小田太郎

「月刊少年マガジン」編集。 担当は『龍帥の翼』『さよなら私のクラマー』『愚者の星』『恋…

小田太郎

「月刊少年マガジン」編集。 担当は『龍帥の翼』『さよなら私のクラマー』『愚者の星』『恋は世界征服のあとで』過去担当作は『ましろのおと』『ボールルームヘようこそ』『紺田照の合法レシピ』など。Twitter→ https://twitter.com/odaodatarotaro

最近の記事

第17回「こんなに悩む私ってヘンですか?」

 漫画の打合せをしていると、何度も具体論と抽象論を行ったり来たりします。 「何が面白いのか」「その為にはどんな主人公であるべきか」「サブキャラクターは?」「ページ数はこれで最適か」 …話すことは多岐に渡ります。  ほぼ完成していたネーム(絵コンテ)を全て捨てて一から作り直す、なんてこともザラです。  今まさに打合せしている作家さんから言われたのがタイトルの言葉です。 よくよく話し合い「主人公のキャラは今のままでいいのか?」「やはり目指すべき楽しさが違うのではないか?」と煮

    • 第16回「キャラの設定って、どのくらい必要?」

      「これは主人公の身長、体重…」 「これは住んでる家の間取りね…」 「これは家族構成とクローゼットの中身…」  それは、とある作家さんが新連載の打合せで見せてくれたキャラクターの“設定”でした。  当時、編集として経験の浅かった僕は、その詳細さに圧倒される一方で、先輩編集から言われた「設定が多すぎる漫画はダメなんだよ」という言葉も思い出し… 「一体、キャラの設定ってどこまで作るのが正解なんだ!?」 と混乱しました。 たまらず、恥も外聞もなくその作家さんにそのまま聞いちゃっ

      • 第15回「みんなの”面白い”と自分の”面白い”」

         月刊少年マガジン編集部では3か月に1回、新人賞を開催しております。 http://www.gmaga.co/newface/  もし投稿先を迷っている新人作家さんがいたら、8月末締め切りなのでぜひご応募ください!  この賞の選考では新人編集から編集長まで、部員全員で最終選考作品を読み、それぞれが各作品に得点を付ける、という方式で行います。(画力、ストーリーなど項目があり、それぞれ5点満点です。) 先日もまた、新人編集くんに「どんなことに気をつけて点をつけたらいいですか?」

        • 第14回「先輩、なんで映画観ろって言うんですか?」

           先月、『街の上で』っていう映画観たんだよね。下北沢を舞台に燻ってる若者達の群像劇っていうか、僕はコメディだと思って観たんだけど。脚本がすごくよく出来てたのと、ダメな主人公がダメなだけでなく好感や共感を持って受け止められるように描いていて、実は自分で気づかないうちにモテてたり、”趣味程度”って本人は思ってるギターの弾き語りがめちゃ上手くて、「俺なんかすごいことしちゃいました?」系主人公の気持ち良さを入れてきてるなって思って…あ、もう公開終わっちゃったけど、絶対レンタルとかサブ

        第17回「こんなに悩む私ってヘンですか?」

          第13回「直木賞作品『テスカトリポカ』を読みまして」

           山本周五郎賞に続き、直木賞を受賞したこちらの小説『テスカトリポカ』、読みました?  この小説、「古代アステカ文明×メキシコ麻薬カルテル×東南アジア臓器移植ビジネス×川崎の無国籍児童問題」と、ごった煮テーマで、ハードカバー560Pという極厚本なのですが『クレイジージャーニー』と『ブレイキングバッド』を同時に観ているかのような目まぐるしいスペクタクルを味わえる快作で怪作でした!(佐藤究さんの前作『Ank』もめちゃ面白いのでオススメ。)  僕がこの小説を手に取ったきっかけは二

          第13回「直木賞作品『テスカトリポカ』を読みまして」

          第12回「最初の打合せで必ず聞くこと」

           暑いですね…。急に梅雨が去り、『エヴァ』は100億を超え、『ハサウェイ』も神がかった画を観せてくれ、『ルックバック』はトレンドを席巻した昨今、いかがお過ごしでしょうか?オリンピックのせいで今週の平日が3日しか無いことに絶望している月マガ編集部です…。 さて、8月末には月マガの新人賞の締め切りも差し迫っております。 http://www.gmaga.co/newface/comicdebut_entry.html  今週は持ち込みや投稿をしてくれた新人作家さんに「最初の打

          第12回「最初の打合せで必ず聞くこと」

          第11回「打合せで上手に喋るコツ」

           僕はこの仕事で「打合せ」が一番好きですが、入社したての慣れないうちはとにかく緊張するし、「作家が本気で考えたこと」に意見するのが怖くて、ただただ萎縮して縮こまってましたね。どうしたら上手く喋れるだろうか…と悩んでいました。  しかし、いきなりタイトルをひっくり返すようですが「上手に喋る」必要はなかったりします。これまでの経験上、ど素人のペーペー新入社員編集がなけなしの勇気を振り絞って発言したことに、キャリアがあるベテラン作家さんも、才能あふれる新人作家さんも真摯に耳を傾け

          第11回「打合せで上手に喋るコツ」

          第10回「新入社員に捧ぐ、その2…打合せでやることリスト」

          前回に続き、新入社員編集に送ったメール抜粋です。時勢のせいにはしたくないですが、昨年から新入社員が先輩編集やベテラン作家さんの打合せに同席する機会も減ってしまいました。ただ、それも戻りつつあるので、ここで一度「編集と漫画家って、どうやって打合せしてんの?」というのを書き残しておこうと思います。 くれぐれも「僕の場合」ですけどね。担当と作家の数だけ打合せのやり方はあるし、正解は無いと思います。難しいし、大変だけど僕は作家さんとの「打合せ」がこの仕事で一番好きです。 だって、

          第10回「新入社員に捧ぐ、その2…打合せでやることリスト」

          第9回「新入社員に捧ぐ…入社1年目やることリスト」

          講談社では4月に入社した後に、2ヶ月の研修を経て6月に本配属となります。今年もこの6月に新入社員が月マガ編集部にやってきました。今回のnoteは歓送迎会もろくに開いてもらえない、彼らに「先輩、冷たいっすね」と言われたくないので、好々爺ぶって書いたものを抜粋転載したものになります。新入社員向けに書いたものですが、「書いた以上はお前もやるんだよね?」という圧を自分にかけるためにもここに載せるとにしました!ゲフッ_:(´ཀ`」 ∠): ここから新入社員に語りかける口調になりますが

          第9回「新入社員に捧ぐ…入社1年目やることリスト」

          第8回「映画『ヤクザと家族』観ました?」

          みなさん、映画『ヤクザと家族 The Family』観ました? https://youtu.be/DTER1zzFecM 本当は映画館で鑑賞したかったんですが、すっかり機会を逃し 先日、Netflixに入ってきたので早速、観たのですが… いやー、面白かった!傑作です。 元々、任侠映画が好きで近年は『狐狼の血』なんかもすごく良かったのですが、また違った味わいでした。 この『ヤクかぞ』(かわいく略してみました)、前半と後半でテイストの異なる2部構成(見方によっては1部をさ

          第8回「映画『ヤクザと家族』観ました?」

          【休載のお詫び】漫画編集が育休取ってみた件。

          しれっと休載してました、本noteですがタイトルの通り、そう…育休を取ってました。 一月だけでしたが仕事を始めて以来、こんなに長く職場を離れたことがなかったので、休む前も引き継ぎにドキドキ、休んでからもハラハラ、復帰後もアワアワしっぱなしで……快く送り出し、また迎えてくれた作家さん、部署の皆さんには感謝しかありません。 「こんなに漫画(仕事)と距離のある生き方があるのか」と非常に新鮮な日々でした。育児ブログじゃないんでその辺は割愛しますが…まぁ〜新しい育児(仕事)に面食らっ

          【休載のお詫び】漫画編集が育休取ってみた件。

          第7回「今、一番読まれている電子媒体とは?」

          さーて、今週のテーマは〜〜 「今、一番読まれている電子媒体とは?」 です。 なんでしょうね…Kindleかな、ピッコマかな?めちゃコミかな? …と、このテーマで書こうと思ったのは、弊社コミック販売部の敏腕O女史との世間会話に端を発します。 彼女は鉄のメンタルを持ち、月マガ販売担当として時にシビアに、時に強気に販売戦略を進めてくれる頼れる相棒なのですが、そんな彼女がふと、こんな話をしてくれました。 O女史「そういえば、小田さん。最近、周りの同世代の友達に調査も兼ねて”デジタ

          第7回「今、一番読まれている電子媒体とは?」

          第6回「任天堂から『パラサイト』『SPY✖️FAMILY』『流浪の月』へ」

          さて、前回の「枯れた技術の水平思考」ですが、例えばこんなことでは?と思った例をご紹介します。(このnoteでこんなこと書くのもなんですが…ネタバレを含みますw) 映画『パラサイト』 漫画『SPY✖️FAMILY』 小説『流浪の月』 これらの作品をご存知でしょうか。(知ってると思いますが)それぞれ、アカデミー賞受賞、1巻100万部突破、本屋大賞受賞などなど…押しも押されもせぬ大ヒット作品です。 僕がこれらの作品を読み(観て)、感じたアイデアに共通する設定(枯れた技術)。そ

          第6回「任天堂から『パラサイト』『SPY✖️FAMILY』『流浪の月』へ」

          第5回「任天堂に漫画編集が学んだこと」

          さぁ、ついに第5回まで来ました。やればできるもんですね😄(自己肯定感が高い) なんで急に任天堂が出てくるのか?と思ったそこの貴方。 先日、たまたま「任天堂はなぜヒットコンテンツを生み出せるのか?」という記事をとある雑誌で読みまして…これ自体は非常によく語られる話みたいなんですが寡聞にして存じ上げませんでした。 ザックリ言うと「枯れた技術の水平思考」が一つの要因にあるようです。ザックリしすぎて何のこっちゃですが要は… 「枯れた技術」…は悪口ではなく「最先端ではなく世間に

          第5回「任天堂に漫画編集が学んだこと」

          第4号「画力って、何?」

          さて、今週のテーマは「画力って何?」です。 僕もこれまで持込でも新人賞でも新人作家さんに「画力が…」って1万回ぐらい言ってますね、たぶん。 もちろん漫画は絵から受け取る情報が多いので、画力が高いと「なんかこの新連載の絵、かっこいい!」「このカバーイラストに惹かれて買った!」と有利なのは間違いないのですが… 画力って数値化できない…ですよね。 まだ「正確さ」はパッと見でわかりやすいですが(デッサンや遠近感が整っている、など) 一方、「正確な絵」だからと言ってイコール「面白

          第4号「画力って、何?」

          第3号「良いキャラクターって、どんなキャラ?ー主人公についてー」

          はい、皆様、飽きずにまた当noteに来て頂き、ありがとうございます!今週のテーマはこちら! 「良いキャラクターって、どんなキャラ?ー主人公についてー」 です!こちらも後輩から質問が多く、僕自身も常に頭を悩ませることではあります。世の中には様々なキャラクターいますねー。これも一つの正解があるわけではないのですが、まずは「主人公」に絞って、ごく基本的な要素に分解してみようと思います。 故・小池一夫先生は「展開(ストーリー)から考えてはダメ。かならずキャラクターを起(た)て、

          第3号「良いキャラクターって、どんなキャラ?ー主人公についてー」