未来の建設業を考える:「責任あるインフラ整備のあり方」(2013年)
老朽化が進むインフラ
国土交通白書(12年)によれば、長さ15m以上の道路橋が全国で約15万5千橋あるが、建設後50年以上の道路橋の割合が8%であったのに対し、20年後の33年には全体の53%に急増する。同じように、河川管理施設である排水機場・水門等についても23%が60%に、下水道管きょは2%が19%に、湾岸岸壁は5%が53%へと急増する。
維持管理・更新費が00年には投資総額の28%であったのに対し、13年には59%、仮に、今後の投資総額の伸びが10年度以降対前年度比±0%で、維持管理・更新に従来どおりの費用の支出を継続すると仮定すると、37年には維持管理・更新費が投資総額を上回る。つまり、約25年後には新規投資はできず、すべて維持管理・更新費でつぶされることとなる。
この大きな要因は、バブル期の海部内閣当時の日米構造協議の結果、内需拡大のための10年間で総額430兆円という「公共投資基本計画」を策定し新規投資を実施してきたものが、社会インフラの耐用年数に達してくるのが、急増の大きな要因と言われる。
そのためには、社会インフラの「選択と集中」が必要不可欠だ。
市町村数は00年度の3千から10年度の1,700まで約半減したが、その過程で生じた余剰となった文化施設や公民館等の整理・複合化を進めることで対応している。社会インフラについても、すべての老朽化したインフラを維持するのではなく、便益や費用対効果の観点から、維持管理すべきインフラと廃止するインフラに分ける仕分けが重要だと思う。再度、社会インフラの「選択と集中」を図ることが鍵である。そのためには、少なくともすべての社会インフラの現況を調査する必要がある。緊急経済対策において、社会インフラの調査費用が計上されているが、早期にすべてのインフラの状況を正確に把握したうえで、社会インフラの仕分けを行い、中長期的な維持管理・改修計画を進めていくべきだ。
橋梁を例にとれば、国や都道府県レベルでは現況調査に基づく長寿命化修繕計画が策定されているが、市区町村では半数でしかない。また、耐震という切り口で言えば、病院の耐震化は全体の約6割、水道の基幹施設の耐震化は約3割、鉄道施設も半数でしかない。やるべきことはたくさんある。
次の世代へ承継すべき社会インフラを今こそきちんと構築し直すことが、我々の世代に求められている。ぜひとも、建設業全体で社会インフラをいかに維持管理し、更新するのかあらゆる知恵を導入し、建設業の責任で安心安全な社会インフラを構築するようにしたいものだ。
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