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一年の終わりに 〜2022 ver.〜

 昔から、なぜだか年末の雰囲気というものが好きで好きでたまりませんでした。今年を終わらすのだというバタバタと浮き足立った空気が社会から漂ってくると、えも言われぬ高揚感を覚えて興奮するのです。クリスマスの浮かれたムードも好きではありましたが、クリスマスが好きというよりは、クリスマスを過ぎればもう年末の大詰めという不変の事実の方に、より喜びを感じていたのかもしれません。クリスマスが12月下旬でなければ、こんな気持ちを抱いたかどうかわかりません。
 小さい頃からこの時期だけ祖父母の家の酒屋を手伝っていたことも、間違いなく関係しているだろうと思います。一年で店が最も忙しい時期に、ほとんど何かの役に立っていたのかもわからない時分から、いっぱしの仕事をこなしているかのような気分に浸り、それが終わるともう大晦日の夜でした。この年に一度の祭りが、30年経ったいまでも興奮を呼び起こすのかもしれません。
 年末を穏やかに過ごした記憶がありません。とにかくせわしなく、一応の区切りをつけるべく動き回り、そして身の回りの状況がどうであれ、日をまたぐ瞬間に区切りがついたと言い聞かせる。その何もかもが「チャラになる」感覚は年末年始にしか許されない特別なものです。翌朝にはあらたまってどことなく緊張した気持ちで「あけましておめでとうございます」なんて言うのも、おかしくていいですよね。

 今年の年末も帰省はせずに自宅で過ごしました。コロナ以降だから3年連続です。最初の年(2020年)は妙な気分になり変に緊張をしましたが、さすがに3年目となると慣れてきます。30日には餅をつき、大晦日の昼食にはカレーを作り、夜にはしっぽく蕎麦を作る。これがないと、年を越せないというものがあります。
 今年はなんだか忙しい年でした。
 4月に日記本の即売会があり、そのために新しい本を作るところからスタートした一年でした。表紙のデザインを本屋イトマイの鈴木さん(デザイナーでもある)にお願いし、素晴らしい佇まいの本が出来上がったときには感激しました。日記本としては6冊目で、自分の中では集大成となるような本を目指していました。
 思い返せば2019年末、突然、これからは日記をつけようと思いました。その翌日に本屋で日記本を売るイベントの開催が発表され、イベントに合わせるために作ったのが最初の日記本でした。そうこうしているうちに世界はコロナ一色に。本を作るのが楽しかったし、日記というものにもっと向き合ってみたかったし、劇的に変わった後もまだまだ急速に変化し続けそうな世界での日々を形に残そうと思って、その後も4冊の日記本を作りました。その5冊で本作りはいったん終わろうと考えていたら、縁あって6冊目の本を作る機会を得ました。結果として、都合2年半ほど日記に向き合い続けたけれど、それは人生でもはじめてのことでした。
 4月にその6冊目の日記本(『日記に棲む日々』)を送り出して、肩の荷が──誰に負わされたものでもなく自分で背負っていたものだけれど──降りた気分になりました。

 どうも体調的には万全とはいえない年でした。会社勤めの方が妙な忙しさになってしまい、毎月同じような時期に(忙しさのピークが明けて緩むタイミングに)電池が切れるように体調を崩してしまい、人生ではじめて、めまいも経験しました。
 それでも、よく本を読んだ一年だったと思います。そんな忙しい状況なのに文字通り寝る間を惜しんで本を読んだから体力がついていけなかったのかもしれないけれども、布団の中で、電車の中で、バスの中で、寝ても立っても座っても、本を読んでいた気がします。うーん、その意味では楽しい一年でした。
 行を追うごとにまぶたが重くなり、観念して読書灯を消してそのまま眠りにつくしあわせといったらなかったし、おもしろくて眠気が吹っ飛んで睡眠時間をどんどんと削ってしまった日の後悔は苦くとも甘いものでした。本に引き込まれて気がつけば目的の駅やバス停に着いていたときは、タイムトラベルを味わったような気分でした。いやはや、来年も読書に関してはこうありたいものだ、と思います。
 来年は、本を持ち、ペンを持ち、そしてできれば鍬を持つ生活がしたいです。そんなことを思いながら、年男の一年は暮れていきます。
 来るべき2023年に期待を込めつつ。今年も一年間、ありがとうございました。

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