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【創作SS】勤労感謝の前夜

 いつからこの慰労会が開催されているのか斎藤は知らないが、配達員として登録してから毎年参加している。
 地域で一番立派なホテルで開催され、只飯・只酒にありつける機会は貴重である。
 明日は祝日なので、仕事の心配もない。

「挨拶、長いね」
田中が話しかけてきた。斎藤は無言で頷き、壇上の男に視線を移した。
『民営化から〇年が過ぎましたが、私たちは貴重な想いを運び、繋ぐという大切な業務を全国津々浦々まで安価に提供しております。それを支えているのが、皆様でありますことから、心からの感謝を……』
(人件費が安いから、安価にできるな)
話はまだ終わりそうにない。
手にしたビールが温まってきた気がした。
「本当に感謝してるなら、言葉じゃなく給与で伝えて欲しいな」
田中が呟いた。
 斎藤は再び頷いた。

 副業でアルバイトしている配達員が集まり、御高説に首を傾げたり、愚痴に頷いたりする会を、彼らは「伝書鳩パーティ」と呼んでいる。
(本文ここまで)

※本編はフィクション・架空の物語です。

#伝書鳩パーティ
#毎週ショートショートnote

 「たらはかに」さんの企画に参加です。

 前作「最後の魔法」で「パーティ」を活かせませんでしたので、パーティに視点を強めてみました。「伝書鳩」≒「配達員」というイメージになりましたが、郵政民営化やその後の業務展開を批判・否定するものではありません。

 さて、毎回のお話で恐縮ですが、福島太郎は「文学フリマ東京36(5月21日)」に出店を予定しています。
 公タマ伝以外の紙書籍は各7冊参しますが、なるべく電子書籍かAmazonでの購入をお勧めします。

【福島文学 文学フリマ東京36 C-27 推参!】

 宅急便用の箱詰め・伝票記入も終わりましたので、早めに発送したいと考えております。スタッフの皆さま、お手数をおかけしますがよろしくお願いします。
#何を書いても最後は宣伝

 この黒田製作所物語に係るエピソードなども、会場でお話できれば嬉しいです。頷いていただけるか、首を横に振られるか。

サポート、kindleのロイヤリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれんつふぉーらむ福島」さんに寄付しています。 また2023年3月からは、大阪のNPO法人「ハッピーマム」さんへのサポート費用としています。  皆さまからの善意は、子どもたちの未来に託します、感謝します。