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ペテン師の萌し

 太郎が小学校に入学した日の話(実話)です。

 担任の先生が自己紹介をしようとしました。
「今日から、みなさんの担任の先生になります。
 先生の名前を知っている人はいるかなぁ」
問いかけに、間髪を入れず、太郎は挙手をしました。
掴みのトークとして話をしたつもりの先生は、驚いた表情を隠せずに続けました。
「じゃぁ、みんなに教えてくれるかな」
後ろにいる保護者がザワザワする中
「たなか けいこ せんせいです」
「せいかいです」
太郎は淀みなく答え、先生は笑顔を見せました。
後ろにいた保護者は、さらにザワザワしました。担任の先生の名前は、保護者にもその時点では知らされていなかったからです。

 入学初日にして、小学校時代の最大の逸話かも知れません。

 昔から恥ずかしいとか、失敗したら嫌とかをあまり考えない性格です。目立ちたいということではないのですが、問かけられたから応えようとするという、愚直な性格なのかとも思います。

 タネを明かせば、何ということはなく、黒板の右端に「たなか けいこ」と名前が書かれていたので、「先生の名前なのだろう」と見込みをつけ、読んだだけということになります。
 他にも字を読めた子はいたと思います。ただ、
「直感に賭ける」
「失敗する覚悟はある」
「自分で考える」
という感じの子どもだったのかな、と思います。

 ほぼ、その資質のまま成長し、時に「ペテン師」と称される大人になりました。と、考えましたが、精神的には、あまり成長してないかも知れません。
 今も、幼稚園のキャッチコピーを、心に留めています。
「よくみる、よくきく、よくかんがえる」
というものになります。
 そんな太郎の「センスオブワンダー」がこちらの本に詰め込まれています。




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福島太郎
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