見出し画像

第14回「先輩、なんで映画観ろって言うんですか?」

 先月、『街の上で』っていう映画観たんだよね。下北沢を舞台に燻ってる若者達の群像劇っていうか、僕はコメディだと思って観たんだけど。脚本がすごくよく出来てたのと、ダメな主人公がダメなだけでなく好感や共感を持って受け止められるように描いていて、実は自分で気づかないうちにモテてたり、”趣味程度”って本人は思ってるギターの弾き語りがめちゃ上手くて、「俺なんかすごいことしちゃいました?」系主人公の気持ち良さを入れてきてるなって思って…あ、もう公開終わっちゃったけど、絶対レンタルとかサブスクで観たらいいよ!

…と打合せの帰り道、新入社員くんに映画を薦めていたら、彼に「持ち込みや打ち合わせでもよく”映画を観た方がいい”って話になるんですけど、よくよく考えると何でですかね?」と聞かれまして…

「あれ?なんでだろうね?」

…と返してしまったダメな先輩は私です。
 持ち込みや、漫画専門学校から依頼される講演などでも「漫画家を目指す上でやっておいたことがいいことありますか?」という質問に「映画をたくさん観ておくといいと思います」という、一つのテンプレートなやり取りがありますが、正直、漫画家を目指す人は観ても観なくてもいいと思います。日々、お付き合いする漫画家さんも体感的には「映画好き」が多いですが、「全く観ない」「もっというと漫画もあんまり読まない」という方もいるにはいます。(その代わり、そういう人は他にもっと熱心に追いかけてるものがある印象。)

 一方、漫画編集は映画を観た方がいいんでしょうか?僕は少なくとも「大嫌い」でなければ観ておいた方がメリットが多いと思うんですね。「あれ?なんでだろうね?ちょっと待って、今考えてみる!」と捻り出したメリットが以下です。

①作家さんには「映画好き」な方が多いので、観ておくと共通言語が作りやすい。
「面白い」「つまらない」は主観になりがちですが、大ヒット映画の「あのシーンで泣いた」「あのセリフにシビれた」にはもう少し客観性が担保されている(…気がする)ので、打合せ時の共通言語にしやすい。

②「良いコマ割り」「良い構図」という感覚を磨きやすい。
よく「コマ割りが悪い」「構図が悪い」という言い方をしますが、本当は「コマ割りがよくわからない」「構図がよくわからない」なのでは。これは漫画においては、作者の脳内のカメラで実際には実現しない構図も作れてしまうために、やりすぎると読む人には よくわからなくなってしまう。実写の映画においては実在のカメラが使われるので、実現しない構図は存在せず、またどこかにピンを合わせないといけないので持ち込みの原稿などで「どうしてわかりづらいんだろう」と思った時に一つの検討する基準になる。

③多くは2時間程度で話が完結するので、読切の構造に似ている。
話の「振り」があって「落ち」が付く。その「オチ」に至るまでに、どんな工夫があるのか(無いのか)、くらいに注意して観ておくと参考になる。

④かなりジャンルがはっきりしている。
「ラブストーリー」「バトル」「アクション」「ホラー」「人間ドラマ」など、ジャンルを定めていることが多いので、このジャンルにはこういう要素が必要なのね、ふむふむと思いやすい。

…っていうようなことを言いたかったんだと思うけど、電車に乗ってる10分ではまとめきれなかったので、今まとめた!ごめん、後輩!

今週は以上です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?