! 親せき属性部下のポテンシャルを引きだすヒント
はじめに
「このままで本当に大丈夫ですか?」「この方法でミスが出るかもしれませんが……」会議での発言のふしぶしに、こんな慎重な声がくり返される。
プロジェクトの修正が必要になったり新たな問題が発生したときに、こんな状況になったことはありませんか?もし心あたりがあるなら、それは親せき属性部下が問題の中心にいるのかもしれません。
米軍で採用されている部下管理の手法では、部下を「親」「子ども」「兄弟」「親せき」の4つの属性にわけて考えます。
中でも親せき属性部下は、慎重さと堅実さを特徴としています。チームに何も問題がなければ、彼らはプロジェクトを前にすすめる主力となりえます。しかし、計画に修正が求められる場面ではプロジェクトの進め方に疑念や不安を抱きやすく、チーム全体の進行に影響を与える場合があります。
この記事では、親せき属性部下の力を最大限に引き出す方法を、典型的な状況にそって解説します。彼らの慎重さがチームの強みとなり、職場の成果に結びつくように環境と整えていきましょう。
親せき属性部下のパフォーマンスをMaxにするには
親せき属性部下は、ルールや計画を重んじ、確実に仕事を進めることでチームの安定を支える存在です。しかし、変化や予期せぬ問題に直面すると疑問や疑念を抱きやすく、チームの進行に影響を与えることがあります。この特性を理解し適切に対応することで、親せき属性部下のパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。
行動を評価して伝える。
親せき属性部下のパフォーマンスを上げるためには、親せき属性部下の努力や成果をしっかりと口に出して伝えることが重要です。リーダーが親せき属性部下の行動を評価し、それを言葉にして伝えることが、彼らのモチベーションを高めてチーム全体のパフォーマンスを向上させる鍵となります。
疑問・疑念にたいして明確に回答する。
親せき属性部下の慎重な姿勢には、仕事に対する疑問や疑念を生みだしやすい傾向があります。そしてその疑問や疑念は、彼らだけではなくチーム全体のパフォーマンスも低下させます。それを回避するためには、疑問や疑念に対する明確な回答が不可欠です。また、伝えた内容が正しく理解され、実行されているかを確認し、必要に応じて修正を加えることも重要です。
典型的な状況と兄弟属性部下のポテンシャルと引きだすヒント
状況1:計画変更で進捗が遅れる。
(松下さんの場合)
状 況
プロジェクトの中盤、リーダーの山田さんは困惑していました。急なスケジュール変更が発生し、メンバー全員に新しい計画を共有したところ、親せき属性部下の松下さんが手を止めて悩んでしまいました。
「この計画、本当に間に合いますか?前の方が現実的だと思います……」
松下さんの慎重な意見は、一部のメンバーにも不安を伝播させ、チーム全体の進捗が滞り始めました。他のメンバーは少しずつ集中力を失い、会議では「どうせまた変わるんじゃないか」という声も上がるようになりました。
解 説
リーダーの山田さんは、その日の午後、松下さんと話をする時間を設けました。
「松下君、新しいスケジュールについて不安があるように見えるんだけど、具体的にどこが気になったのか教えてもらえる?」
松下さんは少し考えたあと「タスクが重なりすぎている気がします。このままだとミスが増えると思います」と率直に答えました。
山田さんは、松下さんの指摘がチームを思ってのものだと理解し、彼の意見を丁寧に整理しました。そして、修正したスケジュールを示しながらこう伝えました。
「うん、君の指摘はもっともだと思う。だから、ここでタスクの優先順位と進捗度を確認して、全員で業務を再調整する。みんなの協力があれば、この計画で十分間に合うと思うけど、どうだろう?」
松下さんはその説明を聞いて「確かに、優先順位が見えるとやりやすいですね」と納得しました。山田さんはさらに、スケジュールをチーム全体で再確認する場を設け、松下さんの意見を取り入れた計画を共有しました。
その結果、松下さんも他のメンバーも安心して作業に取り組むようになり、プロジェクトの進捗は元に戻りました。
状況2:リスクを考えすぎて作業がとどこおる。
(山本さんの場合)
状 況
プロジェクトの重要なデータ分析が必要となった午後、リーダーの佐藤さんは、親せき属性部下の山本さんのデスクを訪れました。山本さんは画面をじっと見つめ、手を動かしていません。
「どうしたの、山本君?」と佐藤さんが声をかけると、山本さんは深刻な表情で答えます。
「この分析結果が本当に正しいか自信がなくて……。もし間違っていたら、プロジェクト全体に迷惑がかかるかもしれません」
山本さんはリスクを考えすぎるあまり、次の作業に進むことができず、業務が完全に滞っている状態でした。このままではプロジェクト全体のスケジュールにも影響が出る可能性がありました。
解 説
リーダーの佐藤さんは、山本さんが慎重すぎる性格から判断力が鈍り、作業が滞っていることを理解しました。佐藤さんは、山本さんに安心感を与えることが重要だと考え、話し合う時間を設けることにしました。
「山本君、君の分析力はいつも頼りにしてる。今回のデータも同じくらいしっかりできていると思うよ」と、まず評価の言葉を伝えました。
山本さんは少し表情を和らげながらも、「それでももし間違っていたら……」と不安を口にしました。
佐藤さんは「ミスの可能性はゼロにはできないけれど、今の段階では最善の結果を出していると僕は思っている。仮に修正が必要でも、チーム全員で解決できる仕組みになっているから、安心して進めていい」と具体的に伝えました。さらに「次の作業に進むための確認項目を一緒にチェックしてみよう」と提案し、二人でポイントを確認しました。
山本さんは、「これなら進められそうです」と自信を取り戻し、再び作業に取り組む姿勢を見せました。
状況3:リスクを過大評価することで、チームに不安感が連鎖する。
(井口さんの場合)
状 況
プロジェクトも中盤にさしかかったころ、親せき属性部下の井口さんが発言しました。
「このまま進めたら、最後のチェックで大きなミスが出るかもしれません。大丈夫ですか?」
この一言が会議の空気を一変させました。ほかのメンバーたちも井口さんの不安に引き込まれ、次々とリスクについての懸念を口にし始めました。
「もしミスが出たら、スケジュールに影響しますよね?」
「お客様に迷惑をかけるかも……」
これらの意見が広がるうちに、プロジェクト全体の進行スピードが目に見えて低下しました。会議後の作業でも、他メンバーは「これで本当にいいのか?」と確信を持てない様子で動きが鈍くなっていきました。リーダーの鈴木さんは、どう対処するべきか頭を抱えてしまいました。
解 説
リーダーの鈴木さんはまず、井口さんに個別で話をする場を設けました。
「井口君、さっきの発言についてもう少し詳しく聞かせてほしい。どこが一番気になっているのか教えてくれるかな?」
松井さんは「最後のチェックで細かいミスが出ると、これまでの成果が台無しになるのではと不安です」と率直に答えました。
鈴木さんは井口さんの不安を否定せず、その回答を素直に評価しながら、こう伝えました。
「君の意見は、チームにとっても大事なことだよ。実際にリスクを指摘してくれるのは、プロジェクトの質を高めるために必要だからね。ただ、今の段階では、進行とリスクのバランスを取ることも大切なんだ。」
リーダーの鈴木さんは、具体的な対応策を提示しました。
「このリスクをしっかり管理するために、最終チェックのための特別な時間を追加で設けよう。それから全員で簡単な確認作業のリストを作って、安心して進められるようにしようと思う。どうかな?」
井口さんはこの提案に納得し、「それなら安心して進められます」と落ち着きを取り戻しました。こうして、メンバーの不安は解消され、プロジェクトの進行スピードも元に戻りました。
まとめ
親せき属性部下は、ルールを守りながらチームの安定感を支える頼れる存在です。彼らの慎重さと冷静さを理解し、適切に対応することで、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
親せき属性部下が抱える疑念には正確に答え、納得して仕事に取り組める環境を整えましょう。彼らの特性を活かすことで、プロジェクトの成功に欠かせない基盤を築くことができます。
あなたのリーダーシップで親せき属性部下の能力を最大限に発揮させることができれば、彼らはチームの主力として大きな力をもたらします。親せき属性部下の特性にそった環境を作りだして、目標達成への大きな力に変えていきましょう!