桐沢もい

連載小説「小じさん(こじさん)」見ていってください。詩もたくさんあります。

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マガジン

  • 【創作】詩

    詩が書けたら、こちらにまとめていきます。

  • 【創作】連載小説「小じさん」

    不思議生命体「小じさん(こじさん)」。それは、なんだかんだいてくれて嬉しい、小さなおじさん。

  • 息子の詩

  • 或る医ケア児とその家族の詩

  • 【創作】短歌

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最近の記事

【詩】不審者

道でたまたま私の前を歩いただけの 白髪眼鏡の知らない貴方の後ろ姿に 私はわけもなく郷愁を感ずる この感情が私の内の何と繋がっているのか 何を意味するか 見当もつかぬ ゆえに 私はただ貴方を見つめる 不審者である 車窓を流れゆく 都会の中でそこだけ切り取られたような ゆきずりの田園風景にも 私は同じ郷愁を感じ 深くふかい溜め息を吐いた 私の心は日々わけのわからぬ動きを見せて どうしてそうするか 見当もつかぬしぐさを さまざま えんえんと しているようなものである どうして

    • 小じさん第二十二話「老爺」

       僕が少し前までよく通っていた書店がある。その店は昔からある個人店で、家族で代々継いでいるということだったが、出版不況もあり、ついに継ぐ者が出なかったのか、足の悪い老爺がひとりで切り盛りしていた。建物は外も内もかなり古びていて、板張りの床は歩くとところどころ軋む音がした。どれも端が擦り切れ変色した、いつの時代のものだからわからないポップの数々が、神経質なほどきっちり均等な間隔を空けて壁に貼られていた。当然、店内の棚に陳列されている書籍とそのポップとの間の関連はすでに失われてい

      • 小じさん第二十一話「黒い小じさん? 3」

        「すみません、ちょっといいですか?」  小じさんと話していたら声をかけられた。  中学生くらいの少年。眼鏡をかけている。前髪はまっすぐ横一文字に切りそろえられている。眼鏡の奥の目に生気が感じられない。表情が無い。 「いいよ。どうしたの?」  少年は答えない。眼鏡の奥の死んだ目でじっと見つめられる。僕は待つ。少年が話し始めるのをじっと待つ。 「お兄ちゃん」  ――!?  僕に弟はいない。  そもそもこの子のことを僕は知らない。  よって、これは年上の男性という意味の「

        • 【詩】恥の世界旅

          風が吹いているね 私のことを何も飛ばしてくれない風が 吹いているね 存在するだけで恥ずかしかった 笑われてる気がして 穴に入ったって いつかは出なきゃならない 風が吹いているね 私なんかいっそ 飛ばしてくれたらいいのに 私の恥ずかしい部分だけ抜き出して 飛ばして 私の恥ずかしい部分が 空を旅する 太平洋に出て フィリピンを眼下にゆうゆうと インドネシアの小さな島に着くと ひと休み 再び風に乗り インド洋の海面を トビウオと肩を並べて跳ね進んでも 心はおどらない いっそ凍

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        • 【創作】詩
          99本
        • 【創作】連載小説「小じさん」
          22本
        • 息子の詩
          4本
        • 或る医ケア児とその家族の詩
          4本
        • 【創作】短歌
          6本
        • 【創作】絵本、童話、童謡詩
          7本

        記事

          【詩】砂塵

          砂塵が舞っている 僕は海辺に立っている 濃霧のように広がる砂塵が 僕の視界を奪って ここが海辺であることを すっかり忘れる その砂塵のひと粒ひと粒は 僕が かつて苦楽をともにした朋友かもしれないし すぐそばにいる知り合いかもしれないし 日頃、自覚なくいだいている 僕の隠された欲求かもしれなかった あるいは大嫌いな誰か あるいは自覚なく生きるよすがにしている 何かかもしれなかった 強い風によって 砂塵が吹き払われると 目の前で 巨大な車輪が回っていた ガタガタと軋みながらそれは

          【詩】砂塵

          【詩】息子の詩

          恋って不思議だよね〜。だって、他人同士なんだよ〜。 パパとママはどっちから恋をしたの? パパとママのどっちから、付き合いましょうって言ったの?  小3になる手前くらいのきみ  急に質問が大人びて  きっと半分はなにかの受け売りだろうけれど  他者に興味を持ち始めたんだね  恋って不思議だよね。ほんとうに。  * 「ねぇ、隔たりってどういう意味〜?」  いろんなことに興味を持ち始めたきみ  大人でも説明するとなると困る言葉もたくさん聞いてくるから油断できない  でも、こ

          【詩】息子の詩

          【詩】或る医ケア児の詩

           親のアテレコ追補版2 おい、おっさん オレの福祉車両まだ? 作家センセ 印税で、はよ!  ほんとうに  そのかわいいお顔で  とんでもないことを。  パパ、デビューすらしてませんけど。

          【詩】或る医ケア児の詩

          小じさん第20話「遊園地と小じさん 4」

           小じさんは嫌味な笑みを浮かべて、私とりょうくんを交互に見た。笑みといったって、のっぺらぼうの小じさんの表情なんて本来わからない。けど、この状況で小じさんが浮かべる表情は間違いなく“嫌味な笑み”だ。 「なんやなんや、ふたりして狐につままれたみたいな顔して。あれか? ワイのこと見えてんのは自分だけやと思とったんか?」 「え、サヤさん……も?」  りょうくんがおそるおそるといったふうに言う。私は無言でうなづいた。それ以外に反応のしようがなかった。  りょうくんは魂が抜かれた

          小じさん第20話「遊園地と小じさん 4」

          【詩】或る医ケア児の詩

           親のアテレコ追補版 オレのおしりが火を吹くぜ (プリッ) お、新人ちゃん(看護師)だな。しめしめ。僕いいコでちゅ〜NGチューブ抜いたりちまちぇ〜ん (チラッ この間、入院中に出会った同じ医ケアの友達にな、パパの顔ゾウに踏まれたみたいに潰れてて見てられへんねんって言ったら、 「いやいや医ケアできるだけマシやて。うちなんかパパ逃げてもうて、もうおらんからな」 「そうか〜、そりゃまた大変やなあ」 なんて言い合うてな、 たしかに、逃げてまうよりはマシかいな〜。 どう思う?

          【詩】或る医ケア児の詩

          小じさん第十九話「黒い小じさん? 2」

          「ついにあいつが出てきてもうたか……こら、あかんわ」  小じさんはいつになく、まいった様子で首を振り、もう一度「こら、あかん」と言った。  僕たちは店を急いで出たあと、少し離れたところにある公園に来ていた。公園には親子や友達同士で遊びに来ている子どもたちなど、ちらほらと人がいた。この人たちには僕はひとりで公園に来ているように見えるのだろう。小じさんの姿を見ることができる人間は限られているのだから。  店を出るとき2階の窓を振り仰ぐと、黒黒とした店内が見えた。そういえば、店内

          小じさん第十九話「黒い小じさん? 2」

          小じさん第十八話「黒い小じさん? 1」

           あれから僕は、精神状態にしても、日々の生活にしても、少し落ち着きを取り戻していた。短いひとり旅から都会生活へ帰還した僕は、毎日決まった時刻に出社し、決まった時刻まで決められた業務をこなし、決まった時刻に退社した。心は驚くほど穏やかだった。小じさんが優しい言葉をかけてくれたからだろうか。小じさんが、なんとかしたると言ってくれたからだろうか。  はっきりとした理由はわからないが、今の僕は妙な安心感に満たされていた。  あの男のことは羨ましかった。僕の中に湧き起こるその感情を、

          小じさん第十八話「黒い小じさん? 1」

          小じさん第十七話「砂地の小じさん 4」

          「よう。また会うたな。こんなとこで何しとんのや?」  小じさんはにやりと笑って言った。もちろん、小じさんはのっぺらぼうなので、彼の表情について本当のところはわからないのだが。 「雨が降ってきたので、ここで少し雨宿りをさせてもらっています。……ていうか、そんなこと聞かなくてもあなたには分かってるんじゃないですか?」 「もちろんや。ワイを誰や思てんねん」 「小じさんです。分かってるならどうして聞くんです?」 「なに言うとんねん。ただの挨拶に決まっとうやん」  僕は小じさんを

          小じさん第十七話「砂地の小じさん 4」

          【詩】エイプリルフール

          今日が、 いつも嘘であってほしいと思っている現実を ほんとうに嘘にしてくれる日であればよかった そうして1年をリセットして またゼロから嘘であってほしい現実を 積み重ねていく ぼくたちは、日ごろから 嘘であってほしい現実にまみれて 嘘であってくれと願うように嘘をつく 毎日エイプリルフールやってんだ だから今日は、 ぼくたちのそんな願いが かなう日であるべきだ

          【詩】エイプリルフール

          【詩】夢のカケラ

          夢をいっぱい詰め込んで背中にしょったランドセルは、初めはどの面もピンと張り、内からの力も外からの力も等しくいなし、その箱型をぱっつんと維持していた。きみがぐんぐん成長し、肌艶を煌めかし、表情に強い意志が宿るにつれ、彼は反対にくたびれてゆき、内からの力にも外からの力にも軟弱に歪み、きみの背中に対してめっきり小さくなった。その対照的な変化はきみが彼の生気を吸い取ったようだった。否、それは違う。きみがそれほど彼に興味を示さぬうちに、きみが彼のことなど道具としてしか見ていぬうちに、あ

          【詩】夢のカケラ

          【詩】それはどうしようもなく悲しい

          ひとは人形ではない 街を歩いているのは、まぎれもなくひとだ 多様性と無個性が矛盾なくmixした渋谷の異様な空気も 誰もが殻を破る一歩手前で悶えているような新宿の錯雑した空気も 人形には醸せない どんな街にも愛と憎が入り乱れているが、それらはひとの根源にある美しい性質群の個々の表現型に過ぎない 起源は同じなのだ だから愛と憎は状況に応じてよく入れ替わる 人形に愛も憎もない ひとが人形になれば、渋谷と新宿は失われる ところで、 ひとがひとを殺すのは何故だろう ひとは何故戦

          【詩】それはどうしようもなく悲しい

          【詩】或る医ケア児の詩

          親のアテレコで雄弁 にくまれ口も自由自在さ  おい、おっさん。帰ってきたのに挨拶なしかよ  ほら、はよオムツ変えんかい  たるんどんちゃうか  おっさん、イケメンの気持ちわかってへんやろ  ほら、目ヤニ残ってんで。はよ取ってや  (いやいや、◯◯くんそんなこと言ってへんって)パパ大好き(ってひたすらそれだけ言ってるんやって)  アテレコすんのはいいから、せめて統一してや あゝ、かわいい子.

          【詩】或る医ケア児の詩