【実録】隣の客
母は牡蠣が大好物である。今でも何かある度に、
「安芸の宮島で食べた牡蠣は美味しかった」
と語ることがある、また、宮城県松島で牡蠣の食べ放題に挑んだ際には、制限時間45分、目一杯食べ続け、店員さんを驚かせたこともある。
こういう背景もあり、今年の母の日には、いわき市の観光市場で牡蠣を購入して渡した。北海道に旅行した際には、蟹というリクエストに加え、牡蠣を購入した。
そして、これらの牡蠣を母は父と二人で食した。とは言え、父は1個しか食べず、残りの9個は母が一人で食したらしい。母への土産なので、どうしようと自由なのであるが、私の口には入らなかったことを記録しておきたい。ちなみに三人で同居しているのに、1:0:9という配当になったらしい。
なお、私も牡蠣が大好物である。行きつけの居酒屋で「牡蠣」がある時は、必ず注文している。
ある日、同僚と三人で仕事帰りに居酒屋に寄ると、嬉しいことに、「今日のオススメ」の黒板に「岩牡蠣」の文字がある。
「女将さん、岩牡蠣三つ」
「それが、今日は二つしかなくて」
同僚と顔を見合わせた後、別なツマミを注文した。個人経営のお店なので、大量に仕入れができないのは仕方ない。
話の花が一通り咲いた後、同僚二人は先に店を出たが、私は居残り一人で飲み直しをすることにした。いつものパターンである。
「女将さん、追加で、岩牡蠣をお願いします」
「それが、先ほど、向こうのお客様に、二つとも出してしまいまして」
女将の視線が、奥の席にいる客の方に向かう。
隣の客はよく牡蠣食う客だ。
この早口言葉の意味に、「早く口に入れるべき」という意味があるとは知らなかった。
特に関係はありませんが、著作へのリンクを埋めておきます。
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