タデ食う虫もなんとやら
畑多楽園において、ÖCHAKO時間に野菜づくり相談係をやっている。
その時にある人から
「無農薬って割には、全然虫がついていないように見えるのだけど?どうしてなの?」
という疑問が飛んできた。
そりゃあ、ちゃんと手をかけて、見つけ次第対処してますから…
なんてこと、口が裂けても言えはしない。
なぜならÖCHAKOは毎週木曜日、ボクは週に1回しかこの畑に来ていないのだから。
だからこそ、目立った食害がないように見えるのにはカラクリがある。
まず、目立たないだけで、実際には虫がいるし、食害も受けている。
レタス苗なんかはネキリムシ(タマナヤガやカブラヤガなどの幼虫)の食害は受けているし、スズメガの幼虫はサトイモの葉の裏に潜んでいる。オクラにはアブラムシがついているし、展葉したレタスにはよくみるとハスモンヨトウの痕跡がある。なんなら、ウリ科の代表的な害虫、ウリハムシだっているのだが、あんな目立つ色をしているのに気づかれていないようだ。
まあ、ネキリムシは苗1本まるまるダメにしてくるし、昼間は地中にいるので、苗を植えた本人でないとなかなか気づきにくい。こいつに関しては、食害を確認次第、やられた苗の周りの土を探って補殺している。
スズメガの幼虫はまだ発生初期だし、サトイモの葉を穴だらけにするような食べ方をしないので、見つけ次第補殺で間に合う。
アブラムシは厄介だが、それ以上にその天敵たるナミテントウをよく見かけるので、そいつらに任せた。
ハスモンヨトウの幼虫は結球する野菜の中に潜っているので、数が少なければ、ぱっと見気づかないのも無理はない。が、よくみるとフンがついていたりする。見つけ次第補殺する。
ウリハムシは大量発生しなければ、まあ、よしとする。飛びはするけどそんなに素早いやつじゃないので、補殺しようと思えばやれる。幼虫は根っこを食べていのだが、本当に大量発生でもしない限り弱らせて枯死させるなんてことはないはず。
今年はどうやらニジュウヤホシテントウは少ないらしく、ジャガイモにもまだついていなかった。これはラッキーだ。
とまあ、色々書き連ねたが、「虫がついていない」と言ったのは多分こいつらのことではない。「アオムシ」がいない。と言っているのだろう。その成虫であるモンシロチョウはヒラヒラ飛んでいるのに、どうして、アオムシによる食害を受けていないのか?
モンシロチョウは世代交代のサイクルが早く、幼虫は食欲旺盛。つまり、すぐ増えてよく食べる。野菜を育てていたつもりが、アオムシにやられて人が食べるところがなくなり、実質モンシロチョウを飼っていた。なんてことは家庭菜園ではザラに起きることだ。
それなのに、この畑では農薬も使わずに、アオムシの害を抑えている。不思議でしょうがないといった感じなのだが、これの理由は明確だ。
前回の記事でアップした畑多楽縁に植えた野菜画像を見ていただければわかると思う。
…
……
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お分かりいただけたと思う。
ご覧のとおり、大した理由じゃないのだ。
けれども、知っていさえいれば、回避できることもある。
有機農業という言葉は、いろんな文脈で語られる言葉だけれど、ボクが思うに、読んで字の如く「機(カラクリ)の有る農業」だと思っている。
植物の生育、病気の発生要因、害虫益虫の生態…生物多様性の中のごくごく一部の機序を観察し、それに合わせて手をつける。そういうものだと思っている。そういうのを雑に「自然」とか表現しちゃう人の神経の図太さには羨ましさを感じるほどだ。
この畑の場合、お隣がモンシロチョウの温床になってしまうようなことを毎年やらかすので、モンシロチョウはヒラヒラやってくるが、別にボクは慌てないし、気にしない。来縁した子どもたちに虫取り網で追い回されるのが気の毒に思えるほどだ。
なぜなら、害が無いと分かりきっているから。
…
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いちおう、
アオムシの害が無いカラクリが見えてこない人バージョンも、書いておこう。
改めて、6/29畑多楽縁の様子はこう。
注釈もつけたし、お分かりいただけたと思うのだが、「アブラナ科」の作物を植えていないのだ。アブラナ科といえば、代表的なのはキャベツ、ハクサイ、ダイコン、コマツナ、ブロッコリー、カブ、ラディッシュ…などなど、
家庭菜園の定番中の定番というか、野菜といえばまず思い浮かぶものが多い。
しかしながら、モンシロチョウの幼虫アオムシはアブラナ科の植物、特にキャベツを主食として春暖かくなってくると家庭菜園を楽しむ人たちへとその旺盛な食欲のおもむくままに猛威を振るう。
お隣の畑では毎年春作の白菜をやろうとするので(だいたい4月の寒の戻りでとう立ちスイッチが入って花を咲かせて終わる)モンシロチョウはいくらでも湧いてくる。
けれども、そもそもヤツらの食糧たるアブラナ科作物さえなければ、ちょうちょがヒラヒラしているだけで、なんの害もなくなる。
これが「虫がついていない」ように見えるカラクリという訳だ。
機(カラクリ)の有る農業、それがボクにとっての有機農業であり、機序の末端を紐解きながらやっていくのは、なかなかに楽しいものだ。