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人見知り

 上の娘は、もの心つく頃から人見知りが激しく、初めて会う人には「コンニチワ」もできず、保育所の先生にさえ、馴染むことができなかった。
 ある朝、保育所の先生に預けようとした時に逃げ出し、道路に飛び出しそうになった時には、寿命が縮む思いをした。ただ、それも「個性」と、あまり否定的には捉ることはせず、それだけ「自宅」や「家族」の居心地が良いのだろうと、前向きに考えることにしていた。

 下の娘も、一緒の保育所に預けるようになった初日の夕方、保育所の入口で先生に声をかけると、僕の声を聞いた娘が玄関まで駆けつけてきた。お迎えを心待ちにしていたのだろう。いつものことであるが、申し訳なさと嬉しさが混じる複雑な気持ちになる。
 しかし、いつもであれば、抱っこをせがんでくる娘が
「パパ、こっち」
と、僕の手を引いて保育所の中に連れて入ろうとする。先生に少し頭を下げ、娘に連れられるまま、園児達がいる部屋の入口に立つ。
「あすかちゃん、ここ。ここにいるよ」
連れていかれたのは、下の娘が預けられている部屋だった。
保育園初日で、不安に過ごしただろう妹を、早く迎えて欲しかったか。
何も教えていないのに、姉として妹を守ろうとしていたのか。こうして、昼の時間帯にも、何度か妹の部屋まで様子を見に来ていたのだろうか。
 下の娘は、無邪気に笑顔で過ごしていたが、僕たちに気がつくと、はいはいで近づいてきた。上の娘は満足そうに僕を見上げていた。

 生まれてきてくれてありがとう。君達の父になることができて幸せです。


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福島太郎
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