【創作SS】テーブル上のシンコウ
妻は珈琲カップをテーブルに置くと、正面の椅子に静かに座った。目が座っていた。
良い香りがしたが、空気が重たい。
「あなたには、長く続ける秘訣というものあるそうね」
悩んでいる後輩にする話だ、妻には話して無い気がしたが、誰に聞いたのだろう。いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。妻に向き合おう。
「秘訣なんていうほどのことじゃないけど、長く続けるには『打算・妥協・惰性という、三つの「だ」』が、必要という話をすることがあるね」
冷たい微笑みが浮かんだ
「否定するつもりは無いけど、アタシとは価値観とが合わない。多少の打算と妥協は有りだと思うけど、惰性で続けるのは嫌。
何でもそうだけど、続けるということは目的じゃないの。嬉しい、楽しい、好きとかの感情の方が大事で、結果として長く続くんじゃないかな」
頷きながら珈琲を飲む、いつもより苦い。
妻は咳ばらいをして、離婚届をテーブルに置いた。
「惰性から開放してあげる、サインして」
(本文ここまで)
たらはかにさんの【毎週ショートショートnote】
裏お題【惰性のエッヘン開放】です。
#毎週ショートショートnote
フィクションです、実際の出来事や組織、人物とは関係ありません。
先日投稿した表のお題が【火星の別件逮捕】が、著作からのアレンジで、お題に対して捻った視点からでしたので、裏お題は正面から取り組みました。前回の作品はこちらです。
なお、最近は使いませんが、私は【駄文屋】を標榜しており、「駄」をこよなく愛しております。
#何を書いても最後は宣伝
皆の恋が成就し、幸せに暮らして欲しいと願う福島太郎による、恋愛要素が強めの作品がこちらです。
「光流るる阿武隈川」、「スプラウト」は恋というより「愛」が強めな気がします(個人の感想です、結果を保証するものではありません)。
福島太郎は、6月18日(日)に開催される「文学フリマ岩手8」に出店予定です。
参加される方々と交流できますこと、楽しみにしています。