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未来の建設業を考える:スマートなビジネス」(2022年9月6日)

世界のスマートビル市場

 アマゾンの調べによれば、世界のスマートビル市場は、市場規模842億ドル(約12兆円)と、とてつもなく大きな市場となっているそうだ。すでに33億ものIoTデバイスがビルに設置され、年間成長率も19%と高い成長を示している。

IoTセンサーやAI、IT

 スマートビルは、言うまでもなくIoTセンサーやAI、ITを用いて、エネルギーコストの削減や最適化を図るとともに、高度なセキュリティを確保し、居住者、ビル利用者の利便性向上が実現するビルだ。最近では、環境対策としてのCO2削減、省エネルギーにつながるスマートビルの要望も大きい。なぜなら、ビルのライフサイクル・コストは、初期の建設コストが全体の約2割、それに対して維持管理コストは8割にもなる。最近の急激なエネルギーコストの上昇もあり、ビルの維持管理コストをどれだけ削減できるかが、ビル経営にとって重要な喫緊の課題となってきている。

ライフサイクル・マネジメント・コンソール

 このような環境のなか、大成建設では、いち早く「ビルの主治医」という名(タイトル)のもと、建設時点だけでなく、ビルが存続する限り、まさにビルのライフサイクル全般において、ビルの面倒を見続けようというビジネスを始めた。「ライフサイクル・マネジメント・コンソール」として、点検管理、建物・設備管理をデジタル化するとともに、そのインフラとしての大成建設が開発した「ライフサイクル・OS」としてのBIM管理、データベース、標準サービスをインフラとして提供しようというものだ。
 同様の動きは、ビル管理業界でも始まっている。

エネルギー・ハーベスト

 商業施設を中心にビル管理を行っている大手ビル管理業者のイオンディライトでは、次世代施設管理モデル「エネルギー・ハーベスト」システムを導入し、IoTを活用した空調システムを実現し、従来の25%もの省エネルギーを実現している。さらに、今後、照明や冷蔵冷凍機器に拡大することで、50%省エネルギーの商業施設を実現しようとしている。
 海外でも、アジアを中心にビル管理を手がける仏企業のアデン社では、ダッソーシステムズの3D-CADを利用して、デジタルツイン・プラットフォームを実現し、エネルギー制御による脱炭素管理、ワークスペース管理、CO2排出量抑制などがデジタルデータとして把握し、見える化を図り、実際の設備機器を交換するなどして、実物ビルのビル管理に応用し、エネルギーコスト削減などを実現している。

施主や社会に役立つBIM

 地方でも、鳥取の美保テクノス社では、PFI事業で建てられた県と市の合同庁舎の建物管理において、「つくるためのBIM」だけでなく、「施主や社会に役立つBIM」をめざし活用することを始めた。まさに、BIMというデジタルデータを彼らの言うところの「社会貢献BIM」へとビジネス展開しようとするものだ。

スマートビル

 スマートビルは、スマートな社会だけでなく、これまでの建設という狭い領域のビジネスを拡大するビジネスチャンスだ。
 つい先日アマゾンが、自動ロボット掃除機「ルンバ」で有名な「アイロボット」社を買収した。アマゾンの買収目的は、単純にロボット掃除機を売るためではなく、ルンバを活用して、人の動きやその人の習慣を把握し、より個々人の好みや習慣にあった商品やサービスの提案につなげるためだ。AIを活用したスマートなビジネスがビルだけでなく、住宅にも広がる可能性を感じる。われわれ建設業としても、スマートビル化を契機に、より幅広く成長が続くスマートなビジネスへと発展させていきたいものだ。

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