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光の中で蝶はかよわくない『光媒の花/道夫秀介』を読んで蝶の思い出

光媒の花/道夫秀介/913.6』を図書館で借りた。
第一章からはじまり第六章でおわる連作短編集だった。

刹那の欲望の後始末は酷で哀しく。はぁ、とテンション低め暗めな行く末の物語はするりと景色が流れていく。川岸のこちらとあちら、川を渡る橋。つながり合わない人の接点は景色の中にあった。同じ景色を見ているけれど辿ってきたそれぞれの人生はちがう。川は流れ、時は流れ。

『第四章 春の蝶』、『第五章 風媒花』、ぎくしゃくしていた家族の中に素朴な花が咲き、蝶がひらりと光が見えてくる。心の奥底がほっとした。

 その風の中に、何か白い花弁のようなものが舞うのが見えた。
「先生、蝶」
 朝代が声を上げ、弾むように二、三歩駆ける。

『第六章 遠い光』284頁より

本の解説で解説者が作家の長尾秀介は、長い目をしているという。長い目をして長い目で物語を書いていると。読む側も長い目をして長い目で思った。


この小説とはまったく関係ない私の蝶の思い出「アサギマダラ」の話。それは捕まえて触ると驚く、半透明な翅は触っても鱗粉が手につかない。鱗粉がない。丈夫そうな翅は薄いプラスチックみたいにツルっとしている。飛ぼうとする反発の力は生きる強さを感じる。かよわい感じはしない。容姿も美しい。蝶は観察すると不思議でしょうがない。

その蝶は遠く旅をするという。実際に見たことがある。
尾瀬の至仏山の山頂を通り過ぎていった。ネパールのトレッキングの最中でも見かけた。ひらひらぴゅーと飛んでいく。わりと早いスピードなんじゃないかなと思う。2000mを超える標高を蝶が飛んでいく。それは旅の途中と思われる。ファイト!!山登りは登ったら下りも自分の足で。

アサギマダラの和名、浅葱斑。名前も古風で素敵と思う。

和名にある「浅葱(あさぎ)」とは青緑色の古称で、この部分の色に由来する。翅の外側は前翅は黒、後翅は褐色で、ここにも半透明水色の斑点が並ぶ。

ウキペディアより

長い目でまたどこかで会えるかもしれない。

蝶は暗いところにとどまっていない。
明るく広いところを飛びましょう。

ちなみに身近な蝶たちの観察もおもしろいよ。

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