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忘れない初恋〜はじめての君の家〜
「帰ってくるとき、連絡してよ」
久しぶり再会したあの日、ともみちゃんにそう言ってもらえてから、僕はSNSで地元に帰ることを匂わすことはなく、直接ともみちゃんに連絡できるようになっていた。
夏に帰る連絡をしたら、コロナが第何波が来だしてるタイミングで会えないってなった。
それでも
「むしろ、会いたい!」
って連絡をくれて、会えなくてもそれだけで心が満たされた。
会うことができたのは、それから3ヶ月後。
しかも、ともみちゃんの家だった。
地元で教師をしているけど、1年くらい前から一人暮らしをしていたともみちゃんの家に、コントの面白さが漫才よりもわからないというともみちゃんに、録画したキングオブコントを解説するということで、ともみちゃんの家で一緒に観れることになった。
中学生の僕には想像できなかった未来だ。
当日の昼、この日もともみちゃんが車で迎えに来てくれる。
お昼のご飯どうしよっかってなったけど、なんでもいいよとしか答えられない僕。
結局、マックでドライブスルーして家で食べながらキングオブコントを観ることになった。
「ほんとはご飯作ろうか迷ったんだよ」
ドライブスルー後の家に向かう車でそう言ってもらえた。
ほんとはうれしくてたまらなかったけど、こういう時のリアクションが苦手な僕は
「そんな全然気遣わなくていいよ」
と気持ちを隠す。
家に着く。
学生時代好きだった、今でも好きな初恋の人の家に入れる。
内心ソワソワだけど、バレないよう平然を装う。
相変わらずのダサい僕。
マックを食べながらキングオブコントを一緒に観る。
解説をする僕。
感心して聞いてくれるともみちゃん。
とても幸せな時間が過ぎていく。
観終わった後は、懐かしい話に花が咲く。
修学旅行の下見で鎌倉に行ったらしく、同じ班だったことをともみちゃんも覚えてくれていた。他にも同級生の誰々が結婚したねとか、少し恋愛っぽい話もしたり。
「マッキーってさ、ゆうりくんのこと好きだったよね」
急にともみちゃんから切り出された。
そっか。だから、同窓会で近くの席にいたり、ライブにも来てくれたことがあったのか。
そうだったのか。決して鈍感ではない方だと思っている僕だけど、全く気づいていなかった。
だって、僕はともみちゃんのことしか見ていなかったから。
そんなことを言えるわけもなく、歯切れの悪い返答しかできなかった。
このままお互いの恋愛の話をするのは自然な流れだった。もしかしたら、ともみちゃんもそうしたくて、この話をしたのかもしれない。
そんなことがわかっていながらも、切り出せなかったのは、僕は映画館のともみちゃんと付き合っていたからだった。
自惚れているのかもしれないことを承知で言うのなら、ともみちゃんは勇気を振り絞り話してくれたのかもしれない。
それなのに、本質に触れることなく、外側をなぞったような返答しない僕を中途半端だと思ったのかもしれない。
でもそれが僕の精一杯だった。
駅までともみちゃん送ってもらい、電車に揺られる帰り道。
はじめて家に招いてもらった。
そんな楽しさ、嬉しさでいっぱいの感情よりもほんの少しのモヤっとが頭の中を埋め尽くした。
自分の気持ちに正直になろう。
気持ちを整理しなくちゃ。
この特別だった1日を当たり前の毎日にできるよう、僕は覚悟を決めた。
もうこの気持ちはブレない。