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【詩】砂塵

砂塵が舞っている
僕は海辺に立っている
濃霧のように広がる砂塵が
僕の視界を奪って
ここが海辺であることを
すっかり忘れる
その砂塵のひと粒ひと粒は
僕が
かつて苦楽をともにした朋友かもしれないし
すぐそばにいる知り合いかもしれないし
日頃、自覚なくいだいている
僕の隠された欲求かもしれなかった
あるいは大嫌いな誰か
あるいは自覚なく生きるよすがにしている
何かかもしれなかった
強い風によって
砂塵が吹き払われると
目の前で
巨大な車輪が回っていた
ガタガタと軋みながらそれは
無口に
そして僕に対してまったく無関心に
緩慢に回り続けるのだった
ひとがぶら下がっている
首を吊っているようだ
車輪の回転に合わせて
くるくる回ってる
僕はその人の顔を確認する気になれなかった
どうしてか
なれなかったのだった


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