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未来の建設業を考える:「現場力とマネジメント力」2011年5月22日

日本の「強い現場・弱い本部」症候群

 東京大学ものづくり経営研究センターの藤本隆宏先生は、「東日本大震災において、極限状態における日本の「現場力」の強さに対して、一部企業や政府の中枢のもたつきに見られる、日本の「強い現場・弱い本部」症候群が、世界に再認識されてしまった」と、指摘している(参照:http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/)。
 確かに、被災地における復旧工事を見ていると、現場での工夫により通行路を整備したり、建物補修を実施したり、多くのゼネコン社員が元のとおりに復旧させることを目指して、がんばっている。
 元の通り復旧させるというシンプルな目標であれば、現場は、さまざまな障害があったとしても、創意工夫でかなりの部分まで、関係者間で相互調整しながら進めることができている。
 ひとりの力を多方面で発揮し、相互補完しながら困難な工事を進めていく。その典型は、鉄道や道路の早期復旧に見て取れる。とにかく電車を通すこと、車を通すという、明確な復旧目的が設定されているからだ。
 目的に向かって多くのゼネコン社員や電気技術者たちが協力し、チームワークを発揮して調整した結果であろう。

日本の強い「現場力」

 阪神淡路大震災の際は、新幹線の復旧に3ヶ月かかったが、今回の震災では、それとは桁違いに範囲も大きく、被災箇所数も1800箇所と膨大であったにもかかわらず、たった50日で復旧を成し遂げることができた。
 4月7日の余震の被災がなければ、わずか30日程度で復旧できたとのこと。これが日本の強さであろう。欧米でれば、専門分化された個々の技術者を調整する者が現場に存在しない限り、復旧工事を円滑に進めることができない。やはり、日本の「現場力」によるところは、大きい。
 復旧までは、この「現場力」でかなりの部分は出来る。なぜなら、目標とする対象物があらかじめ復旧の名の下、目標が明確になっているからだ。

「現場力」と「マネジメント力」をもって、「強い現場、強い本部」へと変革

 一方、「復興」にあたっては、きちんとした「マネジメント力」を持った本部機能が必要不可欠だと思う。大きな復興構想や方針を示したうえで、現場では解決できない課題に対して、マネジメント力により解決を図ることが、今後、一層求められる。
 復興工事においても、単純に今までの積上げによる工事ではなく、短期かつ集中的に実施することで、住民が望む早期竣工を目指し、より高い構想力や技術力を駆使して、これまでにない技術や施工法を導入するなど、ゼネコンとしての能力構築が図られるべきであろう。
 これまで建設現場において、多様な専門工を使い、スケジュール通りの竣工を積上げてきたゼネコンの高いマネジメント力は、大いに称賛されるべき実績であるはず。
 日本では、現場から離れれば離れるほど、マネジメント力が低下する傾向にある。
 ぜひとも、ゼネコンが蓄積してきたマネジメント力を再定義することで、東日本大震災における復興工事が円滑に進むことに期待したい。
 また、日本全体が、本当の意味で、「現場力」と「マネジメント力」をもって、「強い現場、強い本部」へと変革することが望まれる。

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