またこの季節がやってくる
そろそろ梅雨明けかなーといった具合の日。体調を崩したのもあって、ギアを落として勤しむ畑仕事。夏野菜の季節がやってきた。
今年は本当にニジュウヤホシテントウが少なくて、雨続きだったというのにまだジャガイモの枝葉が青々している。ちょっともったいない気もするが、2株試し掘りをする。
でできたジャガイモがこちら。
毎年同じ季節はやってくるけれど、毎回同じとは限らない。家庭菜園とかをやる時は、トマトならこう、ジャガイモならこうという1つだけの決まりきったやり方を覚えるよりかは、それぞれの植物の性質なんかをフワッと捉えておいて、その時その時で帳尻合わせした方が、何となく失敗も少ない。
何より、毎年毎年「異常気象」のせいにするのは、なんかダサい。
毎年同じようにはいかないけれども、春夏秋冬はだいたい同じペースで巡ってくる。
思い出したくもないような嫌な感情
いくら消したくても拭いきれない記憶
五感の裏に住み着いた出来事
思い出さなくても大丈夫な大切なもの
色んなものをのせて
今はだいたい音楽はspotifyで聴いているのだが、昔はiTunesで聴いていた。
たまに、スマホに残っているiTunesでダンロード済みの曲をランダム再生すると、この曲は流れてくる。
アニメ映画の主題歌として有名だけど、ボクはどちらかというと【ガーネット】の方でその作品を知っているといった感じだ。
アーティストの奥華子さんは出身地が同じ船橋市というのでどこかのタイミングで知っていて、お気に入りの曲もいくつかあった。といっても、奥華子さんの活動拠点は船橋ではなかったので、路上パフォーマンス時代はよく知らないのだけれど、多分一度だけ大学に通っていた時期の帰り道で弾き語りを聴いていると思う。全くの思い違いかもしれないが…まあ、それだけストーリ性を感じさせてくれる人、ということだ。
この曲が、スピーカーから流れてくるたびに、だいたいスキップしてしまう。というのも、元配偶者との関連が深い曲となってしまっているためだ。いや、本当にその時だけを切り抜いて思い出せるなら幸せな記憶なので良いのだが、ボクの頭は関連性の芋づる式に記憶が結びついているので、どうしても現状と結びついて、結局複雑でマイナス寄りな思いを抱く結果となる。
ボクは基本的に自分の好きなアニメ、特撮、ゲームの楽曲しか聴かない。音楽バラエティとかも全然見てなかったので流行とは疎遠だった。一方で元配偶者は普通に流行の中から自分のお気に入りを見つけていた感じだった。
そんな中で、この【ガーネット】はどちらかといえば流行歌よりのアニメ主題歌で、お互いに「いい歌だね」と言い合えるものだった。そういうこともあってか、ボクらが結婚した時に知り合いの内で開かれたささやかな席で、元配偶者が何かのタイミングで流したいと指定した曲がこの曲だった。
「歌詞としてはお別れの歌だけど、いいの?」
と、念を押したのを覚えている。
そもそも決して会うはずのなかった人、そしてその後絶対に会うことのできない人への想いが詰まったこの歌に、当時の彼女は
「それでも、あなたはずっと特別で大切な人だよっていうのが、わたしは良いと思ったから」
と、答えていたように記憶している。
離婚してからというもの、何回スキップしたかわからないこの曲を、この日はそのまま聴いて、口ずさんでいた。
『あなたと過ごした日々を、この胸に焼き付けよう。思い出さなくても大丈夫なように…』
今、まさにボクはこうしたいのだろうな。と、思った。
その後がどうであれ、今年度で今のパートは辞めるつもりだ。そこで、ミドリさんとはお別れとなる。だから、今はスーパーでの仕事に勤しんでいる。正直負担は大きい。きっと、それで体をちょっぴり壊したとしても、やり切った精一杯は後悔ない失敗になってくれるはず。
同じ日付はもう来ない。繰り返さない今日、同じ日の無い今日。ほんの少しだけでも、同じ仕事場で一緒に働いたのだという実感をボクの胸に残したい。
そう思えるくらい、大切だとおもえる人と出会った。迷惑にならない範囲で、自己満足くらいのことはさせて欲しい。
我ながら重たい想いをおもいながら思い出のある歌を口ずさんでいると、ふと、脳裏に浮かんだことがある。
きっと、この歌を「いい歌だね」と、言い合えた当時の彼女も、当時のボクに対してとても大切な想いを持ってくれていたんだろうな、と。薄情な話だけれど、いまさら。
まあ、覆水盆に返らず。今となっては元配偶者とはできるだけ関わり合いになりたくないのだけれどね。
残業帰りで日付も変わってから家に着く。
どんよりと曇った月の見えない夜に、陸生のホタルの幼虫が草の陰にて小さく光を放っていた。