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つなぐものの苦しさ『まいまいつぶろ』を読んでうるうるした

図書館で予約していた『まいまいつぶろ/村木嵐/分類913ム』が6カ月かかって私の番になった。2日ほどで読み終える。実在は実在として歴史小説の世界にすぐ引き込まれた。

第8代将軍 徳川吉宗(1684-1751)
第9代将軍 徳川家重(1712-1761)

大岡忠光(家重の二つ年上の小姓)

吉宗のイメージといえば、以前は松平健さんの「暴れん坊将軍」。現在の私のイメージは富永愛さんが絶大となっている。昨年(2023)に見たNHK「大奥」の冨永愛さんの吉宗がカッコよすぎて惚れた。そのドラマの原作は漫画『大奥/よしながふみ』という、設定は男と女が逆転している社会。「家重」の回も涙涙だった。機会あれば漫画も読んでみたい。

その影響あって読んでみたかった「家重」が描かれる『まいまいつぶろ』。これは当時の男女そのまんま社会。家重は吉宗を継ぐものとしての生まれ。家重は「まいまいつぶろ=かたつむり」とのいわれよう。

家重は心の内を伝えられない、その不自由が伝わってきてなんとも苦しい。くぐもった言葉は近しい人でさえ理解できない。忠光が小姓として側につくと家重は継ぐものになっていく。忠光は家重の「口」代わり、けっして目や耳になってはならない。サポート見事な忠光、、、16才からのお仕事。

吉宗の愛情と徳川家の事情、、、お世継ぎ問題。家重も子をなさねばならない。家重は許婚の比宮のためにと薔薇を植え自ら育ててプレゼントするも、避けられてしまう。老中の忠音は家重にやさしい、いつも気にかけている。そして比宮の心をやわらかくしていく。比宮も心の痛みがわかる人だった。このシーンが好き。

 さて、と忠音は腿に手を突いて立ち上がった。
「生憎と、今はどこにも花がございませぬ。それがしの屋敷には伸び放題の梅林がございかすが、比宮様のお好みの花は」
 からかうように比宮を顧みた。
「薔薇です」
 比宮が囁くと、忠音は満足そうに微笑んだ。

まいまいつぶろ 119-120頁より

家重と比宮は仲睦まじくなっていく、、、うれしい涙。かなしい涙。

家重は聡明、やがて九代将軍になる。ずるい家臣は民にとっても敵、上様を欺こうとする。いつの世も私腹を肥やそうとよくない働きをする奴がいる。
吉宗がこの世を去る、忠光がこの世を去る、そして家重も。世代がかわる。
じわぁっと、ぐぐっとくる。うるうるの小説だった。

江戸時代、鎖国、徳川、吉宗さん、家重さん、忠光さん、みなさまがどうあったとしても未来につながっている。ありがとう。

余談、
『まいまいつぶろ』著者の村木嵐さんのプロフィールに司馬遼太郎さん宅で家事手伝いとある。先日読み終えた『ロシアについて』の著者が司馬遼太郎さんだった。つがなってるじゃん?!
と、勝手ながらこれもつながりと感じていたい。ありがとう。

ではでは

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