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今昔物語集 身代わりになって死んだ女の話 読んで
みなさん、こんにちは。光文社古典新訳文庫の「今昔物語集」に収録されている「身代わりになって死んだ女の話」の感想を書いていきます。
あらすじです
ぼんぼんの家柄に生まれた青年が主人公です。容姿はどちらかというとイケメンの分類です。その彼がお忍びで清水寺へ行きました。その途中、徒歩で参詣しようとする女性に出会いました。
うわぁ、めっちゃ美人やん
彼の推測によると、20歳前半ぐらいの年頃。今でいうと、芸能人やモデル、アイドル並みの容姿で愛嬌のある女性であるようです。ヒエラルキーの上位に君臨し、ひそかに徒歩でお参りにやって来たのだろう。と思いつつ、彼はこの女性にメロメロでした。
これは絶対にほっておくと、誰かに先を越される可能性がある。なんとか、親密な関係を築きあげなくては
寺参りなどそっちのけで、我欲が抑えられなかった彼。女性が寺から出ていくのが分かると
おい。あの女性がちゃんと家に帰っていく姿を見届けてこい
彼は後輩である少年にストーカーまがいのことをさせ、女性の跡を追っていきます。彼は先に家に帰って、少年の帰りをドキドキしながら待ちます。
ただいま、帰りました。
おーどうだったの?
えっとですね、女性は京都の辺りではなく、清水寺の南に家がありました。すごく立派な家でした。
少年の話によると、女性の跡をつけていた際、女性をお供にしていた年増の女性から色々咎められました。
少年が時系列に沿って説明していくと、年増の女性は
じゃあ、彼にあの子は紹介してあげる
と言いました。
少年の話を聞いた彼は、テンションがアゲアゲです。早速、手紙を出すことにしました。すると、すぐ返事が返ってきました。それ以降、彼と女性の文通のやり取りが始まり、いい感じになっていきました。
あるとき女性から
あなたのいる京都には行けませんが、私の家に来てください。専用の部屋を用意しています。
青年は「とうとう来たか」という心持ちするとともに、ボディーガードを2人、それから少年と馬の口取りの男だけを共にして向かいます。
そして、家に着きました。家に着くと、年増の女性に案内されます。家の周囲はとても堅固な土塀がめぐらしてあり、門は堂々して高いです。庭には深い堀が彫られ、橋がかかっています。
あ、あなたたちは堀の外で待ってて下さい。
一行が橋を渡ろうとすると、年増の女性に呼び止められます。青年だけが橋を渡り、女性の待つ宮殿へ向かい、念願だった女性と会うことになります。
その夜。青年は女性と一夜過ごします。彼は女性を愛することを誓いますが、女性はひどく物思わしげで、泣いています。彼はその姿に不審に思い心配します。女性は「なんともないです」という言葉ばかり言います。
教えてくれ。あなたとは深い関係になったからには、包み隠さず言って欲しい。
すると、女性は
あなたはもうじき、家の主に殺されます。だから、早く逃げて下さい。
女性の話によると、彼女に惚れた男性がここの家に入り、その男性と彼女と寝ている間、家の主が天井から鉾を下ろしていきます。その鉾の先を彼女がホイホイと家にやってきた男性の胸にぶっ刺し、殺すとのことです。
そのあと、着ているものをはぎ取り、堀外の家で休んでいる一緒に来た人たちも皆殺しにして、貴重品を奪うというものでした。彼女は過去に2回もやっているので、このままで続けてしまうのも悪いので、代わりに自分が死ぬと言い出します。
ちょっと待ってくれ。じゃあ、一緒に逃げよう。それなら大丈夫だろう?
無理です。追っ手は執拗に追いかけてきます。別のルートを教えるので、早く逃げて下さい。ああ、そうこうしているうちに、あなたを殺す準備に入っているみたいです。
女性が言うと、奥のほうから足音が聞こえてきます。狼が獲物を追うかのような足音が聞こえてきます。青年は恐ろしくなり、泣く泣く女性と別れ、宮殿を出ます。
青年は教えられたルートを走っていくが、曖昧すぎて分かりませんでした。そうこうしているうちに、後ろから走ってくる者がいます。
うわあ、もう追っ手が追いかけてきたか。
そう思っていると、正体は女性の家へ共に向かった少年でした。
少年は青年が渡った後、橋が外されるのを見て、不審に思い逃げていたとのことです。
無事に京都にへ還ることができ、ほっとしていると、女性の家辺りで猛烈な炎で埋め尽くされていました。
実は……
家の主がいつものように鉾でホイホイやってきた男性を殺したと思った後、彼女の声がしないので不審に思い、彼女の部屋に行ってみると、男性(青年)の姿はなく、彼女が刺し殺されているありさまを見てしまいました。。
まずいな。男が逃げたとすると、警察がやってくるに違いない。
と考え、家の主は女性の家に火を放って逃げたというのです。
女性の家に行って数日経った頃。その事件の詳細は言わず、少年にも黙ったままするように言います。そして、青年は毎年盛大な仏事を営み、その女性のためにねんごろ供養を行っていたようです。
感想です
平安時代からハニートラップがあったんだな。と思いながら読んでいきました。この話では、男主人公がイケメンという設定でヒロインの方も主人公に惚れた?という感じです。
もし、男主人公がイケメンじゃなかったらどうなっていたのでしょう。
家の主とヒロインによって、殺されていたのでしょうか?
あるいは
良心の呵責によって、ヒロインの方が死を選ぶのか?
そう考えてしまいます。
ヒロインの過去はというと
元々京都の名の知れた貴族に生まれたのですが、早くから両親を亡くしています。それに目をつけたこの家の主がヒロインを誘拐し、我が子のように育てていきます。そして綺麗な格好をさせ、清水寺を参詣させます。そのとき、出会う男たちがヒロインを見て言い寄ると、この屋敷に誘導させます。誘導させられた男たちは殺され、金品等を奪います。
まさに、ごきぶりホイホイのように思えます。
現代でいうと、街で綺麗な女性に声をかけられ
ちょっと、アンケートどうですか?
近くに美術展があるんですよ
などなど、宗教やマルチ商法、詐欺のようなものに引っかかってしまう。
昔も今も変わらず、綺麗な薔薇には棘がある。といった感じでしょうか。
本書にも、最後の文にこんなことが書かれています。
美しい女を見て心惹かれ、うかつにふらふら不案内な場所に出かけて行ったりするのは、あぶないからやめるべきだ、と、この話を聞いた人々が噂した、と、こうして今に語り伝えられている。(卷第二十九第二十八)
引用
今昔物語集「身代わりになって死んだ女の話」
作者未詳 大岡玲 訳 光文社古典新訳文庫 出版社
今の時代はマッチングアプリを活用している人が多いですが、この話でもあるように、
気を付けて恋愛しましょう。
と私たちに警告しているのかもしれません。
最後まで、読んで頂きありがとうございます。