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【創作】星に願いを 猫にはチュールを

 窓から外を見るのが好きなんだ。鳥や歩く犬も良いけど、夜の月や星を眺めるのもいい。冬の夜は寒いけれど、星が綺麗に見えるのはかなり幸せなことだと思うんだ。

 3年前、僕はホケンジョにいた。窓が無い暗くて冷たい部屋で、アニキと呼ぶことになった先輩猫と2匹で狭い檻に閉じこめられていたんだ。ご飯は朝と夜の2回、朝は8時過ぎで夜は18過ぎ頃。晩御飯を食べてから翌朝までが長過ぎて、お腹が空いて熟睡できない日が多かった。
 オヤツは週に1回か2回。野良出身のアニキは
「屋根があって、敵がいなくて、ご飯を出してくれるんだから上等だぜ。狭くて自由に動けないのは癪だけどな」
と言っていたけど、僕はもっとご飯を食べたいし、チュールもペロペロしたかったから、いつも猫神様にお願いしてたんだ。
「ご飯やチュールをお腹いっぱい食べさせてください」

   毎日お祈りしても、毎日同じような暮らしが続いていた。後から来た猫たちがお客さんに引き取られていったけど、アニキと僕はホケンジョで穏やかな日々を過ごしていた。
 ただ、最近はホケンジョの職員さんたちが頻繁に部屋に来るようになって
「このままだと、2匹ともサツショブンになっちゃうのかしら」
と話すことが増えてきた。サツショブンというのが何かはわからないけどサンカゲツ過ぎるとサツショブンされるらしい。
 アニキがちょっと先だけど、僕らはサンカゲツ目前のようだった。記念に何か美味しいオヤツが貰えるのかも知れない。

 って考えてた時期から3年が過ぎた。アニキも僕もサツショブンをして貰えなかった。突然、スーツ姿の中年男性が部屋に来て僕たちを攫ったんだ。それぞれ別のケージに詰め込まれて車に乗せられた。
 僕はアニキとの別れが嫌でニャアニャア抗議したけど、アニキは黙って丸くなっていた。諦観していたと後で教えてくれた。

 車から降ろされケージから出された部屋には檻が無くて、アニキと僕は最初はおそるおそる、次第にソロソロとやがて縦横無尽に走り回った。アニキと走り回りジャンプしたり転げ回ったりするのは最高に楽しかった。

 だけどアニキがコッソリと教えてくれた。
「中年男には何か魂胆があるに違いない、警戒を怠るな。抱っこしようとしてきたら要注意だ。何処かに攫われるかもしれない」
僕もアニキも抱っこされそうな時には思いっきり抵抗することにした。中年男はしばらくすると、抱っこすることを諦めたようで、僕たちは警戒しながらも穏やかな生活を手に入れたんだ。

 それから3年が過ぎた。

 アニキと中年男と一緒に暮らし続けている。中年男は遊んでくれることは少ないけれど、お腹いっぱいご飯を食べさせてくれる。
 チュールも毎日準備してくれる。外に遊びには行かせてもらえないけれど、家の中では自由に過ごしている。
 アニキも僕も抱っこはさせていないけど、アニキは中年男のベッドでゴロゴロすることが増えた。
 中年男が寝た後、僕は星にお願いをするんだ。
(アニキとの穏やかな日々が、長く続きますように。
地には平和を人には愛を。僕たちにはチュールを)
  石の上にも3年なんて言うらしいから、意地を張るのを3年で辞めて、中年男に抱っこを許可してしてもいいかなと、ちょっと考えなくもない。この家に来て丸3年となる今夜は、星にお願いしてやろう。
(僕たちにチュールを、中年男には温もりを)

(おしまい)

左チオ(僕) 右ナッツ(アニキ)

 フィクションですが、猫たちが抱っこを許可してくれないのは本当です。猫たちが我が家に来て丸3年になりましたことも本当です。
 猫たちも私も体重が数キロ増えているのは事実です。

 サムネ画像は「三毛猫かずら」さんのみんフォトからお借りしました。
#何を書いても最後は宣伝
 猫にはチュールを 私に読者という温もりを



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福島太郎@kindle作家
サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。  皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。

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