
【創作SS】秋桜 #シロクマ文芸部 (再掲)
秋桜は今年も庭に咲き乱れている。
満開の秋桜の前で笑う小さなキミを見ていると、楽しくて嬉しいけれど、父さんのことを思い出して少し悲しくなる。
物心ついた時から「どうして」と聞きまくりたくなるくらい、ウチは貧乏だった。
学校でいろんなお金を集める時、すぐには持っていけないし、他の子のようにオモチャや本を買ってもらうこともできなかった。
「何でこんな家に生まれてきたんだろう」
と、何度も考えた。
狭い借家の前、狭い庭には秋になると秋桜が咲いた。誰も手入れをしてないようだったのに、毎年咲いた。
ある秋、庭を見ていた父さんが言った。
「お父さんは秋桜が好きなんだ。いっぱい花が咲くからな」
父さんも子どもの頃から貧乏で、いろんなモノが満たされなかったのだろう、そんな父さんの心を埋めてくれたのが秋桜だったのかもしれないと思った。
時が流れ、僕は大学進学とともに子どもの頃に住んでいた家から出て、大学卒業後にキミのお母さんと出会い結婚して、新しい家族と、狭いながらも持ち家に住めるようになった。
僕はほんの少しだけど、貧乏からは離れた気がする。
二歳のキミが、もう少し大きくなったら話そう。
不器用で、社会的に成功できなかったけれど、精一杯の愛情で、キミのパパを育ててくれた、秋桜が好きだったおじいちゃんのことを。
いつか、みんなで秋桜を観ようね。
(本文ここまで)
#シロクマ文芸部
に参加です。
この元原稿は「2001年10月」に作成していました。それを2023年6月14日にnoteに投稿したのですが、「シロクマ文芸部」のお題を受け、微修正して再掲しました。
「あれ、前にも読んだような話」
と感じた方、間違いないです、
再掲を失礼しました。
なお、kindle出版している福島太郎の作品は「父子」という関係性を描くことが多いと感じていましたが、昔から抱いているテーゼの一つのようです。
#何を書いても最後は宣伝
私の作品の中でも「父の想い」が一番強く描かれているのが、こちらの「光流るる阿武隈川」と思います。
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