「機動戦士ガンダムAGE」思ったより悪くなかったよ
今年「閃光のハサウェイ」の映画の第一作が公開され、来年に新作TVシリーズや映画が決まり、ガンダム界隈が賑わっている。
そんな中、僕は動画サイトの無料登録期間で、おもむろに「ガンダム」で検索したところ、「機動戦士ガンダムAGE」が出てきたので、少し観てみることにした。
「機動戦士ガンダムAGE」はあまりおもしろくないやリアルタイムで途中で観るのやめたという声を聞いていた。そこで、どのくらいおもしろくないのかを観てみるかと観てみたら、結構面白く、満足したので、少し書いていこうと思う。
前評判を気にして、観ていない人がいたらぜひ観てみてほしい。その上で面白くなかったら、面白くないといえばいいし、面白かったら面白かったと言えばいいと思う。まず観てみないことには、何も語る権利は持たないと思う。
今回ある程度、ネタバレを抑えたいと思いつつ、どうしても避けられないネタバレはあるので、観点ごとに分けて書こうと思う。気になるところは飛ばして読んで、実際に観てみてほしい。
ストーリー
「機動戦士ガンダムAGE」は基本的には4つに分かれているとされる。
①フリット編
②アセム編
③キオ編
④三世代編
である。
①から④に向けて、時間が進んでいき、それぞれの主人公が前編の息子という形になっている親子三世代の物語である。
さて、肝心のストーリーの感想であるが、ストーリー自体はとてもいいものであった。ただ、ストーリーが壮大であり、劇中時間が100年であるがゆえに49話の中では描ききれていない部分があった点は否めないと思う。49話の時点で、初代ガンダムよりも長いが、あれは一年戦争の半年分程をアニメにしているわけで、まったく事情は異なる。
したがって、展開が少し急であることは否めない。他のガンダムで例えるなら、F91のような感じかもしれない。ただ、重要なシーンにはある程度時間を割いていると思われるので、ストーリーの流れは理解できるはずである。
また、ストーリーから少し脱線するかもしれないが、子どもうけをねらったということもあって、ガンダムのややこしい設定が省かれている点は否めないだろう。このややこしい設定がガンダムの面白さではあるのにもかかわらずだ。宇宙空間でのGのかかり具合や、モビルスーツの動力源やスクリーンなどである。この点は、往年のガンダムファンには受け入れられない点と言えそうである。
さて、それぞれの編について少し書いてみよう。
まず、①のフリット編であるが、ファーストガンダムを子ども向けにしたという印象を受けた。ただ、途中まで駆け足で進んでしまい、物足りなさを感じた。しかしながら、最後の方は充実し、物語のはじまりを演出することはできていたのではと思う。未知の敵との戦いや戦争の悲惨さを感じるシーンやフリットの成長の過程などが、淡々と描かれていて、感情移入する間もなく次に次にと進んでいく感じが少し残念であった。
②のアセム編であるが、僕的にはすごく好みではあった。Zとseedをうまく混ぜ合わせたと言ってもいいと思う。ただ、やはり物語の展開が早すぎた。アセムの葛藤や成長のシーンが人間くさく描かれている反面、アセムとゼハートの学園シーンはもっと描いてほしかった。しかし、そこら編は後に映画として描かれているので、ぜひ「機動戦士ガンダムAGEMEMORY OF EDEN」を観ていただきたい。
③④はアセムの息子のキオが主人公となる。ここはとてもガンダムっぽいと思ってしまった。ZZと逆シャアとUC的な要素がある。戦争の相手を知り、キオなりの解決と理想を見つけ、それに従い戦う。この過程はガンダムパイロットっぽいと思う。ただ、やはり最後の落としどころに制作側の苦悩が垣間見える。ラスボス戦のスピードエンドや銅像エンド(ここにキオの息子が出てくれば完璧だと思った…)、ゼハート戦など、もう少し深堀してくれ感が残ってしまった。
総じて、宇宙世紀のややこしいところを取っ払った感じのストーリーとなっていると言える。三すくみなどはない。宇宙世紀では初代からVガンダムまで何百話かあるので、49話ではまとめきれないのも仕方がないのかもしれない。
モビルスーツ
モビルスーツはガンダムの花形とも言える。そのモビルスーツがかっこよくなかったら、ガンダムシリーズとしてダメであろう。
まず、モビルスーツの設定の深堀が足りなかった。モビルスーツの動力源は何か、ビームサーベルなどの武器はどういう仕様なのか、コックピットやノーマルスーツの耐Gなどはどうなっているかなどなど。しかし、子ども向けの新たなガンダムをつくる上では、これらの設定はない方がいいのかもしれない。いずれにせよ、往年のガンダムファンは、この点が受け入れられないではないか。
ただ、世代が進んでいくことで、少しづつモビルスーツがバージョンアップしている点は評価できる点であろう。このバージョンアップの方向性は宇宙世紀とほぼ同じではあるが。フリット編からアセム編になると、変形モビルスーツや全周囲モニター、アセム編からキオ編になると、変形合体などの世代ごとに変化があるのは、面白い点ではある。
さて、肝心のモビルスーツに対し、両陣営ごとそれぞれ少し書いていこう。
連邦側は、基本的には宇宙世紀と変わらない。ガンダムがいて、量産機がある。そして、カスタム機も出てくるといった感じである。ただ、一つだけ言わせてほしいのが、僕はAGE-1のデザインが好きになれないことである。AGE-2やAGE-3、AGE-FXはかっこいいと思うのだが、AGE-1だけはRX78ガンダムを踏襲しているとはいえ、シンプルさとデザイン性のバランスが取れていないように思ってしまう。
他方敵側は、これまでのガンダムの中でも珍しい、獣的なデザインである。これはややこしい設定を省いたからできたことかもしれないが、敵のモビルスーツは新鮮な気持ちで見ることができた。宇宙世紀で言うと、ハンブラビやガザCなどのデザインを初めて見たときの衝撃と似ている。シールドやビームライフルなどの火器を基本的には持たないモビルスーツは、他の作品だと珍しい部類に入ると思われる(思いつく限りでも、前述の2つやアッガイ、バイアラン、各種MAが挙げられる)。これにより、敵の不気味さがうまく表されていたと思う。
キャラクター
ガンダムシリーズには、敵味方問わず、魅力的な登場人物がたくさんいる。キャラクターもガンダムを語る上で欠かせない一つの要素であろう。「機動戦士ガンダムAGE」もまたその一つである。
ただ、往年のガンダムファンからしたら受け入れられない点が一つあると思う。それはキャラデザである。子ども向けであることと、レベルファイブが制作に関わっていることで、キャラのデザインがこれまでのガンダムシリーズと大きく異なるのだ。それに伴い、少しアニメの絵の感じが幼い印象を受ける。リアルロボットを求めていた視聴者には、このキャラデザは受け入れられないものであったかもしれない。
しかし、登場人物たちの振る舞いや過去、ストーリーでの動きは、流石ガンダムシリーズという印象を受けた。
特に本作では、劇中で世代交代があるので、世代を超えた登場人物の成長や振る舞いが見られる。宇宙世紀で言うと、あの若かったブライトがUCでの頼もしい艦長になるまでの過程などだろうか。フリット編ではこの立ち位置だったが、アセム編ではこうなるのかや、アセム編でのあの出来事がキオ編でのあのキャラのあのセリフを生み出したのかなどが楽しめる(オブライトさん…)。こういった時代を超えたキャラの変化を見られるのは面白い点である。
小ネタ
ガンダムシリーズでは小ネタがよくあり、それも僕たちを楽しませてくれる要素でもある。
僕が気づいた少し面白い点を紹介しようと思う。おそらく小ネタとよべるほどのものではないと思うが。
僕が少し面白いと思った点は、主人公たちの髪型である。フリットはいいとして、アセムとキオの髪色はお母さんと同じ色になっている。父親側の髪の色への遺伝子が残らないようである。髪型もアセムは両親を受け継いだような髪型になってはいる。しかし、アセムの髪型が複雑になってしまったからか、キオの髪型はアセムを受け継いではいない。さらにはアセムもキオ編では髪型が変わる。アセムの髪型が複雑すぎて、サンライズ側も少し困っていたのかもしれない。
また、中の人が結構豪華という印象を受けた。近年声優ブームということもあり、声優にフォーカスを当てるのも一つの見方ではあると思う。そして、実は他のガンダムシリーズに出ていた人の中にも参加している人が結構いる。恋人を弟に殺されたお姫様役を後に演じる人であったり、ギロチンにあったお母さんの頭を持ったセリフが有名なガンダムパイロットであったり、おヒゲのガンダムのパイロットなどなどである。こういった見方を最近では肯定されてきているのではないか。
OP、ED
最近のアニメの見方として、OPとEDがそのアニメの顔のように思われるときがある。
ガンダムシリーズも数々の名曲を生み出してきた。その中に「機動戦士ガンダムAGE」の楽曲も少しくらい入れてもいいのではないかとは思う。有名なアーティストさんたちが使われているので、OPとEDに注目してもいいと思う。
その中でも一番感動するのは、SPYAIRの「My World」であろう。
この曲はアセム編のEDである。アセム編は、ガンダムシリーズ屈指の主人公の劣等感が描かれているところだと思っている。そこにアセムの悩みや苦悩が分かる歌詞と歌い方のこの曲があることで、アセム編の面白さを一層引き立てていると思う。
他にもいい曲があるので、自分のお気に入りのガンダムシリーズの名曲たちを探すのも、ガンダムシリーズの楽しみ方の一つだと思います。
おわりに
「機動戦士ガンダムAGE」を観る前の前評判はいいものではなかった。しかし、観てみたらまた違う楽しみ方ができたと思う。
とやかく言う前に一旦観てみて、文句やらなんやら言うことが大切だと思う。
これからガンダムシリーズもまたさらなる盛り上がりを見せるので、その波に乗り遅れないように過去作を観てみるのも、ガンダムの世界を楽しむために必要なことなのかもしれない。