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【創作SS】火星の別件逮捕

 その日、カイワレ大根業界は、厚生省により地獄に落とされた。
 平成八年八月七日、昼前から鳴りやまない電話応対に、朗は忙殺された。

 その年の七月中旬に、大阪周辺で頻発した病原性大腸菌O―157による集団食中毒事件。多くの子供が体調を崩したことに、朗も心を痛めていた。
 しかし、まさか、自分に直接関係してくることになるとは、夢にも考えていなかった。

 厚生大臣がコメントする姿が、テレビで繰り返し放映された。
『カイワレ大根が原因食材との可能性が否定できない』
その表情、質疑応答、雰囲気は
「カイワレ大根が原因食材の最も可能性が高い」
という見解を容易に伝えてきた。

 朗たちカイワレ大根農家は「厚生省へ損害賠償請求」の提訴を行った。
「国と戦う農家」を、メディアは農耕の神であり軍神でもあるマルス(火星)に重ねた。

 7年に渡る訴訟の間、朗は微罪で逮捕されたりしたが、最高裁まで戦い抜いた。
 判決後、朗は語った。
「覚悟してたけど、負け戦さ」

(本文ここまで)
 フィクションです、実際の出来事や組織、人物とは関係ありません。
 
 たらはかにさんの【毎週ショートショートnote】
 お題【火星の別件逮捕】です。
#毎週ショートショートnote

 ということで、勘の良い方はお気づきかと思います。ジョセフ・ジョースターさん、お願いします。
またまたやらせていただきましたァン
ということで、お話の元ネタはこちら「スプラウト」です。

 なお、この本の巻末の言葉を引用します。

 この物語はフィクションです。しかし、高い志を持ち、日本を支える農家の方々が存在し続けることは、紛れも無い真実です。
 そして、郡山市で三百年に渡り、農業を営む家族がいることも。
 本書は、偉大な日本の農家さんに、心からの感謝を伝えたく上梓しました。

福島太郎著:スプラウトより

 福島太郎は、6月18日(日)に開催される「文学フリマ岩手8」に出店予定です。
 参加される方々と交流できますこと、楽しみにしています。

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福島太郎
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