ShaderFesで泣き崩れた話
前提……ShederFesはVRChatというVRSNSで行われている展示会です。詳しくはリンク先のTwitterを参照してください。VRCプレイヤーの方はこの文章を読む前に事前に訪れてほしいなぁと思います。素晴らしい展示会です。この文章は僕個人の感情であり、この展示会の内容・運営とは一切関係ありません。ご理解ください。
僕は泣き崩れた。文字通り、実際に、比喩表現ではなく、立っていた僕はコンクリートの床に泣いて、崩れた。それは、一般的に人間が思うような感情ではなく、どちらかといえば感傷であった。
僕はクリエイターくずれである。小説を書き、絵を描き、3DCGを作り、建築を専攻し、そのどれもが不完全で不出来な歩く死体である。しばしば、「マルチクリエイター」という的外れな評価をいただいくこともあるが、その実態は創作という行為に真剣に取り組む「性質」が無いにもかかわらず、創作に逃げるしかなかった人間の末路なのである。そうして山月記の李朝にも負けずとも劣らない臆病な自尊心と尊大な羞恥心を拗らせ、頭がおかしくなっているのである。
そのため、僕は普段、仮想空間における大型イベントに行くのを避けている。いや、もっと強く言うべきだ。避けなければならない。なぜなら、避けなければ僕の精神面はミキサーで混ぜた豆腐のようになってしまうからだ。
素晴らしい創作物は、それだけで精神をざわつかせる。特に専攻し、あきらめた建築に近い要素がある仮想空間の場合、特にそれが激しいのである。美しく、壮大で、芸術的であり、真剣に長期間考えられたであろう空間。その存在全てが僕の「あきらめたもの」であり、それを見せつけられると急激に目から吐しゃ物が溢れだすのである。
そのため、僕は仮想空間の置ける大型イベントに行くのを避けていた。先述した通り精神的に大きな負担がかかるからである。そんな言ってしまえば面倒くさい僕が、今回は無理やりShederFesに足を運んだ。理由はなんとなくだ。苦しむのはわかりながら、僕は足を運んだ。
そして既定路線のように泣き崩れた。エントランスでである。詳しくは説明しない。詳しく説明してしまえば、無限に語ることがある上に、それが自傷に繋がるからだ。執筆が不可能になってしまう。なので、そこで得た端的な感情だけを抽出してここに示そうと思う。
「勝てない」「こういうものを作りたかった」「美しい」「超現実を実現するために現実を丁寧に描写している」「空間」「空気感」「吸い込む空気が冷たい」「ここまで僕はこだわれない」「気持ち悪い」「うらやましい」「死んでしまいたい」「このドキドキと感動が憎い」「美しい」「美しい」「美しい」「なにをどうしたらいいのか、わからない」
感情が渦巻く。展示物をまともに見れるわけがない。僕は空間構成を確認するために展示会内を駆ける。途中友人と出会ったがこの精神状態でまともに話せるわけもなく、「今は無理」といってその場を通り過ぎた。途中ある大型展示室も素晴らしく、「勉強してるな」というどこから目線かわからない感情が産まれたことに自分自身で嗚咽し、アナログスティックを全力で倒しながら全てを回った。コントローラーが握力で軋んでいるのを手のひらから感じた。途中、エレベータにのった。そこから見える景色、空間、体験、表現は素晴らしいの一言だった。同時にこの空間にいたくないという感情がより強く溢れてきた。エレベータが目的地に到着する。扉が開く、広がる大展示室。通路、支持材、鉄骨、素材、空間。もうだめだ──僕はその場所から飛び降りる。エントランスに落ちていく僕は落下する前からすでにひしゃげている。耳の中でなる落下音は気のせいではなく、きちんと設定された音源であり、そのこだわりに思わず耳をつぶしそうになる。
棒立ちで高所から着地した僕は、しばらく茫然としていた。この文章の表紙の写真だけ取って僕は動けなくなった。感情が、僕に写真を撮るという行為を禁じていた。撮りたくないと叫んでいる。
仕方がないので、僕は友人のところに向かった。顔は目からでた吐しゃ物でべとべとする。HMDのクッションも水に浸したようになっていて、不快感が尋常ではない。しかし、そんな様子は友人には見せられない。だから僕はしっかりと切り替えて、普段どおりであるという努力をするのだった。
最後に
そのあと、この出来事をけらけらと話した。あくまで自虐ネタという体で話した。これは必要な作業である。客観的に自嘲するように語ることで、自身の精神を安定させる技巧なのである。そしてこの文章もまた、そうした技巧に過ぎないのである。
この文章は、それをしている最中に友人から字に起こしてみればと言われて書いた即興感情直結感想文である。そのため、全く持ってプロットや推敲を行っておらず、見苦しい点ばかりが集合して形を成している文章となっている。
ここまで、このまとまりのない文章を読んでいただいた読者の方々に深い感謝をささげたい。最後まで、ありがとうございました。
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