甘くて苦くて、そして優しい
赤目で散切り頭の少年という、可愛らしい表紙をめくると、「水蝸牛」と名乗る小さな蝸牛が「不思議な異世界にご案内いたします」と、前を進んでいきます。水蝸牛は、暗い闇の中にポツンとたたずんでいました。
から、始まる「ホロホローの森のキジムナ」。Amazonの紹介欄に対象年齢は「6歳から18歳」とありますが、私の場合は「見た目はオッサン 頭脳は子ども」ということですので、手にしてみました。
なお、本書のサブタイトルに「沖縄の妖怪」とあるとおり「ホロホローの森」も「キジムナ」も沖縄所縁ということになります。
絵も優しいですが、文体・文章も、子どもにもわかるように、優しく語りかけてきます。キジムナをはじめとする登場人物たちを作者と一緒に見守るような感覚で、物語が進んでいきます。
せっかくなので、ホロホローの森の写真もあげてみます。
もう1枚、上げます。
この森で眠る、「ガジュマルの木の妖怪 キジムナ」をヤンバルの森に住む妖怪「ブナガヤ」が探しにきます。ちなみにヤンバルは沖縄本島の北部で、ホロホローの森は、南部になりますので、かなり遠くから会いにきたことになります。
・何故、ブナガヤは探しにきたのか
・何故、キジムナは寝ていたのか
・二人は、これからどうするのか
物語が進むにつれて、明かされてきます。
「おいおい、これは子ども向けの絵本なのかー、苦いのでは」
「うん、これは、子どもたちに伝えなきゃいけない話だよ」
そんなことを自問自答してしまいました。甘いお菓子かと思ったら、中身は「苦い薬」のようでした。
けれど、優しい薬。
優しいから、薬を飲んで欲しいと願う。
これからの時代を担う子どもたちに、感じて欲しいこと、知って欲しいこと、考えて欲しいこと、伝えたいこと。
作者が願う「平和な世界」のために、今、必要な薬。
子どもたちの、明るく元気な未来を創るための物語。
生意気を申し上げれば、
「これが必要なのは、子どもだけじゃなくて、大人もじゃないですか」
という気持ちも残りましたが、妖怪の世界に入るには、子どもの方が馴染みやすいのでしょう。
沖縄を愛し平和を願う作者が創りあげる、優しい世界。
この本が多くの方の心に届き、世界が今よりも優しく変わることを願います。この小さな記事が、その一助になれることを祈ります。
さて、サムネ画像は、沖縄本島南部 喜屋武岬にある「平和の塔」です。
今から17年前に撮影したものになります。
今年、撮影した写真がこちらです。
残念なことに「平和の塔」は、すっかり色あせていました。
美しい空も海も、そのままの姿を魅せてくれるというのに、塔は色あせてしまいました。
本書でブナガヤが、暗い表情で話した言葉が、心に刺さります。
・何故、ブナガヤは探しにきたのか
・何故、キジムナは寝ていたのか
・二人は、これからどうするのか
そして、自分たちはどうするのか、を問いかけられているようです。
このシリーズは、既に3刊出版されています。全刊を通して読むことで、さらに面白さ、深さが増すと思います。
kindle unlimitedの対象ですので、加入されている方は、費用負担無しでお読みいただけます。
さらに、何ということでしょう。
水蝸牛さんは、noteでこのようなマガジンを無料で運営しています。
私としては、絵本を読んでからをお奨めしますが、このマガジンで連載している「球妖外伝」だけを読んでも、楽しいです。
マガジンの紹介欄には、こうあります。
note児童向けファンタジー小説のマガジンです。舞台は、沖縄が琉球とよばれていた、むかしむかしのお話です。人間から「マジムン」とよばれていたものたちが、いきいきと暮らす異世界を描きました。
「想像力は未来を創造する。沖縄でマジムンたちと遊んでみませんか?」
2022年6月12日スタート!毎週日曜更新!
なお、水蝸牛さんは、先日このような記事を上げてくださいました。
誤解しないでいただきたいのですが、この記事を書いていただいたから、この感想文を投稿しているのではなく、最初から「読書の秋2022」で、キジムナの話を書くつもりだったのです。ほんとうです!
ご承知の方もいると思いますが、私はこのシリーズが大好きなのです。
本年5月には、聖地巡礼と称して、物語の舞台をいくつか訪問したくらい、このキジムナシリーズが大好きなのです。
例えば、こんな滝も観てきました。
沖縄が好きな皆さん、平和を願う方々に、是非手にしていただきたい物語です。
そして、異世界だけではなくこの世界でも、マジムンたちと一緒にいきいきと暮らしていきましょう。
という展開から何ですが、この記事をこのまま、こちらの企画にも活用したいと思います。
沖縄から、平和への想いと元気を発信している水蝸牛さん、いつも有難うございます。