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君からの電話は鳴らないはずなのに。短編小説。

ピリリリリ。ピリリリリ。ピリリリリ。

真夜中、電話の着信音がなる。

着信音で寝起きな男がいた。


誰だこんな真夜中に。

眠い目をピント合わせ電話に出ようと画面を見る。

え!?なんで!?

ピリリリリ。ピリリリリ。

しばらく電話に出るか悩んだが。

も、もしもし。

「もしもし。ごめんね。遅くに」

元恋人の小坂さんだった。

あ、大丈夫。大丈夫。

「もしかして寝てた」

いや、起きてたよ。

「そっか。久しぶりに声聞くね」

そうだね。10年ぶりぐらいかな。

「メールではたまに連絡してたけどやっぱり声聞くと落ち着くな」

そうだね。落ち着くね。

もしかして何かあった?

「えっと…。伝えようか迷ったけど結婚する事になったの」

そっか。そっか。おめでとう。

「ありがとう」

結婚式はするの?

「一応ね」

いつ頃。


「えっと…。それがね…。」

ん?どうしたの?

「明日なの」

明日。明日かー。

「空いてないよね?」

明日はごめん!ごめんね!

「ううん大丈夫。仕方ないよね。急にごめんね」

あ、!あー!何とかする!何とかする!間に合わないかもだけど場所だけ教えて!

ちょっと待って!メモするから!紙とペン。紙とペン。あ、あった、あった。

結婚式場所をメモした。


「じゃあ。明日。待ってるね」

結婚式頑張ってね。

「ありがとう。じゃあおやすみ」

おやすみ。

しばらく無言のままお互い電話を切らなかった。

「ちょっと何で電話切らないの!?」

なんか電話切りたくないなーと思って。

「明日は朝早くないの?早く寝なさい!」

そ、そうだね。じゃあ電話切ろうか。

「待って!せーので電話切ろう!」

いいね。それ!

「おやすみー」

おやすみー

「せーの!」

せーの!


ツーツーツー。ツーツーツー。


小坂さん。結婚するのか。

…。

おめでとう。


二人は以前は付き合っていた。

けど、両家共に反対されていた。理由はライバル会社同士だからだそうだ。


その後。別れることになりメールではたまに連絡をしていた。

しかし電話は暗黙の了解なのかお互いにしなかった。

声を聞くと寂しさが深くなるからだ。

相手の男性の事を聞きたかったがおそらく政略結婚なはずだ。

メールで相談されたからだ。

駆け落ちできるほどの力はない。力はない。力はないからだ。

戻れるなら、あの時に戻りたいに決まってる。

けど、小坂さんを幸せにできる自信がない。


その日は1日眠れなかった。


朝か。鏡を見た。

寝てないから目が赤くなってる。

なんて顔だ。しっかりしろ!

ダメだ。ダメだけどしっかりしろ!


…。身体が動かない。あれから何時間が過ぎた。

最後に一目、小坂さんの美しい姿を見よう!


『よう、久しぶりだな!』

あれ、お前!?久しぶりだな!元気だったか。

『元気じゃなきゃここにはいないよ』

『小坂さんに受付頼まれてな』


唯一小坂さんと別れた原因を知っている。

学生時代から変わらねーな。

『うるせーな。てかお前その格好どうした?普段着じゃないか』

ああ、これか。ちょっとボーッとしてて。

『やっぱり。小坂さんの事か』

まあな。ちょうどいいや。お前なら話が早い。

ご祝儀だけ渡して帰ろうと思ってな。

『一目見なくていいのか』

そう思ってたけど、自信がなくてな。

『そうか。顔にゴミついてんぞ』

はは…。昨日は一日泣いてたからな…。

『待ってろ。動くなよ』

『バカヤロウ!』

バシッ!

なんだよ急に!殴るなよ!どうした!

『どうしたは!こっちの台詞だ!昨日小坂さんから電話あったんだろ!』

何でお前が知ってんだよ!関係ないだろ!

『あー!俺には関係ないね!けどなさっき偶然小坂さんに会って聞いたんだよ!』

何を!

『小坂さん。泣いてたぞ!やっぱりお前の事が忘れられないって!ずぅーと10年間お前の事考えてて寂しかったってな!』

でも、結婚相手見つかったんだろ!幸せなんだろう!

こっちはな!小坂さん以上の女性はいない!小坂さん意外と付き合ってねーんだよ!苦しいんだよ!ほっといてくれよ!

バカヤロウ!

バシッ!

『俺はなずぅーと小坂さんからお前とより戻したいって相談されてたんだよ!』

『いい加減気づけよ!察しろよ!話せよ!理解しろよ!気持ちに答えろよ!寄り添えよ!歩み寄れよ!』

『長い10年と思うな!無駄な10年と思うな!短い10年と思え!』

俺だって戻れるなら戻りてえよ!


『だったら、今からお前の結婚式にしてこい』

『最高の結婚式にしてこい』

こんなボロボロな格好でか?

『上着ぐらいなら貸してやる!』

バサッ!

お前?

『早くしろ!次が待ってるだろ!』

また会おう。

『おう、またな』



重い。扉を開ける。


ちょと待ったー!


(なになに!なんだなんだ)


その結婚式ちょっと待ったー!


(キャードラマとかで見たことあるやつだわ!)


「来たくれたのね!」


小坂さん。やっぱり君は美しい。

俺と来てくれないか。

「どこに?」

わからない。わからないけど、今より幸せな場所に。

「けど…。」

(君が選んだ道を進みなさい)

「ありがとう」

さあ背中に乗って。

「重くない?」

軽いに決まってる。

さあしっかりつかまって。走るよ。

「ありがとう。来てくれてありがとう」




「行ってきます」

行ってきます。










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夏鈴のたらこトマトスパゲティ
夢はnoteの売上でキャンプすることです。 後、ニンテンドースイッチです。 後、書籍化です。

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