「おやすみ」から始まる勤務時間
Top Photo:マリンワールド海ノ中道にて。透明のイカ。
0才の娘。
それから、幸いなことにコロナ禍でも書くことに関してお仕事をいただいている“ママ”の私。
どんなに娘が大人しくしていようとも、ハイハイを覚えた娘の子育てをしながらでは文章は書けない。何度か努力してみたが、はっきりと分かった。執筆も育児も、片手間では務まらなかった。
それでは、娘が昼寝しているときはどうか。パソコンを立ち上げ、コーヒーを入れて……と執筆の用意をしている間に眠りの浅い娘が起きてしまうことも珍しくなかった。
2,000文字の原稿を入稿するまで2時間かかるとしよう。2時間は2時間でも、30分×4回で書けるとは限らない。ある程度まとまった集中力が必要であり、集中力を分断して綴った文章はまとまっていないことがほとんどだ。
諦めが悪い私。今度は、県内の実家で娘を見てもらえたら集中できるかと期待して、娘とPCを抱えて実家に1泊してみた。
結果はというと、実母が全力で面倒をみてくれようとも、娘は私の姿が目に入ると嬉しそうに笑いながら覚えたてのハイハイで私の元へやってくる。甘え盛りの娘を払いのける根性は私にはなかった。
そしてこれは母となって初めて分かったことだが、子どもを膝に乗せてできる仕事は皆無に近い。膝の上で子どもがウトウトしたとしても、想像して見てほしい。10kgで不安定にもたれかかる子どもを抱えて、どのくらいデスクワークが捗るだろうか。重たいだけではない、大人よりも少し高い平熱37度で、眠たいと寝汗でびしょびしょになった子どもである。この時期は私も娘もとにかく暑い。
暑いからといって飲み物を取りに行こうと立ち上がろうものなら起きてしまい、また寝かしつけ……と繰り返すうちにあっという間に夕方に、というのはよくある話。実家に居ようとも、この結果は変わらなかった。
眠りが浅いときは、メールをタイピングする音で起きてしまうこともあるため、息をひそめて頭をフル回転させねばならない。
かれこれ試行錯誤したが、結論、私の執筆時間は娘が寝たあとの深夜に定着しつつある。
フリーランスに推奨される働き方としては、朝は早く起き 夜はできるだけ早く寝る……無茶をしやすい勤務形態だからこそ早寝早起きを心がけることが勧められるが、子育てママにとっては必ずしも当てはまらないものだと頭を抱えた今日この頃だ。
昨晩も、原稿を3本仕上げて時計を見ると明け方4時過ぎ。ツイッターにはチラホラと「おはようございます!今日も元気に…………」と朝活に燃えるフリーランスの呟きがあった。
娘と一緒に就寝して私だけ早起きすることも考えたが、娘が起きてしまうことが気になりすぎて進まない。早起き族が羨ましい反面、私は私のやり方で進めていくしかないと自分に言い聞かせる。
今月内に仕上げたい原稿はあと7本ほど。
今日も、娘におやすみと声をかけるこの挨拶こそが、私の始業の合図となった。こういう働き方もあると、まだまだ少ない「フリーランスの子育てママ」にとってひとつの参考となれば嬉しい。
おやすみ世界。
そして、どこかにいるであろう“夜勤族”のパパ・ママたち、共に頑張ろう。
くれぐれも健康第一で、今夜もこれから言葉を綴る。
2020/08/22 こさい たろ
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