見出し画像

『機動戦士ガンダムZZ』を勝手に語る

『機動戦士ガンダムZZ』(以下『ZZ』)は『機動戦士ガンダム』(以下『ファースト』)、『機動戦士Ζガンダム』(以下『Z』)の次に放送したガンダムの第3シリーズである。しかし、最初期のガンダムシリーズでありつつも、NHKのガンダム投票だと、全シリーズ中22位とあまり人気のないシリーズとなっている。(ちなみに、『ファースト』は1位、『Z』は2位)

しかし、僕は『ZZ』は『ファースト』や『Z』とは違う面白さがあり、宇宙世紀としても重要なシリーズであることを声を大にして言いたい。そこで、どのような点が面白いか、どこらへんが宇宙世紀でも重要な点であるかを説明していく。

※大胆なネタバレがあるので、『ZZ』を新鮮な気持ちで観たい人は読まない方がいいかもしれません。
※間違えてるところや違う意見がある人はこっそり教えて下さい。個人の見解を多く含みます。
※完全に勉強不足なのですが、『クロスボーンガンダム』や『Vガンダム』はまだ観ていなく、そこらへんのことは随時更新できればなと思ってます。

「一年戦争」と「シャアの反乱」をつなぐストーリー

まず、ガンダムシリーズの中での『ZZ』の位置づけを確認していく。『ZZ』はいわゆる「アナザーガンダム」ではなく、「宇宙世紀」を舞台としたガンダムシリーズである。「宇宙世紀」は『ファースト』から始まるガンダムシリーズの原点である。そこで、『ZZ』のシリーズに関わるような「宇宙世紀」が舞台のガンダムシリーズを軽く年表にしてみる。

0079-0080 一年戦争(『ファースト』)

0083 デラーズ紛争(『機動戦士ガンダム0083』以下『0083』)

0086 グリプス戦役(『Z』)

0087  第一次ネオ・ジオン抗争(『ZZ』)

0093 第二次ネオ・ジオン抗争/シャアの反乱(『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』以下『逆シャア』)

0096 ラプラス事変(『機動戦士ガンダムUC』以下『UC』)

となっている。この流れは宇宙世紀におけるアースノイド対スペースノイドの歴史でもある。スペースノイドはアースノイドに切り捨てたと考えている。それに対して反発したスペースノイドの代表がジオンであり、それを抑え込もうとする地球連邦との戦いの歴史でもある。

そして、『ZZ』で描かれている宇宙世紀の出来事は「第一次ネオ・ジオン抗争」である。「一年戦争」で負けたジオンは事実上の敗北が決定した時点で、兵士が退却し、逃げ延びたのであった。主にアステロイドベルトにある小惑星アクシズに逃げのびる。このアクシズの勢力がジオンの残党の中では一番巨大であり、エギーユ・デラーズ率いる軍が地球連邦に一泡吹かせた『0083』で描かれる「デラーズ紛争」にも兵器(ノイエ・ジール)を送っている。

そして、地球連邦が内紛を起こしている際に漁父の利を得ようとし、地球圏にハマーン・カーン率いるアクシズが到来する。(グリプス戦役)そして、連邦は内紛の末、弱体化し、腐敗した。それを見逃さなかったハマーン・カーンは地球圏を掌握するため、呼称をアクシズからネオ・ジオンへと改め、地球圏に進出した。ここから始まったのが「第一次ネオ・ジオン抗争」である。

しかし、ハマーンの企みはうまくいかなく、ネオ・ジオンは敗北する。ハマーンを失ったネオ・ジオンは新たな支配者を欲していた。そのときにシャアが立ち上がり、第二次ネオ・ジオン抗争を起こし、その後の『UC』に繋がる。

以上からも分かるとおり、『ZZ』は宇宙世紀の中でも重要な物語である。ただし、始まりでも終わりでもなく、繋ぎとして重要であることが人気がイマイチのポイントでもあるだろう。

(ただ、やはり繋ぎとして後のガンダムシリーズをより楽しむために観ておくことがよいであろう。例えば、『UC』の重要人物であるマリーダ・クルスの出自が分かること)

『ZZ』内の政治的側面

ガンダムシリーズではしばしば政治的な権力争いが描かれている。権力争いのために親を手に掛ける子や世界の戦争根絶を目指す組織とそれに対抗する組織などがそれである。このような政治的な側面は『ZZ』にも見られる。しかも、その側面は宇宙世紀にとって重要な位置を占めている。

まず重要な側面として、ハマーンが「アクシズ」から「ネオ・ジオン」と呼称を変更したことが挙げられる。これは、グリプス戦役のときにはアクシズとして小惑星に駐留する戦力のみを指していたが、ネオ・ジオンと改名することで、一年戦争を起こしたスペースノイドの代表者の再来という意味を持たせたプロパガンダ的な意味合いを持つ。アクシズという名前のままだったら、地球圏の掌握の一歩手前まで行くこともなく、後のシャアの反乱が起こるほどの戦力は望めなかったであろう。

さらに、「第一次ネオ・ジオン抗争」により、一年戦争を起こしたザビ家は衰退の一途をたどった。ザビ家はスペースノイドの独立を求め、一年戦争を起こした張本人である。彼らは一年戦争で血筋が絶たれたと思っていたが、忘れ形見としてミネバ・ラオ・ザビがいた。そこで、彼女を当主として、摂政であるハマーンが権力を持ち、地球圏に進行したのだ。しかし、ザビ家の血を引くと言われるグレミー・トトによって、ハマーンが権力を持つジオンに対して、純粋なザビ家の血による支配をするジオンによる内紛が起こってしまった。結果的にネェル・アーガマの活躍により、両者ともやられてしまい、ザビ家による地球圏の掌握は夢に終わったのだった。

また、その内紛に伴い、グレミーがアクシズに拠点を置き、ハマーンがコアスリーに拠点を置くことになる。アクシズはジオン再興の象徴の一つである。また、ハマーンが地球進行の際、地球連邦からサイドスリーを譲り受けた。そのサイドスリーのコロニーの一つがコアスリーである。つまり、グレミーはジオンの再興の象徴を、ハマーンは一年戦争を起こしたジオンの象徴を拠点としたのである。これは両者ザビ家の力が及ぶところである。最終的にはコアスリーは壊れ、アクシズも行方不明になり、シャアの反乱で地球に落とされそうになる。これは事実上のザビ家の衰退を表すと言っても過言ではない。現にシャアの反乱はサイド1のコロニーから反乱を起こす。シャアの反乱はザビ家ではなく、ニュータイプ論の提唱者であるダイクン家の反乱でもある。(むしろザビ家がここで衰退しなければシャアは反乱を起こせなかったかもしれない)

明るいキャラと悲惨な現実

『ZZ』は『ファースト』と『Z』が重い雰囲気であったので、初めは明るい作品を作ろうとしていた。それにもかかわらず、内容は戦争という悲惨な出来事を描くために、段々と重い話になっていく。その変化に取り残されたのがキャラクター達である。

グリプス戦役で疲弊したアーガマは、古いコロニーであるサイド1のシャングリラに入港する。そこで出会った少年少女は、あまりお金がなく、その日暮らしのような生活をしていた。しかし、彼らにニュータイプの素質があったり、モビルスーツを操縦できる事などの理由からアーガマに乗ることになる。これが後にネオ・ジオンの反抗を食い止めるガンダムチームである。

ガンダムチームの少年少女はコロニーに住んでたら経験しないような、大人のエゴにより引き起こされた戦争に巻き込まれていく。まさしく戦争がアニメじゃないものとして、彼らに降りかかるのである。その中で彼らは、多くの人に出合い、互いに手を取り、協力しながら成長していく。最初はそれぞれが現実を受け入れられず、自身のわがままで活動することも多かった。ビーチャやモンドはネオ・ジオンに協力したり、ジュドーは単独行動をしたり。そんな彼らも最後に向かうに連れ、自身の立場や役割を自覚し、自身の信念や感情と葛藤しつつ、成長していくのである。

『ZZ』では、非常に数多くの悲惨な現実が描かれている。妹の誘拐、文明から隔離されたコロニー、生活のためのスパイ活動、スペースノイドの地球進行、アフリカ独立戦線、腐敗した連邦政府、コロニー落とし、英雄(ハヤト・コバヤシ)の死などである。これらにより、ガンダムチームは成長し、また名前のない人々も次のステージへ進む。その様は『機動戦士ムーンガンダム』や『逆シャア』、『UC』へと大きく関わっているのである。

ジュドー・アーシタというニュータイプ

『ZZ』は明るい物語を目指したことは前述の通りである。それゆえに主人公も明るいキャラクターであった。それこそが、『ZZ』の主人公で、第3のニュータイプのジュドー・アーシタである。彼はわがままでやんちゃな面はあるが、仲間意識が強く、特に妹のリィナに対していいお兄ちゃんであった。

ニュータイプとは孤独である。彼らは認識能力が高いゆえに、人より多くのことが分かってしまう。だからこそ、他の人には分からない境地にあり、孤独になってしまう。アムロは唯一分かり合えたララァを自分の手で殺めてしまう。カミーユは分かり合えた相手、フォウやロザミィが次々と戦火に巻き込まれ命を落とし、分かろうとした幼馴染のファ・ユイリィも切り捨てようとしてしまう。

しかし、ジュドーは孤独なだけではなく、仲間に恵まれたニュータイプとも言える。アムロは分かり合える相手がいることに最後になって気づいた。カミーユは孤独であるがゆえに壊れてしまった(TV版)。ただ、ジュドーは最初から最後まで仲間に支えられて仲間とともにいたニュータイプである。仲間がピンチのときに助けに行ったり、助けられたりとジュドーの行動には仲間か妹が関わっている。

彼はそれゆえに周りが見えている。誰かのためにが念頭に置かれており、自分のエゴだけではあまり行動をしない存在でもある。これは歴代のニュータイプの中でも対比して現れる。
アムロはブライトに殴られ反抗はするが、結局やることはやる。また、カミーユはブライトやウォンさんに殴られ、徹底的に反抗し、徹底的に殴られる。しかし、ジュドーはウォンさんに殴られそうになるが、かわして逆に蹴り返す。最後にはブライトまでも殴る。
この対比から分かるとおり、ジュドーの行動には仲間意識があるために、勝手な行動をしても殴られづらく、仲間のために殴ることもするという、仲間思いの優しいニュータイプと言えそうである。

そんな彼が大人のエゴである悲惨な現実で、仲間のためという信念を押し通そうとする姿は素晴らしいものである。

モビルスーツの発展史

戦争には兵器が必要である。その兵器は時代によって段々と発展していく。宇宙世紀においてその兵器はモビルスーツという形として表れており、『ZZ』では第2〜4世代モビルスーツが多く登場している(第1世代も出てくるけども)。

まずモビルスーツの世代を確認せねばならないだろう。簡単に説明を加える。

第1世代
モビルスーツの走り(ザク、RX-78-2ガンダムなど)
第2世代
全周囲モニターとリニアシートを搭載している(リックディアスなど)
第3世代
可変モビルスーツ(Zガンダムなど)
第4世代
大火力かつそれを支えるサイコミュシステムを搭載(キュベレイ、ZZガンダム、ゲーマルクなど)
第5世代
ミノフスキークラフトを搭載した大気圏での高速移動が可能になる(Ξガンダム、ペーネロペーなど)

といったところである。この後にモビルスーツが小型化し、『機動戦士ガンダムF91』の世界に繋がる。

この発展史で語られるモビルスーツが『ZZ』には数多く出てくる。ガンダムチームを見ても、第2世代のガンダムMk- Ⅱ、百式(2.5世代とも言えそうだが)、第3世代のZガンダム、第4世代のZZガンダムと様々な世代のモビルスーツが配備されている。これらは第3世代の方が第4世代よりも劣ってるわけではなく、適材適所で使われているのある。

また、「一年戦争」が大きな戦争であり、それ以降の「グリプス戦役」や「第一次ネオ・ジオン抗争」は戦後の戦争とされる。戦後の戦争は、大きな戦争の後に同じ轍を踏まないための予防策や権力争いの側面がある。

それに対して、莫大な資金は投資できないのである。なぜなら大きな戦争で資金を使い切り、疲弊しきった中だと、相手もそんなに大きな戦争を起こせないからである。それゆえに『ZZ』で描かれる「第一次ネオ・ジオン抗争」でも、両者資金難に陥ってる。だからこそ第2世代の古いモビルスーツを使っていかなければいけない状況なのであり、出てくるモビルスーツの種類は多いのである。

しかし、この資金難がモビルスーツの発展史に大きく影響を与えている。『ZZ』ではその様を見ることができる。

さて、モビルスーツにおいて一番資金が必要な部分とはどこであろうか。それは、パイロットである。パイロットの育成には時間と資金が必要である。その手間暇かけたパイロットを簡単に失うわけにはいかない。それゆえにパイロットが乗るモビルスーツは良質なものでなければならなく、パイロットにとって乗りやすいものでなければならないそれが第3世代から第4世代への変革である。第4世代のモビルスーツはキュベレイなどの強いニュータイプ能力がある人しか乗れない機体やゲーマルクなどのサイコミュによる機体制御による大火力な機体が出てくるのである。このモビルスーツの考え方は、後のサザビーやνガンダムにつながるのである。

このモビルスーツの発展史的に戦後の戦争である「第一次ネオ・ジオン抗争」は一つの転換点となったのである。

まとめのようなもの

『ZZ』は面白いし、宇宙世紀でも重要である。この一点を示したいがゆえにこんなものを書いてしまった。ぜひ昔『ZZ』を観て、あまり面白く感じなかった人がいた場合、新しい見方を提示できてればとか思ってます。(『ZZ』愛が溢れてしまい、長くなってしまいました…)

推奨文献

岡嶋裕史『ジオン軍の失敗』、角川コミックス・エース、2021年
  ――『ジオン軍の遺産』、角川コミックス・エース、2021年

この本はガンダムの世界である宇宙世紀をモビルスーツという側面から読み直す本であり、面白い観点の本です。正直ガンダムの世界を知らないと分からない本かもしれませんが、ガンダムに入門している人なら楽しめる本となっています。