#05 空が青いととても嬉しい。
富山生まれの関東育ちなのだから、お日様をたくさん浴びて育ったはずだが、どうも私は北陸育ちを気取りたいのか、鉛色の空がスタンダードなようだ。
数年前から新潟へ出向くことが多くなり、予報通りの冬の曇り空を見ると富山での幼少期に見た、雪、鉛色を思い出し、裏日本の冬なんてこんなもんだ。と思っているのだった。
冬に限らず、天気予報はあてにならないというのか、結果にシビアすぎるのか、薄曇りの中「これで晴れマークなんて言えないよ。」とつぶやけば、友人からは「降らなきゃ晴れだ。」と言われて、気取っていながら太平洋側にしっかり染まっている自分を感じるのだった。
だからこそ、すかっと晴れると本当に気持ちいい。
最近は黄砂の邪魔も多分にあるが、見上げて雲一つない青空が一面に広がっていると、車から降りるたびに声を出しながら背伸びする。
「うあーーーっ!」
お日様とはよく言うもので、光と熱が力を込めてくれるありがたいもの。
毎回毎回、背伸びをしながら最上級の敬意を持ってエネルギーをいただく。北陸育ち気取りにとっては久しぶりの再会のつもりなのだ。
大きく息を吸い込めば、関東で溜め込んだ負のエネルギーが居られなくなって飛び出していく。
「白河の清きに魚のすみかねて・・・」なんて比喩があったが、私は絶対「もとの濁り」には戻りたくはない。恋しくもない。短い電車がトコトコと走る。これがいいんだ。
見上げて空が青いこと。お日様から力をいただけること。
ごく自然なことだけど、なんだかとっても嬉しかった。
嬉しいのは私だけじゃないようだ。水が並々と張られるたんぼにも、お日様に喜ぶ稲たちがいる。
彼らの視線は常に空。朝から晩まで空を見続け、鉛色の時期の前に実りを迎える。
みんなで空を見上げよう。生きることは実らせることだ。
『青空の下、稲とともに』 Photo by Taromaru
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